異世界の美少女三人が魔王討伐するそうです。
ぐつぐつ。
3つの棒を交差させて、鎖で吊るした鍋が茹で上がっている。
見るも無惨な色だった。
「なんの魔術に使うんだ?」
犬耳美少女の紅蓮は持っていた剣で指さした。
「見てわかんない?夕ご飯だよ」
さも当然そうに、セラフィナは言い放った。
セラフィナは闇魔同士ゆえ、どう見てもそっち系にしかみえない。
しかし、作っているのは料理なのだ。
セラフィナからしたら、紛れもないハンバーグだった。
「せめて、スープと言ってほしかったな」
エリシアは正直に感想を言った。
元聖女のエリシアは鼻を掴んでいる。
相当な匂いだった。
「香しいだろう」
セラフィナのセンスは絶望的だった。
それでも料理当番はセラフィナだから食べざるを得ない。
スープみたいなハンバーグを。
セラフィナは茹でている液体を木の棒でかき混ぜている。
すべてがデタラメだった。
紅蓮は呆れて剣でセラフィナをぶっ刺した。
これ以上、毒物を生成させるわけにはいかなかった。
「何をする!」
口端から血を垂らしながらセラフィナが抗議する。
背中を刺されたことは無視している。
なぜならエリシアが回復魔法をかけてくれているからだ。
「もう、こんなことやめよう。味方同士で殺し合うなんて」
「それは致死量の毒物を料理とのたまっているやつに言えよ」
「毒物じゃない。ハンバーグだ!」
「スープにしか見えないけど、錯覚よね?」
エリシアはやさしかった。
「そう、錯覚だ。誰がどう見てもスープにしか見えないハンバーグだ」
「おまえも液体に見えてるんじゃないか」
紅蓮のツッコミは冴え渡っていた。
こうみえても三人は勇者パーティだ。
これから魔王を倒しに行くところである。
ちなみに出発地点の城はまだ景色の遠くに小さく見えている。
まだ旅立って、いくらも経っていなかった。
「セラフィナはもう追放するしかない」
紅蓮は諦めるように呟いた。
「代わりに私をくわえてみたらどうか」
それは倒しに行くはずの魔王だった。
「なんでおまえがいるんだよ!」
セラフィナの言うことも最もだ。だが、魔王は鍋を見やりながら言った。
「これは一滴で人一人を殺れるシロモノだ。こんなのを生成するやつに私を討伐させるわけには行かない。やはり勇者は正義の味方でないといけない」
「たしかに」
紅蓮は納得していた。
「でも、魔王さん、あなたが悪でなければ、わたしたちが討伐に行く必要もないんです。だから、メンバーに加わることはできません。セラフィナをお願いします」
なにげにエリシアは辛辣だったりする。
「私の下には四天王がいる。セラフィナを加えると五将軍になるが、いいのか」
「まあ、セラフィナクラスが五人いても倒せるから無問題」
紅蓮は気にしていなかった。
「それであたしはこれからどうしたらいいんだ?」
「セラフィナは追放されるんだから、魔王と結婚して、ざまぁすればいいじゃね」
紅蓮はいい加減だ。
「良い案ね。セラフィナが幸せなら、わたしはそれで十分」
「何が十分なんだ。私にも選り好みはある」
魔王は拒絶した。
「一応、あたし美少女なんだけど」
「私は未成年は相手にしない主義だからな」
「そういうことなら、セラフィナが成年するまで、討伐は待つことにます」
エリシアの決断ははやかった。
「そうしてくれると助かる。それまではわが配下として、立派に育ててやろう」
「魔王が太鼓判を押すほどの力量、手放すには惜しいが、頑張れよ、セラフィナ」
紅蓮はまったく残念そうではなかった。
「なんだよ。じゃあ、あたしが城に帰って王様潰すわ」
「なんでそうなるかはしらんが、私の討伐命令がなくなるのならそれでいいぞ」
「んじゃ、戻るか」
紅蓮の機転はすばやかった。
旅立って早々だったが、三人は城攻めに方針転換したのである。
それが後世に語り継がれる三王一国制度のはじまりであった。




