【第4章】修繕の依頼 【第5章】ロスト鍛冶工房と封印の解放
【第4章】修繕の依頼
士官学校に戻ったレオンたちは、遠征の成果を報告した。
錆びた剣を見せると、ガラルドはそれを手に取り、重々しく頷いた。
「……この剣、ただの遺物ではないな。何か……禍々しいものが眠っている気がする」
「……使ってはいけないもの、ということですか?」
「いや。むしろ、使えるようにすべきだろう。リュシェル先生に話して、王都の《ロスト鍛冶工房》へ持って行け。あそこなら、ただの錆も、真の姿に戻せるかもしれん」
こうして、レオンは一振りの古の剣を携え、鍛冶屋へと向かうことになる——それが、彼の運命を変える第一歩だった。
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【第5章】ロスト鍛冶工房と封印の解放
王都の東側、迷路のような路地裏にひっそりと佇む《ロスト鍛冶工房》。
外見は古びた木造の一軒家で、看板もかかっていない。だが、その扉の奥では、常識を超えた鍛冶の技が息づいていた。
レオンが中へ入ると、金属の焼ける匂いと、鋼を打つ音が迎えてきた。
「いらっしゃい。……って、お前、士官学校の子か?」
カウンターの奥から現れたのは、片腕が義手の老人だった。短く刈り込んだ白髪に、鋭い目。かつて“王国の黒炎鍛冶”と呼ばれた名工、バズ=ローデルである。
「ガラルド先生からの紹介です。この剣の修繕をお願いしたいんですが……」
レオンが錆びた剣を取り出すと、バズの目が一瞬、鋭く光った。
「……ふむ。こいつは、ただの遺物じゃねぇな」
彼は剣を手に取り、細部を丹念に調べる。
「これは封印されとる。しかも、外からの魔力じゃなく、自分自身の意思で……」
「意思、ですか?」
「この剣には、“心”がある。お前を選んだってことだろうな……」
バズは奥の工房へ剣を運び、分厚い扉の向こうで作業を始めた。
金属を焼く音、魔力の共鳴音、そして——封印の呪紋が砕ける鈍い音。
数時間後、再び現れたバズの手には、全く別物の剣が握られていた。