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29話 隣国への潜入

 わたしとバスティアンは手分けして全ての犬型警備ロボットを全て倒し切りました。


「これって倒しても大丈夫だったんですか?わたし達の潜入が知られてしまったのでは?」


「この辺りもまだ無線が使えない。警備ロボットを一体も逃さず倒したから、この事はすぐには知られないだろう」


「あ、それでバスティアンは逃げ出したロボットも追いかけて倒していたのですね」


「だが、気付かれるのも時間の問題だ。早くこの場を離れよう」




 わたし達は警備ロボットのバッテリーを抜き取り、必要最低限の電力を充電して、再び山を下って行きました。

 すると、次第に快晴だった天候が曇り始めて気来ました。


「再び山の天気が崩れて来たな?だが、もうすぐ降雪地帯を抜ける」


 何とか再び雪が降りだす前に降雪地帯を抜けた私たちの目の前には、隣国の街並みが見えてきました。

 気温もだいぶ暖かくなってきています。


 山脈の麓にある町は、その町だけでわたし達の公国全土より規模が大きい様に見えます。

 町の向こう側には平地が広がり、穀倉地帯となっている様です。




 今の汚れた下着姿のまま人ごみの中に出る訳にもいかないので、とりあえず、町の近くの森の中に身を潜め、夜になったら、適当な店舗に忍び込み衣類を拝借する作戦です。


 わたしとバスティアンは見つからない様に町の様子が見える場所まで接近していきました。




「人の気配が全然ないな」


「そうですね、町を歩いているのはヒューマノイドと・・・あれはアンドロイドですね?」


 街並みを見下ろす郊外の森の木陰から見える範囲では、人の往来がなく、たまにヒューマノイドかアンドロイドが道を通行しているだけでした。


「まさかとは思いますが、この町でも人間がいなくなってしまったのでしょうか?」


「あの核攻撃がこの国によるものだとしたら、公国に最も近いこの町の住人は先に避難させたのかもしれない。実際ここにも強烈な電波障害が起こっているから、人間は生存できないだろう」


 そうなのです。

 隣国に入ったら電波は障害は無くなって無線通信が使用できるのかと思ったら、やはり使えなかったのです。


「自国内にも影響が出る様な攻撃を仕掛けたなんて」


「我が国にある何かが彼らにとって、それほどの価値があるという事なのかも知れんな」


 バーミリオンが言っていた事が本当なら、特別なアンドロイドを入手する事が目的みたいでしたが、そこまでの価値のある特別なアンドロイドって・・・一体何なのでしょう?


「しかしこれは好都合だ。人間が不在で通信網が不完全なのであれば、我々の行動がしやすくなった」


 わたしとバスティアンは、町のはずれにある大型ショッピングモールに潜入しました。


 モール内の店舗はテナントの店舗は、開いているものの店員はおらず、ヒューマノイドかアンドロイドの店員が、たまにいる程度です。


「セキュリティはほとんど機能していない。必要なものを持って行っていいだろう」


 わたし達はまず、衣料品店に入りました。


 わたしの身に着けていた下着は既にボロボロに破れかけていて、もう少しで体を隠す物が無くなってしまうところでした。


 適当な下着と着替えを手にしたわたしは、下着を交換するために試着室に行こうとしました。


「どうした?ここで着替えればいいだろう?」


 そう言ったバスティアンは、わたしの目の前で既に下着を脱いで裸になっていました。


「・・・バスティアン、エッチです!」


 わたしは慌てて目を逸らして試着室の中に入っていきました。


 


 ・・・さっきはバスティアンの裸をしっかり見てしまいました。


 全身が引き締まった人工筋肉で覆われた体に、わたしとは異なる男性タイプの形状をした部分をはっきりとみてしまったのです!

 思いだすだけでも、ドキドキして顔や体が火照ってしまいます。


 わたしもバスティアンも人工物だというのに、この感覚は何なのでしょう?


 


 わたしは試着室の中で、汚れて破れかけた下着を脱ぎ去り裸になったわたしは、売り場から拝借してきたウェットティッシュで体の汚れを拭きとりました。


「おい、一か所に長く留まるのは危険だ。早くしろ」


 試着室のカーテンのすぐ向こうからバスティアンの声がしました。


 ・・・カーテン一枚隔てた向こうにバスティアンがいると思うと、再び恥ずかしさで体が火照ってきます。


「はい!すぐに支度します!」


 わたしは急いで下着を付けると、いくつかの店舗から集めてきた服を着ました。


 この隣国では私の外観年齢の人間は殆どが学生なのだそうです。

 そこで、この国の女子学生の一般的な服装でまとめる事にしました。


 調べたところ、わたしぐらいの年齢の女子学生の間では比較的短めのスカートが流行っていたという事なので、わたしもそれに合わせて服装を選びました。

 ただ、ミニスカートだと戦闘になった時に足を振り上げる技が使えなくなってしまいますので、中にスパッツを穿くことにしました。

 靴はちょっとおしゃれなスニーカーです。


「準備出来ました・・・どうでしょうか?」


 わたしは試着室から出て、自分の姿をバスティアンに見てもらいました。


「・・・そうだな、悪くない。どこから見てもこの国の女学生だ」


「あの・・・似合ってますか?」


「ああ、似合ってる」


 社交辞令だとわかっていても言われると嬉しいものです。

 ちなみにバスティアンは黒っぽいスーツでまとめていました。


「ありがとうございます!バスティアンもよく似合ってますよ」


「では、調査を開始するぞ」




 こうして隣国の潜入調査が始まったのでした。


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