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─〔 参 〕─『Are you an entertainer ?<君はエンターテイナーか?>』#III


「何だ、そのガーゼ?ガッコで何かしたんですかい?」

 俺はニタニタしてる紅壬を見ながら言った。

「関係ねぇだろが」

「あぁ! その顔ァ。惚れた女に一発かまされたのか?」

「あんた絶対見てただろ? 絶対学校で見てただろ?」

 ストーカーをしているとしか思えない紅壬に少しビビる俺。

「ところでさ、玖月さんは?」

「お買い物〜」

「そう……んじゃもう一つ聞いていい?」

「何だよ」

「あんたの両脇の女性は誰だよ!!」

 女の人が、俺の言葉に

「ハァ〜イ」

 と、手を振った。

「あぁ、可愛いだろ。胸もちょうどいいし。ルイナも見習えってんだよ。なぁ尭良」

 いや、俺が気にしてるトコと違ぇよ!

「え? この子がアキラくん?」

「い〜や〜だぁ! マジで超かわいいじゃんッ」

「そうか? 俺には憎たらしいガキにしか思えねぇけど」

 憎たらしくて悪かったな。まぁいいや。魔王の超絶極悪非道制裁くらったって、俺は知らねぇかんな。

「あたし尭良くんのこと、好きになっちゃおっかなぁ」

「おいおい尭良ァ。俺の女とんじゃねぇぞ」

 知るか! マジで逝ってくれ! それに俺が好きな女の子は、壱花ちゃんだけだァ!

 俺が紅壬にちょっとした殺意を持ったとき、後ろで突然、物が落ちた音がした。振り返ると玖月さんが立っていた。玖月さんは女の人を横目で見ながら、聞いた。

「紅壬。何、やってんの?」

「よぉお帰り」

「あ、もしかして紅壬の彼氏ィ?」

「んなわけねぇだろ。俺はホモじゃねぇし」

 そう言ってる紅壬を尻目に、玖月さんの雰囲気に『殺』という文字が浮かんでくる。魔王降臨だ。怒りの的じゃない俺でも怖い。

 玖月さんの手がそっと紅壬の肩にのる。とうとう魔王が動いた。動いてしまった。

「紅壬くん、ちょっときなさい」

 玖月さんはとびきり笑顔を見せながら、いやがる紅壬をソファーから無理やり引きずり下ろし、階段をそのまま上がっていく。

 そして……。


  ――――ズッガーン


 ものすごい轟音が聞こえたあと、黒い煙が階段の上から見えてきた。

 そこから玖月さんが平然と笑顔で出てきて、女の人達に向かって言った。

「気をつけてくださいね。変なヤツだから、可愛いお嬢さんたちがいると、すぐナンパして……てことになるんで。じゃあ、お帰りいただこうかな」

 玖月さんの笑顔に女の人達はウンウンとうなずくと、逃げるように出ていった。

「あの……玖月さん」

「ん、何?」

「ズッガーンて……」

「うるさかった? ごめんね」

「そうじゃなくてさ……」

 玖月さんは俺の言葉を無視して伸びをした。

「あ〜スッキリした」

「もしかして、アレ? バのつく大砲?」

「まさか。生身の人間に至近距離でぶっ放したりしないよォ。ア〜ハッハ」

 いや、あんたならするだろ。絶対するだろ。もう気持ち良すぎて、花の子ルン●ンって感じじゃんか。

 ともかく、俺は自分で音の謎を解明するため、煙が出ている紅壬の部屋を見にいった。 すばらしく破壊された部屋の中、数々のエロ本が破れ、紙吹雪となっていた。そして、奥で紅壬が気絶していた。横っちょに黒い大穴があいている。

 どこでバのつく大砲を手に入れたんだろう、ということよりも、凄まじい破壊行動を平気でする玖月さんが怖い。『さん』付けじゃなくて、『様』付けにした方が身のためには絶対いいと、俺は本能で感じた。

 俺が怯えている最中、局長が帰ってきた。下から局長と玖月さんの会話が聞こえてくる。

「ただいま」

「あ。どうだった、予算」

「上が恒例の……ん? 何か知らんが、焦げ臭くないか?」

「そうかな? 今から鮭でも焼こうかなって思ってただけだけど」

 紅壬と鮭は同レベだった。

「サケ? まさかあのピンクいヤツか?」

「え? 鮭、嫌いなの?」

「何を言っている! 当たり前だろう! お前の料理を食べるのにもある意味の勇気が必要なのに、何であんな気持ち悪いピンクの魚を食わねばならんのだ」

「一回サメの胃袋にでもバラバラになって入ってこれば? いや、入らせてあげようか?」

 玖月さんが愛用フライパンを持ちながら言う。局長は怯えてあとずった。

「アハハ。嫌だなぁ、嘘だよ。そんなリアクションしたら、もっと楽しもうと思っちゃうじゃん」

「嘘じゃなかったら余計に怖い。というか、お前はサディストだな」

「アハハ〜。局長がマゾだから合わせてあげてるだけだよ」

「何?」

 局長の頭に怒りのキレマークが付いた。それを玖月さんは見事に無視し、

「さ〜。早く夕ご飯を作らなくちゃァ」

 と、言いながらキッチンに去っていった。

 俺はタイミングを見計らってから、下に降りた。だけど、とばっちり回避には、少し早かったんだろうか。

 局長が怒りオーラをまといながら、こっちを振り向き、

「おぉ…尭良。居たのか」

 と、格好の獲物を見つけたように言った。

 でも、俺にだって向こうには“貸し”があるので、恐怖で引きつる顔を、できるだけ憎たらしいほくそ笑みを浮かべながら、言い返した。

「あん。ちなみに俺も局長はバラバラになってサメかシャチの胃袋に入ってて欲しい」

「……最近玖月に似て来たな、尭良」

「そりゃどうも。それよりルイナは? 一緒に本部へ行ったんじゃねぇの?」

「あぁ。そこで、また本部からまた事件処理の通達があってな。資料を集めてから帰るので先に帰れと言っていた。後から来るだろう」

「へぇ。……ってまた俺たちにかよ」

「そう腐るな。ところで妙に今日は静かだな」

 局長は辺りを見るように、首を横へ振った。

「ん? そういえばアイツがおらんな。どうした、紅壬は」

「まぁ、いろいろあって。玖月さんが正義の鉄球を振り落としたとこだぜ」

 俺の冷や汗かきぎみの笑顔の発言に、局長は全てを悟ったらしい。一瞬にして、苦い顔になった。




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