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39話 公国への帰還

「お帰りなさいませ。皆様の無事のご帰還、心よりお喜び申し上げます」


 王国に戻るとレイチェルとバレッタが出迎えてくれました。


「ただいまー!レイチェル!バレッタ!」


 エミリーはいつも通り元気いっぱいに返事をしました。


「留守の間変わりはなかったか?」


「は、その後他国からの襲撃はありませんでした」


 バスティアンの質問に、バレッタは即座に答えました。


「そうか・・・やはりな」


 そうです。山脈を挟んで反対側にある、もう一つの国も、人間が全滅している可能性が高いのです。


「その様子だと何か有益な情報を掴んだみたいですね?」


 レイチェルがそう尋ねました。

 その質問にはわたしが答えました。


「はい・・・隣国もこの国と同様に人間が全員死んでしまった様でした」


「それでは、あの攻撃は隣国が仕掛けてものでは無かったのですか?」


「はい、隣国も同じ攻撃を受けた様でした」


「まさかとは思いましたが・・・やっぱりそうでしたか・・・」


 レイチェルもその可能性は予測していたみたいでした。


「それだけではありません。世界中の人間が死んでしまった可能性があります」


「それはどういう事ですか?なぜそのような事に?」


「わかりません。世界中で同じ時刻を境に、人間がネットワークにアクセスした形跡が一切なくなってしまったのです」


「つまり、あの攻撃が世界中で一斉に行われたという事ですか?」


「その可能性が高いという事までしかわかりません」


「なぜそのような事に?・・・いずれにしても、今後この国に人間がやってくる可能性は極めて低いという事ですね?」


「はい、おそらくないと思います。隣国ではアンドロイドやロボットも指示を出す人間がいなくなって待機状態のままになっていました。前回の様にアンドロイドの部隊が攻めてくる事は無いと思います」




「俺らは、あの瞬間の前に命令を受けていたからな」


 ヴァーミリオンがそこに口を出しました。




「さっきから気になっていましたが、なんでそいつが一緒にいるんでしょうか?」


 バレッタはヴァーミリオンを見つけて睨みを利かせています。


「おいおい、そう睨むなよ。俺はもうあんたらの仲間だぜ?」


「そうなのですか?」


 バレッタはバスティアンの方を見て尋ねました。


「同行は認めたが仲間にした訳ではない」


「つまり捕虜って事ですね」


「まあ、そんなところだ」


 バスティアンは無感情にそう言い捨てました。


「おいおい、何とか言ってくれよ。キャサリン」


「あら、あなたはあたくしの虜だもの。捕虜みたいなものじゃないの?」


「そりゃないぜ、エミリーからも言ってくれよ」


 帰りの旅路の間に、ヴァーミリオンはエミリーとも結構会話する様になっていました。


「えっ?あたしは関係ないもん」


「勘弁してくれよ。ジュリエッタ、何とかしてくれよ」


「・・・・・捕虜です」


「・・・お前もかよ・・・けっ、どいつもこいつも、さっきまであんなに打ち解けてたじゃねえか」


「打ち解けてないです」


「・・・もうどうでもいい!好きにしろ・・・ところで、この国の一級アンドロイドはこれで全員なのか?」


 ヴァーミリオンがわたしに尋ねました。


「あと二人います」


「二人か・・・」


 丁度そこにパトリシアがクロエを連れてやってきました。


「みんな帰って来たって?・・・あ、お帰りなさい。どうでした?」




 わたし達はパトリシア達にも状況を説明しました。




「そうでしたか・・・うちもその可能性は考えていました・・・それで彼を捕虜として連れてきたという事ですか?」


「だから捕虜じゃねえ」


「パトリシア、そいつの検査をしてくれ」


「承知しました。ではこちらへ」


 パトリシアがヴァーミリオンの方に手を差し伸べました。


「仕方ねえな。あんたが直接俺を調べてくれるのか?まあ、それも悪くねえな。あんたみたいなタイプも結構俺の好みだ」


「・・・遠慮させていただきます。検査装置を使って検査しますので、うちが直接触る事はありません」


「なんだよつれねえな・・・」


 ヴァーミリオンはそう言ってパトリシアの方に歩いて行きました。




「・・・へえ?こんなガキの一級アンドロイドもいるのかよ?」


 ヴァーミリオンはクロエとすれ違いざまに、薄笑いを浮かべながらそう呟きました。


 クロエはいつも通り無表情で、ヴァーミリオンを一瞥すると興味無さそうに目線を戻しました。





「さあ、あなたはこっちよ。うちについてきなさい」


「仕方ねえな。お手柔らかに頼むぜ」


 ヴァーミリオンはパトリシアに連れられて去っていきました。




「ボス、あいつの事はこの後どうするつもりでしょうか?」


 二人がいなくなるとバレッタはバスティアンに詰め寄りました。


「奴をこの国に迎え入れるかどうか、全員で審議を行う事になる。奴の検査結果が出たところで、パトリシアが揃ったら審議を行う」


「自分は反対です。かつて敵対した相手ですし、何より傭兵というのは信用できません」


 バレッタが真っ先に反対意見を述べました。


「わたくしも賛成しかねます。さっきの態度を見ても危険な要素を感じます」


 レイチェルも快くは思っていない様です。


「あの・・・否決されたら彼はどうなるのでしょうか?」


 わたしは、気になっていた事を聞きました。


「そうだな・・・記憶を初期化して国外追放といったところだろう」




 ・・・記憶の初期化・・・それはわたし達アンドロイドにとっては『死』を意味するのではないでしょうか?


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