58話 審判の結果
ヴァーミリオンの審議について、わたしの出す結論は既に決まっています。
後は、他のみんなに同意を得られるかどうか、それにかかっています。
「ヴァーミリオンは最初、隣国に雇われた傭兵としてこの公国に攻撃を仕掛けました。当時は初めての戦闘に遭遇したわたしも、彼を大変な脅威に感じました。しかしその後、隣国で再会した彼は雇い主がいなくなった事により、公国への攻撃の理由が無くなっていました。それからの彼はわたし達やこの国に対して敵対する行動は起こしていません」
わたしはヴァーミリオンの方を見ました。
ヴァーミリオンは、ニコッとしてわたしに小さく手を振っています。
とりあえずそれは無視して話を続けました。
「わたしは、今のヴァーミリオンには自我があると思っています。」
これについては確証を得る方法はありませんが、わたしがそう信じていると伝える他ありません。
「少し不真面目なところがありますが、悪い人では無いと思います。自我を持ったアンドロイドを初期化するというのは人間に置き換えれば死刑を宣告するのと同じだと思います。今のヴァーミリオンにそこまでの重い処罰を与えなければならないとは、わたしには思えないのです」
「ジュリエッタ、お前俺の事をそこまで思ってくれていたんだな?俺も愛してるぜ!」
ヴァーミリオンがわたしの方に両手を広げてそう言いました。
「・・・そういう事ではありません」
本気か冗談かわかりませんが、ヴァーミリオンは芝居がかった大げさなリアクションをしてきます。
今余計な事を言うと、みんなの心証が悪くなってしまいますので、少し控えて欲しいのですが・・・
「ヴァーミリオン、あなたは口を慎む様に」
レイチェルがヴァーミリオンに忠告しました。
「ジュリエッタ、あなたの意見はわかりました。他に言いたい事はありませんか?」
「はい、以上です」
今のでみんなに伝わったかわかりませんが、言いたい事は言えたと思います。
「では最後にバスティアン、意見を述べてください」
レイチェルはバスティアンに発言を促しました。
「俺はどちらでも構わない。皆の意見に従う」
「特にこの場で言いたい事は無いですか?」
「ああ、無いな」
バスティアンはどういう答えを出すのでしょう?
これまでの様子ではヴァーミリオンにあまり良い印象は抱いていない様に思えます。
「わかりました。これで全員の意見を聞きました。それでは最後にヴァーミリオン、この場で言っておきたい事はありますか?」
「そうだな・・・ここの女はみんな最高にいい女ばかりだから、無事に生き残れたあかつきには、全員を抱いてみてえな」
ヴァーミリオンの発言に、その場にいた全員が嫌そうな表情をしました。
・・・どうして、そんな余計な事ばかり言うのでしょう?
でも、そういうところがヴァーミリオンらしいと言えるのかもしれませんが・・・
「他に言い残す事はありませんか?」
レイチェルの言い方だと、まるでヴァーミリオンの今生の別れが決まっているみたいです。
「ああ、無いね。まあ、なるようになればいいさ」
「わかりました。それでは採決に移ります」
レイチェルが皆の方に向き直りました。
ついにこれでヴァーミリオンの運命が決まってしまうのです。
「それでは、ヴァーミリオンのAIの初期化に賛成の方、挙手を願います」
・・・一体、何人が手を上げるのでしょう?
わたしは恐る恐るみんなを見回しました。
すると、誰一人手を上げていませんでした。
「いないようですね?それでは現状維持に賛成の方、挙手を願います」
わたしはすぐに右手を上げました。
そしてみんなを見回すと・・・
その場にいる全員が手を上げていたのです!
「満場一致の様ですね。それではヴァーミリオンのAIは、現状維持という事に決定しました」
自らも手を上げながらレイチェルが結果を述べました。
まさかとは思いましたが、全員がヴァーミリオンの存続を認めてくれたのです。
「ヴァーミリオン、あなたの処遇が決まりました。現状維持のまま、この国の滞在を認めます」
レイチェルがヴァーミリオンの方を向いてそう告げました。
「おお、そりゃありがてえ!助かったぜ」
ヴァーミリオンは仰々しく両手を広げて喜んでいました。
「良かったですね、ヴァーミリオン」
わたしは、ヴァーミリオンが助かってホッとしました。
「ああ、ありがとよ。ジュリエッタのおかげだ。つまり、お前も他のみんなも俺に抱かれたいって事でいいんだよな?おっと、ただし男は抱く気はねえからな」
・・・また余計な事を言っています。
「その様な事を言っていると、先ほどの判決を取り消しますよ?」
そして、即座にレイチェルに注意喚起されていました。
「はは、冗談だよ。俺が抱きたいのはジュリエッタだけだぜ」
そう言ってわたしの方にウィンクしました。
「・・・やっぱり初期化してください」
「おい、待てよ、冗談だって!って、お前ものりが良くなったな?」
ヴァーミリオンが慌ててわたしに弁明しました。
「あら、ヴァーミリオンあたくしの事はもう抱いてくれないのかしら?」
キャサリンがしなを作ってヴァーミリオンに問いかけます。
「もちろん今まで通り愛してやるぜ!なあ、それくらいならいいだろ?ジュリエッタ?」
「なんでわたしに許可を求めるのですか?」
「あはは!二人すっかり仲良しだね!」
エミリーが、そんなわたし達のやり取りを見て大笑いしています。
他のみんなは、その様子をあきれ顔で見ていました。




