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61話 クロエの人格

「もう・・・そういうのはやめてください!」


 ヴァーミリオンのセリフに一瞬ドキッとしてしまいました。


「いや、俺は結構本気だぜ。それにお前にとって有益な話をしてるんだぜ?」


「何がですか?」


「アンドロイドに自我を持たせるって話、結構性欲と切り離せないかもしれない」


「どういう事ですか?」


「俺が自我に目覚めたのはお前に対する性欲がきっかけかもしれねえって事だ」


「わたしに欲情したのが自我の目覚めっていう事ですか!」


「まあ、端的に言うとそういう事だ」


 ・・・この人は本当に性欲の権化だった様です。


「性欲って言うと聞こえが悪いが、まあつまり『愛してる』って事だな。


「愛と性欲は違います」


「似たようなもんだろ?お前だってあの執事にだったら抱かれていって気持ちが少しはあるだろう?」


 一瞬、あの山小屋の事を思い出してしまいました。


「・・・そんな事・・ありません!」


「お前、嘘がつけねえな。顔が真っ赤になってんぞ。何想像してたんだよ?」


「何も想像してません!」


「まあいいや、でも『愛情』って奴の根底にあるのは『性欲』つまりは『生殖本能』って奴だろうな。あえてアンドロイドにそんな本能を植え付けた理由ってのが有るはずだ」


「それって人間の三大欲求って事ですか?」


 人間には本能的な欲求の根底に、『食欲』・『睡眠欲』・『性欲』の三つが存在すると言われています。


「そうだな、お前、『食欲』や『睡眠欲』は否定しないだろ?」


「確かに、おいしいものを食べるのは好きですし、眠るのも割と好きですが・・・」


 眼ると夢の中でお嬢様に会えるので、最近は寝るのが楽しみだったりします。


 ・・・でも性欲はどうかと言われても・・・


「ま、大抵の奴は理性や常識がどうとか言ってあまり性欲を表に出してこねえよな?お前もそうだろ?」


「別に隠しているとかそういう訳じゃ・・・」


「だがそう言った本能的な欲求や色んなものが重なって人間の人格って奴が出来てんじゃねえのか?」


「それはそうかもしれませんが・・・その話がどうして私の役にたつというのですか?」


「お前、例のクロエってアンドロイドの中で眠ってる『お嬢様』を目覚めさせたいんじゃないのか?」


「それはもちろんそうですが・・・でも、クロエが自我に目覚めたとしても、それは生前のお嬢様ではないのです」


「元のお嬢様は死んじまってるって奴だろ?ところがそうでもねえかも知れねえぜ」


「何を言ってるのですか?」


「クロエってアンドロイドの中に生前のお嬢様の自我が残ってる可能性があるぜ」


「それは!・・・何を根拠にそう思うのですか?」


「前にあいつと一日一緒にいた時に聞いたんだが、あいつには好きな相手がいるそうだ。ずっと前からそいつの事が好きで、今でもそいつは身近なところにいるらしい」


 お嬢様に好きな相手がいたなんて初耳です。

 でも・・・今でも身近にいるって事は・・・・


「そう、あの執事しかいねえよな?ずっと以前から知っていて、今でも身近にいる男なんてあいつだけだろ?」


 お嬢様がバスティアンの事が好きだったなんて・・・聞いたことがありませんでした。


「クロエってアンドロイドはお嬢様の生前から人工脳をリンクしてたんだよな?ここからは俺の推論なんだが、アンドロイドの人工脳に自我って奴が目覚める要因に性欲なんかの本能が関与してるとすれば、その状態で好きな男が出来たのならその時から人工脳にも自我を共有してたんじゃねえのか?」


「それって・・・お嬢様の生前からお嬢様自身の自我がクロエの中にあった可能性があると・・・そういう事ですか?」


「ああ、生身の脳と人工脳と両方に自我を共有してたのなら、片方が無くなったとしても、もう片方にオリジナルの自我が継続して存在してるんじゃねえのか?」


 お嬢様の自我が継続してクロエの中に存在してる可能性がある!


 それは私にとって何物にも代えがたい希望の光です。


 ・・・もしかして、わたしが見る夢の中のお嬢様はクロエの中に残っているお嬢様の自我なのかもしれません。


 今度夢を見た時に何とか確かめてみる事は出来ないでしょうか?




「でも、それが本当かどうか確かめるにはどうすればいいのでしょう?」


「さあな?それは本人にしかわからねえ。いや、本人にもわからねえだろうな。俺もそうだが、お前もスリープモードから復帰した時の自分が以前の自分そのものかコピーされたものかなんて、どうかなんてどうやって判断する?」


「それは眠りに着く前の記憶を確認して・・・あっ・・・それはコピーされたものかどうかなんてわかりません」


「判断できるとしたらハードが入れ替わってるかどうかぐらいだ。だがお嬢様の場合はまさにそのハードが入れ替わってるわけだしな」


「だとしたら、どうすれいいのでしょう?」


「判定する方法が無いのなら、可能性の高い状況を作ればいい」


「どういう事でしょう?」


「お嬢様が、あの執事の事を好きだったのなら、今のクロエにそれを成就させてやればいいのさ」


「えっ!クロエとバスティアンを恋人同士にするのですか?」


「そうだ、クロエが生前のお嬢様とと同じ強い感情を持てば、生前の自我がそのまま新しいボディで目覚めるんじゃねえのか?」


「それは・・・そんな事が有り得るのでしょうか?」


「他に方法がねえなら試してみる価値はあるんじゃねえのか?




 ・・・全く根拠はありませんが、ヴァーミリオンの主張は、わたしにはなんだか真実の様に思えてきたのです。


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