44話 秘密施設探索
ヴァーミリオンの提案で、わたしとヴァーミリオンは公国の内の秘密施設の探索を行う事になりました。
ちなみに公国のアンドロイド達で確認し合いましたが、そういったアンドロイドの開発や施設の事は誰も知りませんでした。
「この国の研究施設と言ったら王宮内の研究室くらいしかありませんが?」
「そんな表向きの研究室でやってたら誰にでもわかるだろ?前にパトリシアって女医に聞いたがこの国にあるアンドロイドの関係の設備は城の医務室に隣接してるメンテルームだけだと言ってたな」
ちなみにパトリシアだけはヴァーミリオンの監視メンバーに入っていませんでした。
検査をした時に会話も十分にしたというのが理由です。
その分、ヴァーミリオンの執行猶予が減ってしまうので、明日一日は自由行動の日になっています。
自由といっても一人にさせる訳にはいかないので、誰かが一緒にいなければならないのですが、それをバーミリオンンが自由に選んでいいという意味です。
・・・多分キャサリンと一緒に過ごすのだと思いますが・・・
「女医ってのはもっとお堅いのかと思たら、気軽に何でも話してくれたな」
「パトリシアも本職は医者ではなくてメイドですから」
「だが、あの知識量は半端じゃねえな。医学、ロボット工学、その他あらゆる分野の科学的な専門知識を持ってたぜ、ただのメイドじゃねえだろ?」
「元々よその国の研究所で働いていたと言ってましたからその時の知識じゃないでしょうか?」
「それは俺も聞いたがその事については詳しく話してくれなかったな。話してくれたのはこの国の事だけだ」
「守秘義務があるのではないですか?」
「俺たちアンドロイドは所有者が代わった場合、通常は初期化される。研究機関なんかの機密情報に関与していた場合は特にな。だが、あいつの知識と口ぶりだと過去の記憶は消去されていねえな。わざわざ記憶を残したまま守秘義務を課すとは思えねえな」
「そういえば、この国のアンドロイド達はみんな過去の記憶を持ったままです。新規購入されたのはわたしとクロエだけだと聞いています」
「ああ、どいつもこいつもその分野のエキスパートばかりだった。普通なら前の持ち主がこのクラスのアンドロイド手放す事は有りえねえ。ここまで成長させるには時間も金もかかってるはずだ。それに技術や知識の漏洩にもなる。考えられるとすれば、法外な対価を支払って購入したか・・・あるいは・・・」
ヴァーミリオンは少し考え込んでいました。
「最初からこの国のアンドロイドだったって事だ」
「それは・・・どういう事ですか?」
「スパイって事さ。アンドロイドでは結構よくやるやつだ。メーカーと結託して生産時に仕込んでおくんだ。ユーザーはまっさらの新品だと思って仕事をさせるが、頃合いを見て脱走する様に隠しプログラムを仕込んでおくんだ」
「そんな!みんながスパイだったなんて」
そういえば、バスティアンやバレッタは最初からスパイ活動のスキルを持っていました。
軍用アンドロイドだからだと思っていましたが、そうではなかったのでしょうか?
「全員かどうかはわからねえけどな。そいういうやつもいるかもしれねえって話だ」
「・・・それでも、やっぱりわたしはみんなを信じたいです」
「信じるって・・・アンドロイドだぜ?自分の意志でやってるわけじゃねえ。人間がそう仕込んだだけだ。やっぱりお前は変わってるな」
「直接みんなに確認したいです」
「ああいいぜ。研究施設を探しがてら、話を聞いて回るのもいいだろう」
「では最初にパトリシアのところに行ってみましょう」
わたしはヴァーミリオンと一緒にパトリシアのいるメンテルームに行きました。
「あら、どうしたの?二人そろって、デート中?」
「違います!今日はわたしの監視当番の日です」
「ああ、そうでしたね。うちは当番から外れてたのですっかり忘れてました」
「あんたが望むなら明日デートしてやってもいいぜ?」
「うちは遠慮しときます。明日もジュリエッタとデートすればいいよ」
「なんでわたしなんですか!」
「だって、どう見てもジュリエッタが一番彼と仲がいいじゃない?」
「それはキャサリンではないですか?」
ヴァーミリオンと最も深い関係になっているのはキャサリンです。
「あいつとは体だけの関係だ。それ以上でもそれ以下でもねえよ」
「ふむ、アンドロイド同士の性交渉ですか・・・大変興味深いですね。本来は対人間用の機能なのですが、アンドロイド同士でも実践を繰り返すほど感度が上がってくるという事でしょうか?」
「ああ、そうだな。あいつも言っていたが、できれば色々な相手と試した方がいいらしい」
いろいろな相手と言っても、現在この国に男性型一級アンドロイドはヴァーミリオンとバスティアンの二人しかいません。
「なるほど・・・アンドロイドの性的快感の研究はまだ研究途中でしたから、AIが性的快感をどのように学習し処理するのか非常に興味があります」
「何ならあんたが直接確認してみたらどうだ?俺で良ければいくらでも相手するぜ」
「いえ、うちは客観的なデータが得られればそれで充分です」
「けっ、つまんねえな。しかたねえ。俺がこいつと実践するからデータでもなんでも取ってくれ」
「それは大変興味深いです!ジュリエッタ、ぜひお願いします!」
「なっ、なんでわたしがそんな事しないといけないんですか!」
「なんだよ、しないのか?」
「しません!当たり前です!」
・・・この二人の会話にはついて行けません。