26話 現実の続き
眼が覚めるとわたしの目の前にはバスティアンの寝顔があり、わたしの肩にはバスティアンの腕がのっかっていました!
・・・あれっ?わたしの上に乗っていたのはお嬢様では?
いいえ、あれは夢で・・・わたしはエミリーとキャサリンの間で寝ていたはずでは?
さらにわたしは、自分が下着姿である事に気が付きました。
えっ?どうして?
昨日は着衣のまま寝たはずなのに?
そしてバスティアンも上半身裸で下半身は下着のみです!
・・・これは一体どういう事でしょう?
さっきお嬢様が夢の中で言っていた事は現実だったのでしょうか?
記憶を遡って調べてもその様な記録は残っていません。
眠っている間にバスティアンとその様な関係になってしまったという事なのでしょうか?
部屋の中を見回すと、エミリーとキャサリンの姿が見当たりません。
それに荷物運びのヒューマノイド達もいなくなっています。
小屋の中には、わたしとバスティアンの二人きりです。
みんなどこへ行ってしまったのでしょう?
とにかく今はバスティアンを起すしかありません。
「バスティアン!起きてください!エミリーたちが居ないんです!」
バスティアンに肩を抱かれて身動きが取れないわたしは、バスティアンの耳元で呼びかけました。
「んん・・・」
そして意識が戻り始めたバスティアンがわたしを強く抱き寄せたのです!
わたしの体はバスティアンの体に密着し、肌と肌が直接触れ合った瞬間、わたしは全身に規定値を超えた電流が走った様に感じました。
「バスティアン!離して下さい!これはどういう状況ですか!」
わたしの声でバスティアンが目を覚ましました。
そして、わたしの状況と自分の状況を見て少し驚いた表情をしたのです。
「これは・・・どういう状況だ?」
・・・わたしと同じ質問をバスティアンも返してきたのです。
「バスティアンも覚えていないのですか?」
「ああ、暖炉の火の番をしていたら、二人が交代すると言って来て、俺はお前から少し離れた場所で横になって仮眠モードに入ったはずなのだが・・・」
「わたしたちが寝ている間に、エミリーとキャサリンでやったのでしょうか?」
「・・・あの二人ならやりかねんな」
「でも、二人はどこに行ったのでしょう?外はまだ吹雪ですし、長時間外にいたらシステムダウンしてしまいます」
「二人だけではないな、ヒューマノイドたちもいないし、服や荷物も見当たらない」
バスティアンに言われて部屋の中を見渡すと、わたしたちが着ていた服や荷物、それに毛布もなくなっています。
「薪も無くなっているな。今の薪が燃え尽きたら暖炉の火が消える」
いたずらにしても、さすがにこれは悪質すぎます。
「きっと二人は小屋の外にいると思います。見てきます」
私は起き上がると小屋のドアを開け、外に出ました。
小屋の外は吹雪のため、下着姿のわたしは皮膚に直接雪が当たって熱を奪われていきます。
これは、長時間外に出ていると体温が下がって稼働できなくなってしまいます。
わたしは雪をかき分けながら小屋の周りを一周しましたが、二人の姿も、荷物や薪も見当たりませんでした。
外に出てからわずか数分ですが、わたしの体はかなり温度が低下してきました。
そろそろ小屋に戻らないと動けなくなってしまいます。
「大丈夫か?一旦中に入れ」
小屋から出てきたバスティアンがわたしを抱き上げました。
「体が冷え切っているぞ」
そういって私を自分の体に密着させたのです。
バスティアンのからだはまだ冷えていなくて、接触している部分がとても熱く感じました。
小屋の中に入ってわたしを抱きしめたまま暖炉の前に座りました。
「あの・・・もう離しても大丈夫ですよ?」
「もう少し体温を回復させた方がいい。それに暖炉の火がもうじき消える」
暖炉を見ると、最後の薪が燃え尽きそうになっていました。
「あの・・・外にはエミリーたちもいなくて荷物もありませんでした」
「ああ、だから吹雪が止んで日が昇るまでバッテリーの消費を最小限に抑えた方がいい。このままできるだけ密着していた方がお互いに熱量を保存できる」
バスティアンがわたしの背中に手をまわして、更にしっかりとわたしを抱きしめました。
「あっ!あの!密着しすぎでは!」
「何を言っている出来るだけ接触面積を多くした方がいい」
そういって、今度は頬と頬をくっつけて来たのです!
そしてわたしの耳にバスティアンの唇が少し触れました。
「ひゃん!」
くすぐったくて思わず変な声が出てしまいました。
「足も絡めた方が接触面積が増える」
バスティアンは今度は足を巻き付けて来たのです。
「えっ!ちょ、ちょっと!」
下腹部と太腿がしっかり密着してしまいました!
お互い、下着しか身に着けていないので、素肌の感触がしっかりと伝わってきます。
恥ずかしさで体が火照ってきました。
「おい、急激に体温が上がってきたぞ。無駄にエネルギーを消費するな。もっと温存しろ」
「そういわれましても・・・体の火照りを自分でコントロールできないのです」
「・・・仕方がない」
今度はバスティアンの体温が急激に上昇しました。
「どうして?」
「俺が温度を上げれば、お前がエネルギー消費せずに済むだろう?」
「それではバスティアンが・・・」
「俺の方がバッテリーの容量が大きい。気にするな」
「でも・・・」
「いいから、出来るだけ密着して熱を無駄にするな」
バスティアンが更に強くわたしを抱きしめました。
でもそれは、不快ではなくバスティアンの温かさが次第に心地よく感じて来たのです。
そうしてわたしは再び眠りの中に落ちていったのです。




