56話 AIの夢
わたしとヴァーミリオンと共に下着姿で同じベッドに寝てたのです。
・・・以前にバスティアンとも同じシチュエーションになった事がありました。
あの時はエミリーとキャサリンのいたずらで、もちろんバスティアンがわたしに何かする事は無かったのですが・・・
「わたしが眠っている間に・・・何をしたのですか?」
わたしは急いでかけ布団を手繰り寄せて体を隠しました。
「いや、何もしていないぞ」
「ではどうしてわたしはこの様な姿なのですか?」
「少しうなされて寝苦しそうだったからな。それにメイド服が皴になりそうだから脱がしただけだ」
ヴァーミリオンが指差した方を見ると、わたしのメイド服が畳んで置いてありました。
「それでは何故あなたまで裸なのです。それに何故ここで寝ているのですか?」
「俺はいつも寝る時はこの格好だ。この部屋で寝ていたのは、あんたが起きてくれねえと一人でこの部屋から出る訳に行かねえからだ」
「それでは・・・わたしには、何もしていないのですか?」
「そりゃ、抱いていいなら抱きたかったが、昨晩は何もしてねえぞ。あんたが嫌がる事はしないって約束しただろ?気になるならセンサーの履歴を確認すればいい」
わたしは、全身の接触センサーの履歴を確認しました。
メイド服を脱がせた際に最小限触れた以外は、たいして接触した形跡はありませんでした。
・・・特に下腹部は念入りに各センサーの履歴をチェックしましたが、そういった行為をされた形跡はありませんでした。
何もされていなかった事にホッとしましたが、同時に彼を少しでも疑ってしまった事に罪悪感を感じてしまいました。
「納得したか?」
「はい、変な事をされた形跡がない事はわかりました・・・疑って申し訳ありません」
「疑いが晴れて何よりだ」
「あの、一つお願いしていいですか?」
「なんだ、何でも聞いてやるぞ」
「着替えたいので・・・後ろを向いてもらえますか?」
「・・・ああ、そうだな。わかった」
ヴァーミリオンはそう言って後ろを向きました。
わたしはその間にメイド服を身に付けます。
「あの・・・寝ている間にわたしは何か呟いていませんでしたか?」
わたしはメイド服を着ながらヴァーミリオンに尋ねました。
「ああ、そうだな・・・あの執事の名前を呟いていたかな?」
「・・・嘘です・・・それ」
今日の夢にバスティアンは出てきていませんでした。
「ははは、冗談だ・・・『お嬢様』って何度も言ってたぞ」
「・・・やはりそうですか?」
「おまえ・・・夢を見るのか?」
「はい、昨晩はお嬢様の夢を見ていました・・・いえ、殆ど毎晩お嬢様の夢を見ています」
「そうか、それはどんな夢だ?」
「そうですね、最近の夢ではお嬢様がその日の出来事についてわたしに問いかけるのです。夢の中のお嬢様は、わたしの経験した事や考えたことを全て知っているみたいなので」
「それは・・・本当に夢なのか?」
「どうなのでしょう?・・・わたしは夢というものがどういうものなのか正しく理解している訳ではありません」
「まあそうだな・・・俺にもわからねえが・・・」
ヴァーミリオンは顎に手を当てて少し考え込んでいました。
「お待たせしました。もうこちらを向いても大丈夫です」
ヴァーミリオンは着替え終わったわたしの方に振り向きました。
「お前はやっぱりその姿がにあってるな。俺も最近お前の夢をよく見るぜ」
「わたしの・・・ですか?」
「ああ、夢の中のお前はいつもその姿だったな」
「夢の中でわたしは何をしてるのですか?」
「ああ、いつも掃除をしているな?俺としては折角ならお前を抱いている夢を見たかったんだがな」
「・・・そんな夢を勝手に見ないでください」
「冗談だ。俺はその姿で掃除をしているお前が結構好きだぜ」
ヴァーミリオンが穏やかな笑顔でそう言ったので、わたしは少しだけ恥ずかしくなりました。
その時、こんこん、とドアをノックする音がしました。
「はい、どなたですか」
わたしがドアのところに行ってドアを開けると、そこにはバスティアンが立っていたのです。
「ここにいたのか?」
わたしの顔を見たバスティアンは少し安心した様な表情をしました。
「おはようございます。バスティアン」
バスティアンはベッドにいるヴァーミリオンの方に目線を移しました。
「これはどういう事だ?」
バスティアンはヴァーミリオンに向かって問いかけました。
「どうもこうもねえよ。二人で一夜を過ごしただけだぜ?」
「なんだと」
バスティアンの顔は、少し怒っている様に見えました。
「ち、違います。お嬢様の事を相談していたのですが、疲れていつの間にか寝てしまっただけです」
ヴァーミリオンはどうして誤解を生むような言い方をしたのでしょう?
わざわざ挑発するような事を言わなくても良いのではないかと思います。
「とにかくお前は俺と来い」
「ああ、今行くぜ」
ヴァーミリオンは脱ぎ捨ててあった服を着ながらバスティアンの方に歩いて行きました。
「今日はこいつの審判の日だお前も後で来い」
バスティアンはわたしにそう言うと、ヴァーミリオンを連れて去っていきました。
・・・バスティアンとヴァーミリオンはなんだか険悪な雰囲気に見えました。
今の感じだとバスティアンはヴァーミリオンの存続に反対するかもしれません。
わたしはいつもの習慣でお嬢様の部屋の掃除をしながら、そんな不安を抱えていたのでした。




