表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/73

23話 山脈越え

 スキルのインストールも完了し旅の準備が整った私たち4人は、いよいよ隣国への潜入調査に出発する事になります。


 隣国へ行くためには広大な山脈の山道を超える必要があります。 

 でも、隣国との間にある山脈は広大で、普通に徒歩で移動すると10日以上かかる距離です。


 しかし実際のところ山道は最近では殆ど使われておらず、この公国から国外への移動には航空機が使われていました。

 しかし現在は電波障害のため航空機を使用する事が出来ません。

 それに、わたし達アンドロイドが航空機で国外に移動する場合、空港での入国登録が必要で、その後の滞在中の全ての行動が監視されてしまうのです。

 ですから今回の様な潜入捜査を行うためには徒歩で秘密裏に入国した方が自由に行動できるのです。

 ヴァーミリオンたちも同じ理由で山脈を越えてやってきたのでしょう。


 隣国へ続く山道は普段あまり使われていないため整備が行き届いておらず、険しい箇所も多いため自動車が走行する事が出来ません。

 ですから歩行型ビークルを使用するか、あるいは徒歩で行くしかないのです。


 今回は、わたし達4体と、荷物運び要員のヒューマノイド数体で参道を徒歩で移動する事になりました。


 徒歩とは言っても、実際には駆け足で山道を走り抜けます。

 当然エネルギーの消費が激しくなりますので、充電用のバッテリーを同行するヒューマノイドに運ばせて途中で充電するのです。

 この方法であれば、2日程度で山脈を越えて隣国に入る事が出来るのです。




「えー!二日間ずっと山の中を走り続けるの?」


 エミリーはその話を聞いて露骨に嫌そうな顔をしました。


「充電用のバッテリーとカロリー補給用の食料は用意してある。エネルギー切れの心配はない」


「そういう問題じゃなくて、二日も山の中を走るなんてさすがに飽きるよ!」


「それくらいは我慢しろ」


「敵の襲撃があれば退屈しないのでは無いかしら?」


「キャサリン!不吉な事言わないで!それなら退屈な方がいいよ!」


「山の景色も色々変化しますのできっと楽しいですよ」


 わたしも何とかエミリーを宥めます。




 こうしてわたしたちは隣国へ向けて出発したのです。




 山道を走るのは思ったより快適でした。


 インストールしてもらったスキルの中には不整地を走るためのスキルという物もあって、体が勝手に最適な足場を選んで足を運んでくれるのです。

 やはり最初は自分のボディに合わせてチューニングが必要なので多少ギクシャクしていましたが、しばらく走っていると段々効率化させれて、荒れ地でもスムーズに走れるようになってきたのです。


「これ、結構楽しいかも!」


 最初は転びまくっていたエミリーも次第にスムーズに走れる様になると段々楽しくなってきたみたいです。


「ねえ、もっとスピード出してみようよ!」


「あまり調子に乗るとまた転ぶわよ?」


「キャサリンだって最初は何度か転びそうになってたじゃない!」


「まだ先は長い。これ以上ペースを上げるとオーバーヒートで動けなくなるぞ」


「そっか、ライブの時も休憩時間に冷却しないと結構体が熱くなってたもんね」




 ムーバルフレームのモーターも、人工筋肉も激しく動かすと発熱します。

 その熱は人工血液が吸収して人工肺から体外に放出するのです。

 人工皮膚は断熱性が高いのであまり効率よく放熱は出来ませんが、顔など皮膚の薄い部分は熱が表面に伝わりやすいので、多少温度が上がります。

 一級アンドロイドはこう言ったところも生身の人間と同じ様に表皮の温度が変化するように作られているのです。



 

 山道を進んでいくと、標高が上がり周りが雪景色になってきました。

 気温もだいぶ下がってきて、雪が舞い始めています。


 わたしたちアンドロイドの活動可能温度は0℃から50℃が推奨されています。

 それを外れると段々パフォーマンスが下がっていきます。

 すでに気温は氷点下になっていますが、走り続けていれば発熱しますので行動に大きな問題はありません。


 しかし、次第に天候が悪くなって吹雪になってきました。

 こうなると視界と足場が悪くて走り続けるのは危険です。

 わたしたちはペースを落として歩き始めました。


「この先に山小屋があるはずだ。そこで吹雪が止むのを待とう」




 バスティアンの言った通り、少し進むと山小屋が見えてきました。


 この山道は大昔はこの山脈を越えるための主要道路でした。

 昔の人間はこの山道を何日もかけて歩いて越えなければならなかったのです。

 山脈の丁度中央にある公国は、大昔の商人や旅人が山脈の両側の国を行き来する際の宿場町として栄えていたそうなのです。

 ただ、両側のそれぞれの国から公国に来る道のりも何日もかかりますので、山道の一定の距離ごとに宿泊のための山小屋が用意されていたのです。


 ただ、船や飛行機が発達してからは陸路が使われる事は少なくなり、山道は今ではハイキングコースとして使われているだけですので、この山小屋を利用する人も少なくなっています。




「まだ使えそうだな」


 山小屋は結構古くなっていましたが、吹雪を凌ぐには支障はありませんでした。


「ふう、雪の中で野宿じゃなくて良かったよ」


「吹雪は当分やみそうもない。ここで夜明けを待つ事にする」




 わたし達は山小屋で一夜を過ごす事になりました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ