侵略者
残酷描写があります。
――病院に辿り着いた時、病室で真っ先に目に入ったのは、赤く染まった『何か』だった。
一瞬の後、それが妹であることに気が付いた。
ベッドに横たわり、顔があるべき場所から、一対の目が瞬きもせずに宙を見詰めていた。
我に帰り周囲を見回すと、全身を赤黒い色に染めた母親が目に入った。椅子に座り、こちらも虚ろな表情であったが、どうやら酷い怪我はしていないようだった。
「母さん、」
聞くべきか悩んだが、今聞こうが後で聞こうが変わらないだろうと思い、再度口を開く。
「父さんは……」
自分の声に、母親は顔を上げた。
「寝てる」
ああ、無事なのかと安堵しかけたが、
「安置室」
続けられたその言葉に、全身が痺れたように硬直するのを感じた。
「勇敢に闘った、けど」
その先はもう言葉にはなっていなかった。
――突然現れた異形の者は、誰彼構わず連れ去っては自身と闘わせるのだという。
勝てば帰すと約束はしたものの、それに勝てた者はいない。
無事に帰れる者は少なく、嬲られた挙げ句に廃棄されたような状態で、五体満足な者はいなかった。
――きっと、奴等はまた獲物を探しにやってくるだろう。
その時までに準備を済ませなければ。
そう思い、彼は友人へ連絡をする為に病室を後にした。




