お前らだけでやってくれ!(前)
「え・・・。」
ひざまずいたユニと呼ばれた女が顔をあげる。端正な顔が驚愕に歪んでいる。
「ん? 言葉通じてるよね?さっきあんた達の言葉が解ったから大丈夫だと思ったんだけど?」
「え、ええ。大丈夫です・・・。」
「そっか。じゃあまあ、そういうことで!」
状況についていけず呆然とする三人の横を通り過ぎる。
「お・お待ちください!勇者様!」
いち早く我に帰ったユニが京介を呼び止める。
「ん?まだ何か?」
「世界は今、魔王により滅亡の危機に瀕しています!勇者様のお力が必要なのです!!どうか私たちをこの世界をお救いください!」
ユニが京介にすがりつく。
「え?なんで?ごめん、意味が分からない。」
いいながらユニの細い手をふりはらう。
「あんたらの世界じゃん。自分たちでどうにかしなよ。」
「き・貴様・・・!」
やっと再起動した騎士二人が怒りの声を露にする。
「今この時も罪なき民が傷つき、世界が滅びに向かっているのだぞ。貴様は勇者として何とも思わないのか!?」
「そうです。魔王の力は余りにも強大。理不尽に多くの命が奪われています。いまこそ、勇者様のお力をお示しになる時です!」
仲間の援護を受けユニの言葉に勢いがつく。
「理不尽・・・?」
京介のがつぶやいたその瞬間、空気が一段重くなる。
「う・・・。」
京介の纏う雰囲気が一変する
「理不尽だと?俺にもな愛する人がいたんだ!親!兄貴!友達!恋人!それをこの世界の神が引き裂いた。お前たちがこの世界を救ってくれと祈ったせいでだ!」
言葉とともにあふれ出す力の奔流が大気を振るわせる。
無言の圧力にじりじりと後ずさるユニと騎士たち。
「な、なんて破壊的な魔力なの・・・。」
「俺からすればお前らも魔王も変わりはない理不尽だ。あのくそったれな神もな!だから俺は絶対お前たちを救う気なんてない。憎みこそすれだ!いっそ滅びてしまえばいい!!」
鬼の形相で呪詛の言葉を吐く京介に、ユニたちは言葉を失う。
そこにはつい先ほどまであった期待に満ちた表情はない。
「・・・ユニ様お下がりください!」
騎士のひとりが荒れ狂う力の本流から、ユニを背後にかばう。
そしてもう一人の騎士が京介と対峙する。
「仕方がありません!奥の手を使います!!」
「何を言うの!?駄目よ。許されないわ!」
「我が王はどういう形であれ勇者をお望みです!」
「なっ!?」
「どうした。仲間割れか?俺はもう行くぞ。」
そう言って三人に背を向け歩き出す。
「お待ちください!」
「彼の者の身心を戒める茨の鎖、ギアス!!」
背後から聞こえた声は同時だった。
そして・・・京介の全身を激痛が走る。
「あああああああああああああああ!!」
京介は痛みから逃れようと必死にのたうちまわる。
しかしどんなに体勢をを変えても痛みが和らぐことはない。
まさに茨の鎖が体中に巻きついている感覚だった。
「ああ!なんてこと!」
京介に駆け寄るユニ。
「あなたたち、何をしているのか分かっているのですか!」
痛みにあえぐ京介をかばうように抱え、二人の騎士を叱責する。
しかし、二人の顔に動じた様子はない。
「勇者よ今の呪文は隷属の呪いだ。我らに従うと言えばその痛みはすぐに消える。」
「さあ、従うと言え!」
隷属を迫る騎士。
「いやだ・・・ぜっだい・・・。ああああ!」
拒否の意思を見せた瞬間さらなる激痛が京介を襲う。
「逆らえば痛みは増すだけだぞ!早く従うんだ!!」
「っそ、そうよ。早く従ってください勇者様。」
始め騎士の行いをせめていたユニも自分の帯びた使命を思い出したのか、
京介に隷属を迫る。
「おばえらぁ・・・っぐ!!」
騎士に掴みかかろうと必死で手を伸ばす。
「ぜったいいぃ!同じ目にあわせてやるからなああああああああ!!」
痛みに逆らうように京介が吠えたその時。
突き出された手に光が溢れる。
「な・なん・・・・」
京介の手からあふれ出した光は
騎士たちが言葉を発する間もなくすべてを呑み込んでいった。
疲れたので分割しまーす。
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