第1話:学校のWi-Fiをハッキングしてたら、世界が変わっていた。
初投稿です!高校生たちがリアルな世界と異世界を行き来する、ハラハラするような二重生活の物語をお届けします。楽しんで読んでいただけると嬉しいです!
「おいサト、早くしろよ! 先生に見つかったらどうすんだ!?」
ケンジが焦った声で周囲を警戒する。ここは東京の明陽学園、2年B組の教室の後ろ。
スマホを操作しているサトは、額に汗を浮かべながら舌打ちをした。
「わかってるよ、今やってんだろ! あともう少しで学校のWi-Fiのセキュリティが破れる……よし、いける!」
「あんたたち、騒ぎすぎ。休み時間はまだ15分もあるんだから、落ち着きなさいよ」
呆れたように腕を組むのはユキ。その隣で、気弱なメグミがオドオドと制服の裾を引っ張る。
「ねえ、みんな……やっぱりこんなことやめた方がいいよ……」
「メグミ、弱虫なこと言ってんじゃないわよ。少しは男らしくシャキッとしなさい!」
ユキがメグミの背中を叩いた、その時だった。
カシャ、と静かなシャッター音が響く。
「――あは、捕まえた。いい動画が撮れたよ」
いつの間にか背後に立っていたのは、クラスの変人・綾小路だった。その手にはスマホが握られ、画面にはバッチリとハッキングの証拠が映っている。
「この動画、担任の先生か校長先生の手に渡ったらどうなるかな?」
「スマホを消せ! この密告魔が!」
激怒したユキがコウジの首を締め上げ、腹に軽い拳を叩き込む。
「ぐはっ、離せよ……! 先生に言いつけて、学校から追い出してやる!」
「やってみろよ! あんたなんか怖くないんだから! このもやしっ子!」
「こら、お前たち! そこで何をやっている!」
壁の向こうから地獄のような声が響いた。担任の中村先生だ。
ユキは慌ててコウジから手を離し、全員が直立不動になる。
「先生! こいつら授業中もスマホを持ち込んで学校のWi-Fiに不正アクセスしようとしてました! 僕はこの目で見たんです!」
コウジが即座に告げ口する。ユキはコウジに向かって、親指を首に引く「殺すぞ」のジェスチャーを送った。
「す、すみません先生! もう二度としませんから、スマホは5分だけ預かってもらえますか?」
サトが必死に言い訳をする。ケンジも「先生、そんなに怒らないでくださいよ〜」と苦笑い。
「ふん、何年教師をやってると思っている。こんな図々しい奴らは初めてだ。没収した端末は親御さんに取りに来てもらう。……それとコウジ、お前もスマホを出しなさい」
「えっ!?なんで僕まで!? 僕は正しいことを――」
「“善意の目的”であれ、授業中にスマホを操作するのは校則違反だ」
「……え、授業中?」
サト、ケンジ、ユキ、メグミの4人が同時にハッとして教室の時計を見上げた。
「「「「うわあああああああ!!!」」」」
休み時間はとっくに終わり、次の授業が始まっていた。4人は慌てて席に飛び込んだ。
* * *
キーンコーンカーンコーン――。
すべての授業が終わり、放課後のチャイムが鳴り響く。
4人が帰る準備をして教室のドアを開けようとした瞬間、巨体の中村先生が立ち塞がった。
「サト、ケンジ、ユキ、メグミ。……それとコウジ。お前たちは居残りだ」
「ええーっ!? なんでですか先生、今日はもう6時間目終わったのに!」
「校長先生から直々に罰を与えられた。お前たちの“英雄的行為”はすでに親御さんにも報告済みだ。さあ、旧校舎の倉庫の掃除に行ってもらう。行くぞ、野郎ども」
「先生、私は女の子ですよ!?」
ユキがザラついた声で抗議する。
「ああ、そうだなユキちゃん。じゃあ、花壇の水やりでも――」
「あ、いえ、結構です!お掃除頑張ります!」
ユキは恥ずかしそうに、渋々みんなと一緒に倉庫へと向かった。
たどり着いた旧校舎の倉庫は、おそらく15年は人が立ち入っていない暗がりの空間だった。埃の舞う箱やゴミ箱が山積みになっている。
「よし、お前たち、始めろ」
中村先生の指示で掃除を始めたその時、メグミが箱の隙間に光る『謎のスマートフォン』を発見した。
「何これ……?」
全員がそれを覗き込んだ瞬間、スマホの画面が爆発的な光を放ち、4人の身体を強烈な力で内部へと吸い込んでいった。
* * *
光のトンネルのような通路を通り抜け、気がつくと彼らは別々の場所に投げ出され、やがて一つの場所に集まった。
そこは、青空に浮かぶ巨大な島。そしてその上には広大な森が広がっている。
「――ようこそ、英雄たち。世界『ATTELA』へ」
黒いローブを纏った、幽霊のような奇妙な存在が目の前に現れた。
「「「「うわあああああああ!? 誰だお前!?」」」」
「私はチャーリー。このATTELAにおける君たちの案内人であり、ルール管理人さ。まずはチュートリアルエリア(練習場)へ移動しよう」
「待て待て待て!ここどこだよ!?意味わかんねえ!」
ケンジが叫ぶが、チャーリーは冷淡に微笑む。
「言っただろう、私はチャーリー。質問の時間がおしまいなら、移動だ」
チャーリーが手を挙げると、足元の地面のパーツが切り離され、空へと上昇し始めた。
空中に浮かぶ別の島に到着すると、虚空に大きな文字が浮かび上がった。
【Dallaの平原】
「さあ、プレイヤー諸君、自分のアバター(職業)を確認してくれ」
「俺は魔法使いか!」とサトが叫ぶ。
「俺は騎士だな」とケンジが剣を構える。
「私は忍者ね!」とユキが身を乗り出す。
「……これ、なんか変。僕はなんだろう?」とメグミが困惑する。
「素晴らしい。では、この世界での『偽名』を決めてくれ」
ケンジが「名前なんて必要なのか?」と聞くと、サトが答える。
「落ち着けよ、ゲームのニックネームみたいなもんだろ。俺は……『アレクサンド』、いや『グレゴール』……うーん、『フィリップ(FILIP)』にする!」
サトは両手を広げ、誇らしげに胸を張った。
ユキはフンと鼻を鳴らし、「じゃあ、そのバカみたいな名前よりカッコいいのにする。私は『エリザベス(ELIZABET)』よ」
ケンジはため息をつき、「じゃあ俺は『アルタス(ARTUS)』でいいや」
最後にメグミが静かに言った。
「みんなが決まったなら、僕は『ベクトル(VECTOR)』にする」
「「「おおおおお!」」」
「な、何?」と驚くメグミに、ユキが笑う。「やるじゃん弟、カッコいい名前!」
サトも「響きがいいな、ベクトル」と称賛した。
チャーリーが拍手をする。「素晴らしい。では、演習を始めよう」
その瞬間、頭がカボチャのようになった不気味なモンスター『平原の看守』が4体、地中から現れた。
4人が動惑した瞬間、チャーリーが指を鳴らす。
モンスターたちの頭上に【PAUSE(一時停止)】のマークが浮かび、動きがピタリと止まった。
「あ、言い忘れたけど、君たちはまだ武器の使い方がわからないよね? 教えようか?」
ユキが足元の石をチャーリーに蹴り飛ばした。
「あんた、そういうことは先に言いなさいよ!これでも案内人なわけ!?」
「おっと、私に攻撃は効かないよ」とチャーリーはかわす。
ケンジが「ユキ、落ち着け。まずはこの魔物を何とかしないと」となだめ、サトが「見ろよ、あいつら牙を剥いてるぞ」と警戒する。
メグミは青い顔で「学校に帰ろうよ……。あの人喰いカボチャ、僕たちを昼飯にする気だよ……」と呟いた。
サトが「ただの警告だよ、メグミ」と返す。
「プレイヤー諸君、よく聞いてくれ」とチャーリーが言う。
サトが尋ねた。「おい、最初の魔法使いは何ができるんだ?」
「いいだろう、フィリップ殿。手首のスマートウォッチ(賢い時計)を押してくれ」
サトがボタンを押すと、目の前に光るメニュー画面が開いた。
「うおっ、すげえ!」
「ここには様々な魔法がある。だが初期段階では『火炎球』しか使えないよ」
サトが画面の『死霊術』を押すが、【レベルが足りません】と警告が出る。
「チャーリー、これ何だよ!?」
「ネクロマンシーはレベル16で解放される。気にするな」
ケンジがサトを押し退けて聞いた Susanoo「チャーリー、俺の能力は?」
「君は剣と盾で戦う。右肩の後ろを触ってごらん」
ケンジが右肩に手を伸ばすと、大剣が握られた。さらに左手には、細長い盾が出現する。
「私は?」とユキが聞く。
「君はクナイで戦う。素早さと俊敏性が武器だ。まだレベルは低いがね」
最後にメグミが聞いた。「僕にも何かある?」
「君は様々な機械やトラップを作り出すことができる(クラフター)」
ケンジが焦る。「待てよ、俺たちまだこれを使う方法を知らないぞ!」
「習うより慣れろ、だ」
チャーリーが再び指を鳴らすすると、モンスターたちの【PAUSE】が解除され、一斉に襲いかかってきた。
「おいみんな、こいつらただの雑魚ボットだ!行くぞ!」
ケンジ(アルタス)が突撃し、モンスターの木製の剣を自身の剣で激しく弾き返す。
ユキ(エリザベス)の方にも看守が襲いかかる。ユキはクナイを構え、本能的に上空へと跳躍した。それは人間の跳躍力を遥かに超えていた。
「(……動ける!)」
ユキは空中で不敵に微笑むと、綺麗にサルト(宙返り)を決めてモンスターの背後に着地、クナイでその首筋を正確に切り裂いた。
サト(フィリップ)の前にも魔物が迫る。彼は魔法の杖を構え、ウォッチの画面から『火炎球』を選択した。
ドオオォン!と激しい炎が放たれ、モンスターは一瞬で灰へと変わる。
最後にメグミ(ベクトル)の番だ。彼は悲鳴を上げながら逃げ回り、倉庫の箱のようなオブジェクトに激突した。そこにはアイアン(鉄)と魔法石のマークが刻まれた箱があった。
メグミが恐怖で手をかざした瞬間、彼の指に『テレキネシスの指輪』が出現した。
メグミが手を上に突き上げると、見えない力がモンスターを捉え、その首を強引に引きちぎった。
グラゴゴゴ……と周囲にファンファーレが鳴り響く。
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【レベルアップ】
・フィリップ(サト):Lv 1 ➔ Lv 2 新魔法:氷結
・アルタス(ケンジ):Lv 1 ➔ Lv 2 スキル:高速デバフ
・エリザベス(ユキ):Lv 1 ➔ Lv 2 新武器:特殊クナイ&カモフラージュ
・ベクトル(メグミ):Lv 1 ➔ Lv 2 スキル:アイテム修復・作成
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チャーリーが微笑む。「お見事、英雄たちよ。ゲームをセーブして現実に戻るかい?」
全員が声を揃えて叫んだ。「「「「イエス!!!」」」」
* * *
パッと視界が切り替わる。
気がつくと、彼らは夜の学校の倉庫に立っていた。
スマホの時計を見ると、【21時47分】。
4人は呆然として、自分の目を疑った。何が起きたのか理解できなかった。
「……夢、だよな? サウナで見る熱い幻覚か何かだろ……」サトが震える声で言う。
「あんたバカ? 今は4月よ? そんな幻覚あるわけないでしょ」ユキが突っ込む。
「僕たち、ブレイン・マシン・インターフェースでUSBに繋がれてたのかも……」メグミがメガネを押し上げる。
ケンジが「俺たちの脳がバグったって言うのか?」と頭を抱える。
ユキが真剣な表情で言った。
「選択肢は2つ。私たちが全員狂ったか、……それとも、あれが現実かよ」
「……サト、これを見てくれ」
ケンジがサトのスクールバッグを指差した。
サトが恐る恐るバッグを開けると、そこには、異世界で使ったはずの『魔法の杖』と『スマートウォッチ』が綺麗に収まっていた。
ケンジのバッグからは重厚な『騎士の剣』が、ユキのバッグからは鋭利な『クナイ』が、そしてメグミの手には、先ほどの『金属のグローブと指輪』が嵌められていた。
4人は言葉を失い、お互いを見つめ合った。
これから始まる二重生活。彼らが体験したものは、紛れもない「現実」だったのだ。
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次話もお楽しみに!




