【第6章】剣の真名と“声” 【第7章】目覚める運命
【第6章】剣の真名と“声”
それは、漆黒の刀身を持つ、優美な長剣だった。
刃には古代語のような文様が浮かび、柄には紅い宝玉が埋め込まれている。
「封印は解いた。あとは、お前が“真名”を問うだけだ」
「……どうすれば?」
「その剣を手に取り、心の奥で名を問え。お前が認められれば、答えてくれる」
レオンは静かに剣を握る。
冷たいはずの金属が、まるで脈打つように温かさを宿していた。
目を閉じ、意識を沈める。
——誰だ。お前は、誰だ。
心の奥底で、レオンは問いかけた。
沈黙の中、ふと、柔らかくも荘厳な声が響いた。
『——我が名は《アスカリア》。かつて万象を断ち、十二の魔神を封じし《封滅の刃》なり』
その瞬間、紅い宝玉が淡く光を放ち、剣とレオンの間に、確かな絆が結ばれた。
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【第7章】目覚める運命
ロスト鍛冶工房を出たレオンの背には、世界が少しだけ違って見えた。
騒がしい王都の喧騒も、遠く聞こえる鳥の声も、何かが“始まった”ように感じる。
だがそのとき、背後にふとした気配。
振り返ると、フードを被った黒衣の人物が立っていた。
「……ようやく《封滅の刃》が目覚めたか」
「誰だ!?」
その人物は一歩前に進むと、静かに言った。
「“器”の目覚めは、すでに始まっている。お前の力も、それに巻き込まれる運命だ」
次の瞬間、黒衣の者は煙のように姿を消した。
レオンは剣の柄を強く握る。
「器……? 魔神と、この剣……関係があるってことか……?」
運命の歯車が、静かに、そして確かに動き始めていた。
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