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檻【ケージ】

残酷描写があります。


 ――目を開けると、そこには闇が広がっていた。


 すぐ近くで気配がしたので声を上げると、その気配は聞き覚えのある声を発した。


 それは自分の友だった。

 どうやら寝ぼけているらしい。


 体を揺すると気が付いたらしく、自分と同じ様に驚いているようだった。


 他にも気配があったが、暗がりの中では確認のしようがない。


『気が付いたかね』


 不意に頭上から声が聞こえた。


 と、同時に何処からか明かりが灯された。

 あまりの眩しさに目を細める。


 明かりの向こう、声と同じ様に、自分達を見下ろす人影が見えた。


『ふむ、驚くのも無理はない。気が付いたらいきなりその檻の中に閉じ込められているのだからね』


 説明口調で告げる。


 明るくなった周囲を見回すと、自分は確かに檻の中に閉じ込められていた。


 自分や友の他にも、同じ様に閉じ込められていたらしい面々が、何が起こっているのか分からずにそれぞれ顔を見合わせている。


『君達には申し訳ないが、私の実験体になってもらう。……なに、すぐに楽になる』


 一方的に告げ、声の主は『始めろ』と誰かに向けて命令した。


 その一瞬後、ガシャン、と音がして、檻の一部が開いた。


 近くにいた『仲間』がとっさにそこから逃げだそうと駆け寄る。

 が、何かに弾き飛ばされたように、檻を構成している鉄の棒へと叩きつけられた。


 開いた場所から、何かが入ってきた。


 同じ様に閉じ込められた仲間かと思ったが、様子がおかしい。


 目が血走り、全身が動くほどに呼吸が荒い。


 叫び声を上げると『それ』は自分達へと襲いかかってきた。


 仲間が悲鳴を上げ、または飛ばされ、踏まれ、骨を折られ、四肢を引き裂かれていく。


『それ』が自分へと近付いてくる。


 恐怖で動けないでいると、友が悲鳴を上げて開いたままの檻の入り口へと走りだそうとした。


『それ』は友を目で追い、そして体で追いはじめた。


 ――今だ。


 とっさの判断で檻の入り口に向かって走りだした。


『それ』が気付いて友を掴んでいた手を離し、自分に向かって伸ばしてきたのを視界の端で見た。


『それ』の爪が肩に食い込む。


 捕まる。


 そう思ったが、友が『それ』にしがみついた。

 肩に食い込んだ爪が肉と共に剥がれる。


 逃げろ、と友が叫んだ。


 友を身代わりにしようとした自分に向かって。


 友が『それ』に頭を掴まれたのを後目に、自分は走り出した。


『一体逃げたぞ!! 追え!!』


 慌て叫ぶ声が聞こえたが、それよりも早く檻を抜け、走る。


 細い道を発見したので飛び込むと、そこは下水道に繋がっていた。


 枝分かれした道の一本を選び、走り抜ける。


 抉られた肩に痛みが走る。


 意識が朦朧としてきたその時、前方に光を感じた。


『きゃあぁっ!!』


 光に飛び込むと同時に悲鳴が聞こえた。


『やだ、今そこにネズミがいたんだけど!!』


 肩の傷のせいか、全身が熱い。


 息が荒くなっていくのを感じながら自分が最後に思い浮かべたのは、あの凶暴化した仲間の事だった。

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