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46話 アンドロイドの性欲

「自分の負けだ・・・しかしお前には羞恥心というものが無いのか?」


 わたしに負けたバレッタは、一瞬だけすごく悔しそうな顔をしたあと、そう言いました。


「あります!だから一回で終わらせたんです!」


「あはは!いいもん拝ませてもらったぜ」


 ヴァーミリオンは大笑いしています。


「お前はお前で、なんでアンドロイドなのにそんなにスケベなんだ?」


「それを逆手にとってこいつを追い詰めようとしたあんたには言われたくねえな」


「使えるものは何でも利用する。そうでなければ戦場では生き残れない」


「そりゃそうだ!つまりお前は俺のスケベ心とこいつの羞恥心をうまく利用しようとしたって訳だ?」


「そうだ・・・どちらも本来アンドロイドには無いはずのものだがな」


「無いって知ってて、あえてそれを利用したって事は、バレッタはアンドロイドにそういう感情があるって認めているという事ですか?」


 わたしは疑問に思った事を聞いてみました。


「お前とそいつは特別だ。本来アンドロイドにないはずの物をもっている。・・・そういう事だろ?」


「えっ、そういう事では・・・」


「あっはは!そうそう、こいつと俺はスケベなアンドロイドなんだよ」


「一緒にしないでください!」


「本当に息がぴったりだな」


「そんな事ありません」


「そうか?結構お似合いだと思うぞ」


 どうしてみんなわたしを誰かとくっつけたがるのでしょう?

 アンドロイド同士で付き合ったり結婚したという話は聞いたことがありません。

 



 結局その後もバレッタからは有益な情報は得られませんでした。




「やはりバレッタは任務を忠実に遂行する事しか考えていないみたいでしたね」


「そうか?それ以外にもいろいろ考えていたみたいだぜ?」


「バレッタがですか?」


「ああ、あいつは別に任務と格闘の事だけしか考えていない訳じゃ無さそうだったな」


「他に何を考えていたんですか?」


「さあな」


 ヴァーミリオンにも、なんとなくはぐらかされてしまいました。




 ・・・確かにわたしとヴァーミリオンを執拗にくっつけたがっていましたが・・・




 バレッタと別れた後、わたしとヴァーミリオンは城内の調査を再開しました。


 わたしは不本意ながら、リミッターを再設定してもらうためにもう一度ヴァーミリオンとキスをする羽目になってしまいました。


 ・・・バスティアンにお願いするという方法もあったのですが・・・なんとなく言い出し辛くて、もう一度ヴァーミリオンにお願いする事にしたのです。

 

 出来るだけ手短にとお願いしたのに、ヴァーミリオンはわたしのリミッターを掛けた後、わたしを抱きしめたままなかなか離してくれませんでした。




「もう!どうしていつまでも抱きしめていたんですか!」


「あんたは抱き心地がいいからな。離すのが惜しかったんだ」


「無力化した後に力づくなんて卑怯です」


 リミッターのかかったアンドロイドは、同じ体格の生身の人間相当の出力になります。

 大柄な男性型のヴァーミリオンは、小柄な女性型のわたしより出力が大きくなるのです。





「それで?次は誰の所に行くんだ?」


「キャサリンに話を聞こうと思います」




キャサリンは中庭で優雅にお茶をしていました。




「あら?お二人そろって。デート中?」


「違います!」


 どうしてみんなで同じ事を言うのでしょうか?


「ふふっ、なんだかいい雰囲気に見えてしまって・・・ごめんなさいね」


 ・・・キャサリンにはわたし達が一体どう見えているというのでしょう?




「キャサリンの意見を聞きたくて来ました。キャサリンから見てヴァーミリオンの事はどう思いますか?」


「あら?どうしたのかしら?」


「自分で判断する前に皆さんの意見も聞いておきたいと思いまして」


「そうねえ?・・・ベッドの上では意外と紳士だったわよ?」


「そういう話ではなくて!」


「でも、あたくしは殆どベッドの上でしたから」


「ああ、あんたも最高だったぜ」


「ふふふっ、普段の荒っぽい言動とベッドの上での優しい巧みなテクニックのアンバランスさがとっても良かったわ。ジュリエッタも今度試してみるといいわ」


「試しません!」


 なんだか最近わたしは突っ込み役ばかりになっている気がします。


「でもねえ、ベッドの上では結構その人の本性が出るものなのよ?」


「くくくっ、それも含めてプログラムされた演技かもしれねけどな」


「ふふふっ、この場ではそういう事にしておきましょうか?」


 なんだかこの二人、すっかり意思の疎通が出来ている気がします。


 ・・・そして二人でわたしをからかって楽しんでい様にも見えます。



「キャサリンは・・・彼とそういう行為をする事は・・・楽しいのですか?」


「もちろんよ。そうでなければそんなことしないわ」


「それは・・・自分の意志なのですか?」


「そうねえ?・・・半分はプロとしての情報収集が目的なのも事実だけど・・・もう半分は自分の欲求かもしれないわね?」


「どういうことですか?」


「自分でもわからなくなってきているのよね。あたくしにとっては当たり前の事だったのだけれど、今は命令を出していた人間もいなくなってしまったし、仕事としてやっているのか、自分自身の欲求なのか、その境界線が無くなってしまったわね」


「それって・・・キャサリンも『気持ちいい』って感じるって事ですか?」


「『気持ちいい』っていう感情パラメータはあるわね。それはあなたにもあるでしょう?」


「それはありますけど?」


 わたし自身は感情のパラメーターが単なる数値ではなくなっているように感じるのです。

 キャサリンも同じなのかどうか?どうすれば確かめられるのでしょう?




「難しい事考えても答えが出ねえんならお前も試してみればいいんじゃねえのか?」




 考え込んでいるわたしにヴァーミリオンが後ろから抱き着いてきたのでした。


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