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49話 規律と感情

 執務室の前に到着したわたしとヴァーミリオンは扉をノックしました。


「どうぞ」


 中から声がしたので、扉を開けて執務室に入ります。


「失礼します」


 執務室の机ではレイチェルが複数のモニタを見ながら仕事をしていました。


「二人揃ってどうしたのですか?」


「デートではないです」


 毎回同じ事を聞かれるので今回は先手を打ちました。


「誰もそんな事は思っていません」


 ・・・気の回しすぎでした・・・レイチェルはそういう事を言うタイプではありませんでした。


「それよりもジュリエッタ、彼と一緒にいてハラスメントは受けていませんか?」


「それは・・・」


 そういえば色々された様な気がしますが、今ここでそんな事を報告してはヴァーミリオンが不利になってしまいます。


「特にハラスメント行為は受けていません」


「そうですか・・・まあ、あなた本人が不快に感じていなければハラスメントにはなりませんからね」


 ・・・レイチェルにはわたしがバーミリオンにされた事は筒抜けになっている様な気がします。


「レイチェルは彼の事を認める事は出来ませんか?」


「それは、わたくしの意見を聞いて判断材料にするという事ですか?今それを返答する事は出来ません。ジュリエッタはジュリエッタで自分で考えて決めてください」


「ははは、このねえちゃんにはこっぴどく叱られちまったからな。俺にいい印象は持ってねえだろう?」


「・・・・・」


 レイチェルはわたし達に視線も合わせずに淡々と仕事をこなしています。




「レイチェルはヴァーミリオンにキスされた時に不快に感じたのですか?」


 わたしは、つい気になった事を尋ねてみました。


「わたくしにその様な感情はありません。人間の女性に同じ行為を行った場合を想定して指導したまでです」


「ああ、確かにこのねえちゃんは表情も変えずに俺を張り倒したぜ」


 ・・・やはりレイチェルには心や感情といった物は無縁なのかもしれません。


 これ以上レイチェルと話をしてみても得るものは無さそうです。




「なあ・・・あんたは、あの執事にキスされても同じ様に張り倒すのか?」




 ヴァーミリオンのさりげない問いかけに、一瞬、レイチェルの動きが止まりました。




「・・・あの方は・・・そんな事いたしません」


 しかし、すぐに仕事を再開しながらそう答えたのでした。




「なあ、あんたはさっきのねえちゃんの事はどう見る?」


 執務室を離れたところでヴァーミリオンがわたしに話しかけました。


「・・・レイチェルは普通のAIのアンドロイドだと思います」


「そうか?執事の兄ちゃんの話をしたら動揺してなかったか?」


「それは・・・一瞬動きが止まっただけではないですか?」


「そうか?・・・それじゃあ、お前だったらあの執事にキスされたらどうすんだ?」


「なっ!何言ってるんですか!バスティアンがそんな事する訳ないじゃないですか!・・・いえ、何度もされていますけど、それはリミッターの解除をするためであって、他の意味はありません!」


「はははっ!やっぱりあんたはわかりやすいな。今、あいつに本当のキスをされたらって、想像しただろ?」


「してません!」




 ・・・いえ、実は想像してしまっていたのです。




「くっくっくっ・・・まあいいや、それが心を持ったアンドロイドの正しい反応だよな?」


 ヴァーミリオンは笑いをこらえながらそう言いました。


「何が言いたいんですか?」


「あのねえちゃんも、一瞬だが間違いなく反応してたぜ?」


「そうなんですか?」


「ああ、すぐに平静を装っていたが、あんたみたいにその情景を想像してたのかも知れねえな」


「レイチェルがそんな事・・・信じられませんが?プログラムによる演技なのでは?」


「そんな一瞬だけの演技をする意味がねえだろ?まあ、次はもうボロを出さねえだろうけどな」




  どうなのでしょう?実はレイチェルにも心が芽生えていたりするのでしょうか?


 ・・・そして・・・バスティアンを意識してるなんて事があるのでしょうか?




「で、次はどうする?」


「そうですね・・・」


 皆の話を聞きに行きがてら、秘密の研究施設らしき場所を探してはいるのですが、その様なものは全然見当たりません。

 秘密の施設なのですからそう簡単に見つかるわけはないのでしょうが・・・


「とりあえず他のみんなの話を聞きに行く事にします」


「残りは三人だったか?」


「はい、 残りはエミリーとクロエとバスティアンの三人ですが・・・エミリーはこれ以上何も隠し事は無い気がしますし、クロエとは会話が成り立たちません。そしてバスティアンは重要な機密事項は絶対に話さない気がします」


「そんなもん、あんたがあいつにキスをしてメモリー内に侵入しちまえばいいんじゃねえの?あんたなら出来るだろ?」


「何を言ってるんですか!そんな事出来ません!それにいきなり理由もなしにキスをするのは不自然です」


「そんなの、あいつに好きだって告白してキスすればいいだろ?」


「そんな単純な話ではありません!」


 告白したからってすぐにキスをするのは不自然です。そもそもバスティアンに告白なんて・・・


「だが、あんたも事の真相を知りたいんだろ?何か知ってるとしたらあいつが知っている可能性が一番高いぜ」


「それは確かにそうですが・・・それでしたら、まずはバスティアンに会って直接聞いてみた方が・・・」




「俺がどうかしたのか?」




 突然背後から声をかけられてびっくりしました。



 振り向くと・・・そこにはバスティアンが立っていたのです。


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