【第10章】仕組まれた罠と“器”の出現 【第11章】沈黙の神殿と共鳴の剣
【第10章】仕組まれた罠と“器”の出現
調査対象は、王都から離れた廃村にある朽ちた神殿。
そこは魔力の淀みが強く、まるで何かを“封じていた”場所だった。
だが、神殿に足を踏み入れた瞬間——
「閉じた……!? 外との魔導通信が遮断された!?」
「……これは罠だ!」
その直後、神殿の最奥にて異変が起こる。
苦しむ村の生き残りの少年。その身に刻まれた、魔神の紋章。
「やめろ! 近づくな——!」
レオンの《アスカリア》が激しく共鳴し、紅い輝きを放つ。
だが少年はまだ“未覚醒”。覚醒すれば、この場の全てを破壊しかねない。
「なんで……こんな子供が器に……!」
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【第11章】沈黙の神殿と共鳴の剣
朽ちた神殿は、静寂に包まれていた。天井は崩れ、陽の光が斜めに差し込む中、レオン、ジーク、エリナは慎重に進んでいた。
「ここ、魔力の密度が異常に濃い……普通の遺跡じゃないな」
ジークが呟く。
「まるで、何かを封じていた場所みたい……」
エリナの声にも不安が滲んでいた。
最奥に辿り着いたその時、彼らの目の前に、ひとりの少年が倒れていた。年の頃は12〜13歳。痩せ細り、肌は青ざめている。
「……生きてる!けど、体が熱い……」
レオンが近づくと、少年の胸元から淡く赤黒い光が漏れ出す。
その瞬間——《アスカリア》が激しく震えた。
「な……何だ!?剣が……!」
黒き封印剣が、赤く輝き始める。共鳴だった。少年の体内に、“何か”がいる。
「まさか……この子が“器”……?」
しかし、それはまだ「覚醒」していない。ただし、このまま放っておけば……。
ゴウッ!
突如、少年の身体から魔力が暴発し始めた。柱が砕け、壁が割れ、天井の一部が崩れ落ちる。
「まずい!この神殿が持たない!」
「封印術で抑えるわ!」
エリナが精霊術で足止めを試みるが、封印魔力が暴走する。
「剣の封印、合わせろレオン!」
ジークが叫び、二人は剣をクロスさせて、剣に宿る封印魔力を引き出した。
——だが、そのときだった。
背後から、黒衣の男たちが現れた。
「覚醒させよ。我らが主を迎える時だ」
刺客だった。王都の“何者か”に仕組まれた罠。
「クソ……そういうことか……!」
レオンたちは同時に二つの脅威に晒された——“器の暴走”と“刺客”。
剣を振るうも、魔力の干渉でまともに動けない。
「っ……だめだ、手が……震える……」
少年の目が、ゆっくりと開いた。
その瞳は、紅く濁り、恐怖と狂気を帯びていた。
「やめろ!!目を覚ませぇぇっ!!」
レオンの叫びも虚しく、少年の周囲に〈魔神の紋章〉が浮かび上がる。空間がねじれ始める——!
だがそのとき、閃光が走った。
「お前たち……よく戦ったな。ここからは、私が引き受ける!」
——ガラルド先生が神殿へ飛び込んできた。
「先生っ!!」
「後ろに下がれ! この子は“完全には覚醒していない”。まだ、戻れる余地はある……ならば、私が封じる」
先生の両腕が光を帯びる。封印術式が連続展開され、魔力の嵐を押さえ込んでいく。
「……だが、時間がない。こいつらを連れて脱出しろ。エリナ、転移陣を展開できるか」
「でも……先生は……!」
「命令だ。逃げろ、今すぐ!」
——次の瞬間、刺客が先生へと魔槍を放った。
ズバッ……!
「先生っっ!!」
ガラルドはその一撃を受け止めながらも、エレナの作りかけの転移陣の構築を無理やり完了させた。そして、最後の一撃を振り絞る。
「《封神陣・絶封》!!」
空間が崩れ、少年と先生が封印結界の中に飲み込まれていく。
「行け……レオン。君が……未来を変えるんだ」
最後の言葉とともに、先生の姿は光の中に消えた。
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