表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/73

57話 AIの裁判

「それでは一級アンドロイド『バーミリオン』の処遇について審議を行いたいと思います。進行はわたくし、レイチェルが務めさせていただきます」


 ついにヴァーミリオンのAIを初期化するかどうかの審議が始まってしまいました。


 部屋にはヴァーミリオンを囲むように、8人の一級アンドロイドが座っています。


 わたしは隣に座っているクロエをつい見てしまいます。


 ・・・クロエの中にはお嬢様の記憶や脳内のニューロンのデータがすべて入っているのです。

 しかし、クロエの人工脳は、今のままでは人格の無いただのAIでしかないのです。


 クロエの人工脳に自我を目覚めさせる事が出来れば、クロエはお嬢様の記憶と人格を持って目覚めるのかもしれません。

 でもそれは、亡くなってしまったお嬢様本人では無いのです。


 そういえば・・・自我に目覚めていないクロエはヴァーミリオンの事をどう判断するのでしょう?


 


「それでは、一人ずつ見解を聞かせてください。まずはわたくしの見解です」


 レイチェルはヴァーミリオンの方に向き直りました。


「一日行動を共にしましたが、この王国に対する敵対心らしきものは特に見受けられませんでした。ただ、素行の悪さは容認できません。公の場での下品な発言やセクシャルハラスメント的な発言の数々は、この国の品位を低下させます。このまま国内での行動の自由を認める訳にはいかないと考えます」


「いや、あれは女性に対する日常的なトークだぜ?俺のいた国の人間の男達は、あれくらいが普通だったぜ」


「この国にはこの国のマナーがあります・・・まあいいでしょう」


 レイチェルは軽くため息をつきました。


 レイチェルはやはり、ヴァーミリオンの人格の存続には否定的かもしれません。


「では次にパトリシア、お願いします」


「そうですね、うちは研究対象としてヴァーミリオンのAIの進化は大変興味深いのでこのままリセットするには惜しいかなって思います。まあ、バックアップを取ってからリセットすればそれでもいいんですけど」


「そういう事ではなくて、彼の人格的にこのままこのボディで王国内を自由に行動させて良いかという事です」


「うちの研究には割と協力的だから、うちはこのままでもいいかなって思います。まあ、それ以外のところでどういうリスクがあるのかは、わからないですけど」


 パトリシアは比較的ヴァーミリオンの人格に抵抗は無いみたいです。


「では次に、バレッタ。お願いします」


「戦闘能力の高さは認めます。戦闘訓練の相手としては申し分ない。ただそれだけなら戦闘データだけを残して人格は初期化しても問題は無いかと。以前この国に攻撃を仕掛けた経緯もありますので、あえてリスクを残す理由が有るのか疑問です」


 バレッタはやはり、ヴァーミリオンにあまり良い印象は持っていないようです。


「次はキャサリンの意見を聞かせてください」


「あたくしですか?彼はベッドの上ではとても紳士的で、それでいて時に激しくあたくしを愛してくれますのよ?折角のセフレがいなくなるのは困りますので彼にはこのままでいて欲しいですわ。でも、もし彼がいなくなってしまったら・・・今度はバスティアンに相手をしていただかなくてはいけませんわね?」


 キャサリンがバスティアンの方をチラッと横目で見ました。


 え?・・・キャサリンとバスティアン関係を持つというのですか?


 それを聞いたわたしは、胸の奥が少しだけもやっとした感じになりました。


「それは認めません!」


 バレッタが突然キャサリンに向かって声を上げました。


「バレッタ、今はその話は関係ありません。黙って他の人の話を聞きなさい」


 バレッタがレイチェルに窘められました。


「申し訳ありません」


 バレッタ自身も咄嗟に声を荒げてしまった事に気まずさを感じていた様で、素直に大人しくなりました。


「キャサリンの意見は以上ですか?」


「はい、それだけです」


 キャサリンは何事も無かったかの様にたおやかにほほ笑んでいます。


「では次にエミリー、お願いします」


「はい!あたしはヴァーミリオンとはすっかり友達ですので、今のままでいいです。特にあたしたちに対して危害を加える事も無さそうですし、時々エッチなお誘いはしてくるけど、拒んだら無理強いはしてこないし、ここのままでも問題無いと思います」


 エミリーの意見はしっかり決まっている様です。


 ・・・でもやっぱりエミリーにもエッチな話を持ち掛けていた様です。


「次にクロエ、何か意見はありますか?」


 クロエはヴァーミリオンの方をしばらくじっとみていましたが、やがてレイチェルの方を向くと、ゆっくりと首を横に振りました。


「特に意見は無い様ですが、決議の時はどちらにするか決めてください」


 クロエは、はっきりとした自我には目覚めていないため、AIの判断で行動しているはずです。

 今回のヴァーミリオンの進退を決める決議に参加させる意味があるのでしょうか?


「あの・・・自我の無いクロエに判断をゆだねる意味があるのでしょうか?」


 わたしはレイチェルに質問しました。


「クロエのAIは、お嬢様の経験を元に判断を行う事ができます。クロエに自我が無くてもお嬢様だったら導き出すであろう結果をもたらすでしょう」


 確かにそうです。

 知識としてお嬢様の経験を持っているのであれば、クロエのAIはそれに基づいて判断するでしょう。


 ・・・それならきっと悪い結果にはならないはずです。




「では、次にジュリエッタ、意見を述べてください」




 そして・・・ついに私の番が回ってきました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ