魔神の幼女、現る
「ぬぁあ? ロリとは何じゃロリとは。その言葉はガキに使うものじゃぞ」
「お前じゃん」
「何じゃと! 妾はこう見えて千歳は超えておるのじゃ」
「ロリババアじゃねぇか!」
「不快な文字を2つも並べるでないのじゃ!!」
「全く、最近の人間は礼儀がなってないのじゃ」と言いながら不貞腐れるヴァルフェナス|《幼女》。仕草そのものが完全にガキのあれだった。
「それはそうと、おじさん。貴様の能力を見せてみるのじゃ」
(はぁ? 能力だぁ?)
突然、ヴァルフェナス|《幼女》がよくわからないことを言ってくる。
異世界転生モノに良くある転生特典というヤツだろうか。だが、俺はそんな物をもらった記憶はない。
白い空間に美しい女神が現れて、「あなたにチートスキルを与えましょう」なんていうテンプレ展開は起きなかったからな。
「貴様、見た所《転生者》じゃろ」
咄嗟に鋭いセリフを言われ俺は少し驚いた。
「へぇ、そんなの分かるのか? ああ、そうだ。よくわかったな」
「ふっふー! 妾の《魔眼》|《超すごいお目々》は相手のステータス、出身地、好きな食べ物から嫌いなものまで丸っと見ることができるのじゃ。どうじゃ? すごいじゃろ! 恐ろしいじゃろ! 褒めるのじゃ」
つくづく、魔神には見えない言動をする幼女を横目に肩を竦める。
てか、魔神の魔眼の名前が《超すごいお目々》はどうかと思う。流石にネームングセンスが死んでいる。
「……名前ダサすぎねぇ?」
「な、何を言うのじゃ!? カッコいいじゃろ!!」
「いやいや、もうちょい威厳ある名前にしようぜ……魔神さんよ」
「ぐぬぬぬ……!」
「はいは。すごいすごい」
「その適当な褒め方はなんじゃ!! 後遅いのじゃ!」
ぷくー。と頬を膨らます魔神。どうやらコレ《ヴァルフェナス》に威厳なんてものは存在しないようだ。
「で、能力だっけ?」
「そうじゃ。妾の《魔眼》|《超すごいお目々》には貴様は『生活物資』という能力を持っていると出ておるのじゃ。コレは何じゃ。まず、性格物資って何なのじゃ?」
「それが俺の能力なのか? 生活物資? なんだそりゃ」
「そうじゃ。なんじゃ? 知らんのか!? 自分のスキルくらい把握するのじゃ!!」
「知らねぇよ! 転生したばっかだし! それはそうと、百聞は一見に如かずだ。発動方法を教えてくれ」
「なんじゃ。そんなことも知らんのじゃな! 発動方法は至ってシンプルじゃ。ただその名前を叫ぶだけで良いのじゃ」
「なるほどな、よっしいっちょやってみるか!」
俺は息を整え——
「《生活物資》!!」
バシュッ!!
年相応に合わない叫び声をあげると、俺の前に、突然新品の鉄鍋が出現した。
「ぬおお!? なんじゃその魔道具は!!」
「魔道具じゃねぇよ、ただの鍋だ」
「ぬうう!? これは凄まじい力の可能性があるのじゃ……!」
「鍋になんの期待をしてるんだよ」
「この魔道具のことじゃないのじゃ。ぬしの能力のことなのじゃ」
「生活物資になんの期待してるんだよ」
「この力、ぬしが考えているよりすごいものかもしれんのじゃ」
よくわからないことを言っている幼女を横目に作業を再開する。
「とりあえず、何か作ってみるか」
「ぬし! 妾のために、もっともっと美味いものを作るのじゃ!!!」
「お前、さっきまで瀕死だったくせに元気すぎるだろ!!!」