嫌だとは言わせねー!(前)
2話前に出てきた京介とユニのステータスを若干変更してます。
「・・・さま」
誰かが体を揺さぶる。
「ゆ・・・さま」
さっきまで悪夢を見ていたのだ、もう少し寝かせてほしい。そう思っていたが体を揺さぶる手は止まらない。だれが神官長である私の眠りを妨げるのか・・・。無礼者の顔を見てやろうと薄眼を開く。
「勇者様!!」
「きゃい!」
脳天に電流のような衝撃を受け、強制的に覚醒させられる。
「いたた・・・。」
頭をさすりながら起き上ると、月明かりに煌めく流れれるようなサラサラの黒髪、それと同じく黒曜石を思わせる瞳を潤ませた・・・京介がいた。
「お目覚めですか、勇者様。」
京介が恭しく跪く。モモは京介の肩で同じく跪いている。
「え?う?ゆ、勇者さま・・・?」
いまいち状況が飲み込めずうろたえるユニ。
「そうです勇者様。どうか魔王を打倒し、世界を御救いください。」
深く首を垂れる。
「ム、ムリムリムリ!むりです~!!」
あまりのことに体全体で拒否を示すユニ。しかし、のばされた自分の自分の腕を見て違和感に気付く。
「え?」
ユニの腕には見たことのない甲冑が装備されていた。豪奢な装飾を施され、白を基調に濃紺のラインが入るデザイン。王宮騎士や神官騎士の鎧とも違う。ましてや、ユニはさっきまで純白のワンピースの神官服を纏っていたはずだった。混乱しながらも自分の全身を確認すると、腕と甲冑と同じザインの鎧、両の腰に剣、背中にはマントまでしっかり装備されていた。
「え!えええ~~~~~!!なんですかこの装備!?」
「モモ、パネルオープン。」
「はーい。」
うろたえまくるユニを無視してモモにパネルの展開を命じる。京介とユニの前に少し大きめのパネルが展開される。
「ところで、ホル=ベインって知ってる?」
「は、はい。もちろんです。ベイン様は帝国宮廷騎士団の団長にして次期剣聖との呼び声も高い稀代の英雄です。でもどうしてキョウスケさまがベイン様を?」
「これを見てくれ。」
京介がパネルを操作するとベインのステータスが表示される。
『ホル=ベイン 35 男 LV10 生命力275 魔力115 攻撃力265 守備力160』
「これは、モモと俺で作った強さの目安をベインという人間にあてたものだ。。そして・・・。」
『ユニ=スター(変身後) 16 女 LV33 生命力515 魔力865 攻撃力670 守備力865 』
「これが今のお前だ。あ、それからベルトのバックルをスライドさせながら、キャストオフと唱えてみてくれ。」
ユニは混乱しながらも京介の言う通りにする。全身が一瞬光に包まれたあと、神官服姿に戻っていた。京介から見せられていたパネルも変化していく。
『ユニ=スター(変身前) 16 女 LV14 生命力385 魔力865 攻撃力267 守備力265』
「とまあ、指輪以外の装備を外してもその英雄とやらと同等以上の能力にしてある。ちなみに指輪とベルトはもうお前の体の一部だから。」
「え・・・?あ、どうして?」
思考が追いついてないのか、ユニはただただどうしてを繰り返している。
「繰り返すが、俺は勇者じゃない。神からもそんな話は聞いていない。」
嘘である。しかしユニにそのことを知るすべはない。
「思うに、俺は選ばれし者に力を与えるのが役目だったんだと思う。」
「選ばれし者・・・?」
「そうだ。世界を救うのはその世界に住む者が行うのは道理。お前は魔王とやらの脅威も理不尽さもその目で見て感じてきたのだろう?そして思ったはずだ・・・力がほしいと。目の前の同胞を救いたいと。」
「もちろんです!」
困惑したいたユニの目に始めて火がともる。神官長という立場にありながら何もできない無力さ、勇者という存在にすがらなければならなかった悔しさがユニの心を焼いていた。
「犠牲になったものの中にはお前の近しい者たちもいただろう。」
「っつ」
ユニが顔を苦痛にゆがめる。図星だったのだろう。16という若さに似合わぬ肩書にこのちいさの少女がどれだけ苦労したかと思うと、だまして勇者という肩書すらも押しつけようとしている京介も心が少し痛んだ。しかし、京介とて無理やりこの地に連れられてきた身だ同情はしない。
「だからこそ、お前が選ばれたのだ。」
京介は言葉を切り、再びユニの前に膝をつく。そして首を垂れると威厳をもって言葉を続けた。
「選ばれし勇者よ。どうか魔王を打倒し、世界を御救いください。」
今後も基本は前後篇で進めていきます。話がたまったら改定もかねて1話づつにまとめて行こうと思っています。
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