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異世界の美少女三人が魔王討伐するそうです。

作者: リン
掲載日:2025/11/02

  ぐつぐつ。

 3つの棒を交差させて、鎖で吊るした鍋が茹で上がっている。

 見るも無惨な色だった。

「なんの魔術に使うんだ?」

 犬耳美少女の紅蓮は持っていた剣で指さした。

「見てわかんない?夕ご飯だよ」

 さも当然そうに、セラフィナは言い放った。

 セラフィナは闇魔同士ゆえ、どう見てもそっち系にしかみえない。

 しかし、作っているのは料理なのだ。

 セラフィナからしたら、紛れもないハンバーグだった。

「せめて、スープと言ってほしかったな」

 エリシアは正直に感想を言った。

 元聖女のエリシアは鼻を掴んでいる。

 相当な匂いだった。

「香しいだろう」

 セラフィナのセンスは絶望的だった。

 それでも料理当番はセラフィナだから食べざるを得ない。

 スープみたいなハンバーグを。

 セラフィナは茹でている液体を木の棒でかき混ぜている。

 すべてがデタラメだった。

 紅蓮は呆れて剣でセラフィナをぶっ刺した。

 これ以上、毒物を生成させるわけにはいかなかった。

「何をする!」

 口端から血を垂らしながらセラフィナが抗議する。

 背中を刺されたことは無視している。

 なぜならエリシアが回復魔法をかけてくれているからだ。

「もう、こんなことやめよう。味方同士で殺し合うなんて」

「それは致死量の毒物を料理とのたまっているやつに言えよ」

「毒物じゃない。ハンバーグだ!」

「スープにしか見えないけど、錯覚よね?」

 エリシアはやさしかった。

「そう、錯覚だ。誰がどう見てもスープにしか見えないハンバーグだ」

「おまえも液体に見えてるんじゃないか」

 紅蓮のツッコミは冴え渡っていた。

 こうみえても三人は勇者パーティだ。

 これから魔王を倒しに行くところである。

 ちなみに出発地点の城はまだ景色の遠くに小さく見えている。

 まだ旅立って、いくらも経っていなかった。

「セラフィナはもう追放するしかない」

 紅蓮は諦めるように呟いた。

「代わりに私をくわえてみたらどうか」

 それは倒しに行くはずの魔王だった。

「なんでおまえがいるんだよ!」

 セラフィナの言うことも最もだ。だが、魔王は鍋を見やりながら言った。

「これは一滴で人一人を殺れるシロモノだ。こんなのを生成するやつに私を討伐させるわけには行かない。やはり勇者は正義の味方でないといけない」

「たしかに」

  紅蓮は納得していた。

「でも、魔王さん、あなたが悪でなければ、わたしたちが討伐に行く必要もないんです。だから、メンバーに加わることはできません。セラフィナをお願いします」

 なにげにエリシアは辛辣だったりする。

「私の下には四天王がいる。セラフィナを加えると五将軍になるが、いいのか」

「まあ、セラフィナクラスが五人いても倒せるから無問題」

 紅蓮は気にしていなかった。

「それであたしはこれからどうしたらいいんだ?」

「セラフィナは追放されるんだから、魔王と結婚して、ざまぁすればいいじゃね」

 紅蓮はいい加減だ。

「良い案ね。セラフィナが幸せなら、わたしはそれで十分」

「何が十分なんだ。私にも選り好みはある」

 魔王は拒絶した。

「一応、あたし美少女なんだけど」

「私は未成年は相手にしない主義だからな」

「そういうことなら、セラフィナが成年するまで、討伐は待つことにます」

 エリシアの決断ははやかった。

「そうしてくれると助かる。それまではわが配下として、立派に育ててやろう」

「魔王が太鼓判を押すほどの力量、手放すには惜しいが、頑張れよ、セラフィナ」

 紅蓮はまったく残念そうではなかった。

「なんだよ。じゃあ、あたしが城に帰って王様潰すわ」

「なんでそうなるかはしらんが、私の討伐命令がなくなるのならそれでいいぞ」

「んじゃ、戻るか」

 紅蓮の機転はすばやかった。

 旅立って早々だったが、三人は城攻めに方針転換したのである。

 それが後世に語り継がれる三王一国制度のはじまりであった。

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