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30話 異国の町

 わたしとバスティアンは、町の調査を始めました。


「まずはエミリーとキャサリンの行方を捜すのが先決だ」


「はい、二人を早く見つけないといけません」


二人が拉致されたにしろ、自ら山を降りたにしろ、この町を通過する事になります。

 ここで、二人の足取りを探さなければなりません。


「でも、どこから探せばいいのでしょうか?」


「二人が国境警備隊に捕まったのであれば、軍の施設か警察の留置所に監禁されている可能性が高い。だが迂闊に直接乗り込んでも二人がいるとも限らないし、藪蛇になる可能性が高い。まずは情報収集から始める」



 わたしとバスティアンは、ショッピングモールでお必要な資材を調達し、まずは町の調査をする事にしました。


「ええと・・・代金は支払わなくて良かったんですか?」


「この町は町ごと放棄されている。残された物資の管理をしているという事は無いだろう」


「でも・・・やっぱりなんだか気が引けます」


 実際、店員のアンドロイドやロボットは普通に仕事をしていますが、店舗のセキュリティは機能しておらず、何も管理されていない状態でした。

 ですが、なんだかどうしても悪い事をしている気がしてしまいます。


「これらの商品は、このまま誰も使わなければ朽ち果てるだけだ。お前が有効に使った方が報われるという物だ」


「ふふっ、物は言いようですね。わかりました、有意義に使わせていただきます」


 バスティアンに言われて、気持ちが少しだけ軽くなりました。




 支度を整えたわたしとバスティアンは町の調査に出ました。


 バスティアンはちょっとお堅い服装ですが、なんだかデートみたいな雰囲気になってしまいました。




 町のあちこちを見て回りましたが、自動化されロボットのみで運営されている店舗は普通に店を開いていました。

 この町の店舗は殆どが完全自動化が進んでいた様です。


 一方で、閉まったままの店舗もいくつか見受けられました。これはおそらく自動化せずに人間が自分で運営していた店舗だと思われます。


「妙だな、計画的に町を放棄したのなら、なぜほとんどの店でロボットたちは店を開店しているのだ?」


「確かに不思議ですね。人間がいなくなる事がわかっていたら、店を閉店しておくのではないでしょうか?これではまるで・・・突然人間がいなくなってしまった公国と同じです」


「そうだな・・・次に調査する場所だが・・・」




 わたしとバスティアンは、病院へと向かいました。


 この町にはいくつもの大きな病院があります。

 そのうちの一つに行ったわたしたちは、一目でこの町の状況を把握しました。




 病院は・・・無数の人間の死体で溢れかえっていたのです!


 遺体が霊安室に収まりきらず、あらゆる病室が人間の遺体で埋め尽くされていました。

 公国で、わたしたちがしたのと同じように、部屋の空調温度を零度近くまで下げて遺体の腐敗を遅らせていたのです。

 それでも、あの日からかなりの日数が立っているため、遺体の劣化はだいぶ進行していました。


「これは!公国と同じように、この町にも核攻撃があったのでしょうか?」


「・・・ああ、この状況から察するに、おそらく間違いないだろう」


「この病院のアンドロイドは、遺体の葬儀をしないのでしょうか?」


 わたしたちは、残ったアンドロイドの判断で人間の遺体の埋葬を決定しました。

 この町でも、これらの遺体の回収はアンドロイドを中心にロボットたちで行なったはずです。


「ああ、我々の国の様な小規模な国なら、すぐに人間が一人もいなくなった事が確認できたが、これくらいの大国になると国の中枢が機能している可能性がある限り、一都市のアンドロイドが独自の判断で、人間の死亡を判定できないのだろう」


 おそらく中央との通信も復旧していないのだと判断できます。


「でも、どうしてこの町は核攻撃を受けたのでしょうか?」


 国境に近いとは言っても、この町は、公国の中心地から十分に離れています。


 公国に打ち込まれた中性子爆弾の影響がここまで強いとは考えられないです。

 この町には別のミサイルが撃ち込まれたのでしょうか?


「それはわからないが・・・そうなると、核攻撃を仕掛けたのはこの国ではなく第三者だという可能性が出てくる」


「それは一体?」


「これは隣国が公国に攻めてきたという単純な事態ではないのかもしれないな」


「つまり、隣国は別の国と戦争をしていて、公国はそれに巻き込まれたとか、そういう事でしょうか?」


「察しがいいな。その可能性は十分にある。そして、現在この町が、国の中枢と連絡が取れていない事を考えると、この国の中枢も壊滅している可能性がある」


「そんな!これほどの大国が?」


「それも調査してみないと何ともいえないがな」


 ・・・まさか?これほどの大国まで全滅してるなんて事は・・・


「だが、とりあえず、そうなるとエミリーたちは捕獲されていたとしても、そのまま放置されている可能性が高くなる。おそらく密入国者の処置を判断できる状況ではないはずだ」


「それでは・・・エミリーたちは?」


「収容所に監禁されたままの可能性が高い。探しに行くぞ」


「はい!早く助け出しましょう!」




 わたし達の次の目的地は、国境警備隊の収容所になりました。


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