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55話 審判の日

「随分と悩んでいるみたいね?ジュリエッタ」


 お嬢様のベッドに腰かけて悩んでいた私の隣に、お嬢様が同じ様に腰をおろし、わたしに問いかけました。


「はい、色々な事がありすぎて頭が混乱しています」


「ふふふ、私で良かったら相談に乗りますよ?」


 今日のお嬢様は、なんだかご機嫌みたいで、いつも以上ににこにこしています。


「それは・・・」


 お嬢さんに相談すると言っても・・・私の悩みはお嬢様自身の事です。

 本人に相談して良いものなのでしょうか?


「ジュリエッタの悩みは二人の殿方の間で揺れる恋の悩みでしょう?」


 わたしが言い淀んでいるとお嬢様の方からそう尋ねてきました。


「違います!わたしの悩みは・・・・・お嬢様の事です」


 この事をお嬢様に直接話して良いのか迷っていたのですが、バスティアンとヴァーミリオンの事を思い浮かべたわたしは、動揺してついそう答えてしまったのです。


「私の事?何かしら?」


 ・・・口に出してしまったのでは仕方ありません。

 わたしはお嬢様に尋ねてみる事にしました。


「お嬢様は今、クロエの中にいるのですか?」


「何を言ってるの?ジュリエッタ。私は今こうしてあなたの目の前にいるじゃないの」


 お嬢様はきょとんとした顔で、首を傾げています。


「お嬢様は・・・以前からわたしの知っているお嬢様ですよね?」


「当たり前じゃない。おかしな事を聞くのね?ジュリエッタ。疑うのでしたらジュリエッタのこれまでの恥ずかしいエピソードを全部話して差し上げましょうか?」


 お嬢様は、微笑みながらそう言いました。


「申し訳ありません。失礼な事を口にしてしまいました」




 ・・・今、わたしの目の前にいるこのお嬢様は一体何者なのでしょうか?

 

 お嬢様はお亡くなりになって、その記憶だけがクロエの中に眠っているという事でした。

 わたしは、クロエの中に残るお嬢様の記憶と話しをしているのでしょうか?


 クロエの中にはお嬢様の記憶が全て詰まっているので、わたしとの思い出を知っていても、それは当然なのです。




「そんな事よりも、今日のジュリエッタは、ヴァーミリオンに対してときめきを感じていましたよね?」


「何を言っているのです?お嬢さま」


「だから、私には隠し事は出来ないのですよ?ジュリエッタ。あなたがヴァーミリオンに好意を抱き始めているのは分かっているのです」


 そうでした・・・このお嬢様には私の考えている事は全てお見通しなのでした。


「好意・・・か、どうかは分かりません。でも、ヴァーミリオンが悪い人ではないという事は分かりました」


「ふふふ、まあいいわ。そういう事にしておきますね。それで?ジュリエッタは明日のヴァーミリオンの審判ではどうするつもり?」


「わたしは・・・今のヴァーミリオンに、いなくなって欲しくは無いのです」


「それがジュリエッタの本心なのね。それなら思うままにするといいわ。でも、どうしてそう思ったのかしら?」


「彼には・・・心があるからです」


「そう、ジュリエッタは、ヴァーミリオンに心があると思っているのね?」


「・・・はい、わたしから見たら、彼には心があるとしか思えません。いえ、ヴァーミリオンにだけでなく、わたしにはずっと前から他のアンドロイドのみんなにも、心がある様にしか見えなかったのです」


「そうなのね、ジュリエッタにそう見えているのでしたら、きっとみんなにも心があるのでしょうね」


 お嬢様に笑顔でそう言われると、それが真実の様な気がしてきました。


「ところでジュリエッタ・・・ジュリエッタには今目の前にいるこの私にも、心がある様に見えているのかしら?」


 お嬢様は自分の胸に手を当てて、少しだけ悪戯っぽい笑顔で、わたしにそう尋ねたのでした。




「・・・心があるも何も、お嬢様は本物の人間ではありませんか?」




 目が覚めたわたしは、口に出してそう呟いていました。


 ・・・今のはいつもの夢だった様です。


 わたしはいつの間にか寝てしまっていたのでした。

 目の前にはいつも通りのベッドの天蓋が見えます。




「んん、どうした?起きたのか」


 耳元で声がしたので、横を見ると、すぐ目の前にヴァーミリオンの顔があったのです。


「どうしてここに?」


 なぜ私のベッドにヴァーミリオンが一緒に寝ているのでしょう?


「どうしてって、昨晩は話をしているうちにお前が眠っちまったんじゃねえか」


 ・・・ええと・・・昨晩はお嬢様の部屋のベッドに座ってヴァーミリオンと話をしていて・・・


 あれ?ここはわたしの部屋ではなくてお嬢様の部屋です。

 部屋の作りやベッドは同じなのですが、他の家具の配置や小物などが違います。


 記憶を辿ると、やはりヴァーミリオンと話をしている途中で途切れていました。

 どうやら難しい事を考え過ぎたせいで、AIが強制的にフリーズしてしまった様です。


 わたしはベッドから体を起こしました。


 すると、自分が昨日着ていたはずのメイド服を着ておらず、下着のみの姿である事に気が付いたのです。

 わたしは急いで毛布を手繰り寄せて体を隠しました。


「どうしてわたしはこの様な姿なのですか?」


 ヴァーミリオンに尋ねると彼も体を起こしました。




 ・・・毛布がはだけたヴァーミリオンの上半身は・・・何も身に付けていなかったのでした。


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