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「ねえ、大丈夫?」

作者: 北緯64度

AとBがショッピングモールでデートしていると、偶然にもベビー用品のプロモーションイベントに出くわした。


一列に並ぶ小さくて可愛い服を見て、Aは思わず近づいて見入ってしまう。しかし、Bは明らかに気乗りしない様子で、話題を変えようと試みていた。


5年前、Aは友人の集まりでBと出会った。Bの熱烈なアプローチの末、二人は出会って1週間も経たないうちに付き合い始め、交際3ヶ月で同棲を開始。それ以来、ずっと一緒に暮らしている。


二人とも結婚を望んではいるが、子供を持つことについてはどうしても意見が一致しない。理由は二つ。Bが自ら話題にすることがないのと、Aが切り出しても、今回のように話が途中で終わってしまうことが多いからだ。


Aは子供の笑い声がない人生を想像することができなかった。そして、勇気を振り絞り自分の思いを伝える決意をした。


「子供、欲しくないの?」


「……君は欲しいの?」


Aはうなずき、Bの目を真っ直ぐ見つめた。その目の奥にある渇望と恐れを感じ取る。


「数年後に考えるのじゃダメかな?」


Aの胸はズシリと重くなった。Bは90点の理想的な恋人だけれど、本当に自分たちが合っているのか疑い始めた。


「本当に欲しくないなら正直に言っていいよ。こういうのって無理強いするものじゃないし。」


「欲しくないわけじゃない。ただ……ああ、もう!先に約束してくれ、絶対に笑わないって!」


何度も誓い、早く続きを話すようBを促した。


「君が子供好きなのはわかってる。でも、子供ってあんなに可愛いだろ?俺があいつらに勝てるわけないじゃないか……」


Aは体を震わせ、最後にはこらえきれずに笑ってしまった。それを見たBは怒って足早に立ち去る。慌てて追いかけ、謝りながら声をかけた。


「ねえ、私そっくりのミニ版が生まれてきて、毎日私とあなたを取り合うところなんて想像したことない?」


Bは足を止めた。驚きで固まった顔が徐々に赤く染まり、最後にはその場に身を屈め、頭を抱え、大きなため息をついた。


「たとえ私のミニ版じゃなくても、私たちは絶対にあなたに二倍の愛を注ぐよ。本当に欲しくない?」


Bは小さな声で『欲しい』と呟いた。Aは彼の前に静かに膝をつき、前髪を整え、そっと頬にキスをした。

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