─〔 参 〕─『Are you an entertainer ?<君はエンターテイナーか?>』#IV
──カランコロン カラン
玄関の熊よけ鈴がなる。
「ただいまァ」
午後八時。疲れ気味のルイナの声が聞こえてきた。くずさま玖月さんのアットホームな返事が返ってくる。
「お帰り。遅かったね」
「あ〜。玖月の笑顔がステキに見えるわ〜」
「……何かその言い方が気になるんだけど」
「まぁそんなことはウルト●マンの故郷ぐらいに置いといて。それより聞いてよ」
一瞬身構える玖月さん。ソファでテレビのリモコンをニュースにするかバラエティにするかで取り合っていた俺と局長も耳をすませた。
ちなみに紅壬はというと、リビングの机で紙吹雪となったエロ本を惜しんで、落ち込んでいた。
「一応今回あたる事件、調べたんだけど妙なのよね」
「それって、被害者たちの関連性?」
「ビンゴ! やっぱ玖月は察しがいいわ。そうなの、関連性が全くもって“ナシ”。しかも、どれも死因が腹部及び頭部強打なのよね」
「ほう。という事は武器持ちか」
局長もいつの間にか会話に入る。ちゃっかりテレビのリモコンを持って。
「もしかしたら素手だったりして」
俺はそう言って、リモコンを奪い返す。局長が眉間にしわを寄せて、
「おのれぇッ」
と小さく言ったのが聞こえた。
「素手なら大したクソ力よ」
「ふ〜ん。で、犯人さんは大体われてんの?」
「名前までとはいってないけど、他の支局の連中に話し聞いたら『ガキ』だって」
「他の支局? 何だ、一回捕まえようと試みたのか」
リモコンの取り合いで俺と猿の喧嘩状態になりながらも、局長は質問した。
「うん。一度ならず何度もよ。でもトライするたびに、大けが負わされてるらしいの」
「で、上は一番成績のここにお願いしたってわけね。子供相手に情けないなぁ」
玖月さんが明らかにバカにして笑った。だけど、冷たい目をだった。あざ笑っている目ではなく、どこか真剣だった。ルイナは何か感じ取ったのか、少し心配そうに声をかけた。
「玖月……」
「ん? 何でもないよ〜」
「……いや、そうじゃなくて」
「へ?」
「いいの? 紅壬が冷蔵庫あけっぱにしている上に、ビールをガバ飲み……」
ルイナは人の事を心配するヤツじゃない事が分かった。
「うゎああァッ?! 何してんの、紅壬っ! ちょっとォ!!」
「ユリちゃんが……。いのピーが……」
エロ本を焼かれたのショックにより、紅壬は自我喪失を起こしてしまっていた。
そんな紅壬がまたビールの缶を空けようとした時だった。
――ピーッ ピーッ ピーッ
『緊急出動命令 緊急出動命令 第1管区9-AX で連続殺人犯逃走の模様 至急現地に急行せよ 繰り返す……――――』
女の人の声がし、俺たちの出動を要請していた。
「紅壬、落ち込んでいるヒマは無いぞ。急げ」
局長はいつになくかっこよく言った。