59話 9人目の仲間
ヴァーミリオンがわたし達の公国の一級アンドロイドの9人目の仲間に加わりました。
「それにしても、全員が賛同してくれるなんて思いませんでした」
わたしはみんなを見回しました。
「わたくしだって鬼ではありません。ジュリエッタの言う通り、今のヴァーミリオンがこの世から存在を消さなければならない程の害悪では無いと判断しました」
レイチェルは表情を崩さずにそう言いました。
「でもこれからはしっかりと規律は守ってもらいます」
「まっ、程々に善処するぜ」
「ヴァーミリオンは訓練の相手に丁度いいし、男手は有るに越した事はないですから」
バレッタは視線を逸らしたままでしたが、一度ヴァーミリオンの方を見たあと一瞬だけチラッとバスティアンの方を見ました。
そんなバレッタの様子を見ていたキャサリンが、クスクス笑っていました。
「あたくしもセフレがいなくならなくて良かったですわ。これでバスティアンのお世話にならずに済みそうですね」
「ボスはお前の相手などしない!お前にはそいつで十分だ」
バレッタはキャサリンにそう言うと、ふいっと横を向きました。
「うちも面白い研究対象が残ってよかったです。これからもじっくり調べさせてもらいますからね!」
パトリシアが怪しげな目つきでヴァーミリオンを見ています。
「お手柔らかに頼むぜ。まあ、ベッドの上ならいくらでも徹底的に調べていいぜ」
「あはは、ベッドの上にはあなただけで寝てもらいますけどね」
「あたしはこうなるってわかってたよ!」
「どうしてですか?」
自信満々でそう言ったエミリーに、わたしは尋ねました。
「だってジュリが絶対にあきらめないでみんなを説得するでしょ?」
「それは!・・・確かにそのつもりでしたが・・・」
なぜかわたしの行動がエミリーに読まれていました。
「ははっ!愛されてるからな、俺は!」
「・・・違います」
「とにかく、あたしは新し仲間を歓迎するよ!」
エミリーはすっかりヴァーミリオンとは打ち解けている様です。
そんなみんなの様子をクロエは無表情に眺めています。
・・・クロエはどうしてヴァーミリオンをそのままにする事に決めたのでしょうか?
でも、お嬢様なら、きっとそうしたと思います。
「バスティアンは反対では無かったのですか?」
わたしはバスティアンに尋ねました。
「ヴァーミリオンを初期化したらお前が悲しむだろう?」
「えっ?それが理由ですか?」
「それ以外にどちらかを選ぶ理由が無かっただけだ」
バスティアンはそう言って、少しだけ優しい表情になってわたしを見ました。
「いいのかい?ライバルである俺を排除した方が良かったんじゃないのか?」
ヴァーミリオンがバスティアンを挑発しています。
「ライバル?・・・何のだ?」
「ははっ、これは俺に分がありそうだな。お前がすっとぼけてる間にジュリエッタは頂いちまうぜ?」
「それを決めるのはジュリエッタ自身だ」
それって・・・わたしがバスティアンを選んだらバスティアンもOKしてくれるという事でしょうか?
つい余計な事を考えてしましました。
「それより、これでお前もこの公国の国民だ。これからどうするか考えろ」
「そうだな・・・とりあえず、ジュリエッタと幸せな家庭でも築くか?」
「・・・そういう冗談はやめてください」
わたしは擦り寄って来ようとしたヴァーミリオンから離れました。
「ヴァーミリオンのこれからの事は追って決めていきます。今日はこれにて解散とします」
レイチェルの宣言で皆が部屋から出ていく中、わたしはレイチェルに呼び止められました。
「ヴァーミリオンの部屋はとりあえず空いている客間を使わせます。ジュリエッタが案内してください」
ヴァーミリオンが使用する部屋を指示されました。
「わかりました。それではヴァーミリオンはわたしについて来て下さい」
わたしはヴァーミリオンをレイチェルに指示された部屋に連れて行きました。
「ここがあなたの部屋になります。それではとりあえず、この服に着替えてください」
わたしはクローゼットから取り出した服をヴァーミリオンに渡しました。
「なんだ?この服は?」
「執事の服です」
「なんで俺がこんな服に着替えなきゃいけねえんだ?これじゃあいつとお揃いじゃねえか!」
「だって、ここにいるアンドロイドはみんなメイド服か執事の服装ですよ?わたし達の仲間になったんですから服装も揃えて下さい」
「そこは自由じゃねえのかよ?」
「自由時間は私服でも大丈夫ですけど、勤務中は制服が義務付けられています」
「・・・まあいいや、着替えればいいんだろ?」
ヴァーミリオンはいきなり服を脱ぎ始めました。
「ちょっと待って下さい!わたしの目の前で着替えないで下さい!」
「なんだよ?いいだろ別に」
ヴァーミリオンはあっという間に下着一枚の姿になり、今度は下着にまで手をかけて脱ごうとしています。
「なんで下着まで脱ぐんですか!」
「いや、折角だから下着も着替えようと思ってな。ついでにお前に俺の肉体美を披露してやろう」
「わたしは部屋の外で待ってますから着替えたら声をかけて下さい!」
わたしは慌てて後ろを向いて部屋の外に出ました。
・・・目を逸らす直前にヴァーミリオンは下着を下ろし始めていたので、危うく股間にある男性の部分が見えてしまうところでした!
間一髪でそれを見ずに部屋を出る事が出来ましたが、部屋の中からヴァーミリオンの笑い声が聞こえてきます。
きっと今のはわたしをからかって遊んでいたに違いありません!
無駄に一人でドキドキしていたわたしが馬鹿みたいです。
「お待たせ」
それほど時間がかからずにヴァーミリオンは部屋から出てきました。
「早かったですね?さっきはひどいです!」
振り返ったわたしの目の前には・・・
黒いスーツが予想以上に良く似合う、クールな姿のヴァーミリオンが立っていたのでした。




