【第12章冒頭】消えない後悔 【第13章】死者の声は届かない
【第12章冒頭】消えない後悔
転移陣が作動し、レオンたちは王都近くへ戻された。
だが誰も口を開けなかった。
「俺たちが……もっと早く、気づいていれば……」
「無茶でも、止められたかもしれない……」
ジークが拳を壁に叩きつける。
「先生は……先生は、最後まで……あたしたちを信じてたのに……」
エリナの目には、涙があふれていた。
レオンは、静かに封印剣を握りしめた。
「……俺が、全部を終わらせる。そのためにこの剣が、ここにあるなら」
彼の眼差しには、もう迷いはなかった。
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【第13章】死者の声は届かない
王都に戻った翌朝、3人は士官学校へと急いだ。
「……先生がいない。やっぱり、本当に……」
誰もが現実を受け止めきれずにいた。
しかし、職員室に駆け込んだレオンたちは、信じられない光景を目にする。
「おはよう、3人とも。顔色が悪いぞ? 何かあったかね?」
——そこには、ガラルド先生が、平然と立っていた。
「……な……っ!? 先生……? なんで……!? いや……!」
近づいてみれば、確かに姿かたちはそっくりだ。だが、目が違う。あのときの優しさも、熱も、何もない。
「“先生”……あなたは誰だ……」
ジークが呻くように問いかける。
「何を言っているんだ? 君たち、少し休んだ方がいいようだな」
その言葉にレオンは背筋を凍らせた。
——記憶を偽る。存在を塗り替える。まるで「最初から死などなかった」と言わんばかりの態度。
レオンたちは校長室へ向かい、事の顛末を全て報告した。
「——……ふむ、なるほど。しかし……」
校長は、ため息をついて告げた。
「残念だが、それは君たちの誤解だ。古代遺跡に行った記録も、任務の命令も存在しない。ガラルド教官も、ずっと学院にいた」
「そんな……!!ウソだろ、あんなことが“なかった”なんて、あり得るか!!」
ジークの怒声が響くが、校長は無表情だった。
「これ以上、騒ぐようなら……君たちの“命”にも関わるぞ?」
——権力の圧力。見えない手が、真実を闇に葬ろうとしている。
そして翌日。
先生の姿を目にした他の生徒たちも、口を揃えてこう言った。
「え? ガラルド先生なら、昨日も授業してたじゃん?」
全てが、すでに“改ざん”されていた。
だが、レオンたちは諦めなかった。
「先生の最後の言葉……“この国の上層部は腐っている”って……あれは、やっぱり本当だったんだ」
「封印剣の記憶、そして共鳴。俺たちだけは、真実を見てる。だから……」
ここには居られない。士官学校から抜け出さなければ。だが行く宛など無い
途方にくれた3人の前に現れたのはガラルド先生の置き手紙だった
置き手紙は3人の勉強机の引き出しの中にあった
『万が一士官学校に居られなくなる様な事があれば地下へ行き、レジスタンスを探しなさい。きっと皆の力になってくれる事だろう』
と懐かしい文字で書かれていた
——レオンたちは、地下での真相追求を開始する。
王都の裏にある情報屋、旧時代の文献を扱う禁書庫、そして元騎士団の脱走者たち。
「真実」を探るため、表では動けないまま、秘密の組織的行動を始めていく。
封印剣は、夜ごとに微かに輝いた。
それは、まだ“終わっていない”ことを告げていた。