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19話 幸せの約束

 わたしたちは捕獲したアンドロイドを回収して城に戻りました。


「パトリシア、こいつらの調査を頼む」


 バスティアンは捕獲したアンドロイドをパトリシアに引き渡し、調査を依頼したのです。


「このアンドロイド達は何者ですか?」


「隣国から侵攻してきたアンドロイドだ。こいつらからできるだけ情報を引き出せ」


「かしこまりました」


 パトリシアはヒューマノイドたちに指示を出して隣国から来たアンドロイド達をメンテナンスルームに運びました。


 アンドロイドのメンテナンスルームでは、専用の機器があるので、唇を接触させたりしなくてもアンドロイドの内部システムにアクセスできるのです。


「それからついでにジュリエッタも診てやってくれ。どうも調子が悪いらしい」


「いえっ、わたしは別に」


「今回色々無理をさせた。一度精密検査を受けた方がいい」


「本当に大丈夫ですから!」


「ダメよ、ジュリエッタ。うちに任せなさい」


 パトリシアは強引にわたしを引きずってメンテナンスルームに連れて行きました。


 メンテナンスルームにはアンドロイド専用のベッドが用意されています。


「じゃあ、ジュリエッタは服を脱いでこのベッドに横になって」


 わたしは覚悟を決めて破れたメイド服を脱ぎ、下着も全て外してベッドに横たわりました。

 すると、ベッドの脇から透明なカバーが覆いかぶさり密閉状態になりました。

 そしてその中に液体が注ぎ込まれていきます。


 アンドロイドのメンテナンスは、この液体の中で行われるのです。


 この液体は導電性があり液体を通じて外部との通信が可能になります。

 また液体内には無数のナノマシンが存在し、これらが各部の修復を行うのです。


「外傷は大した事ないみたいね。これくらいならすぐに治るわ。内部構造にも問題はないみたいね。活動履歴を見たところ、結構激しく暴れたみたいだけど、ほとんど損傷が無いなんて、あなたのムーバルフレームってよほど頑丈に作られてるのね?見た目はこんなに華奢で可憐なのにね」


「あまり見ないでください。恥ずかしいです」


 パトリシアがわたしの体をしげしげと見るのでなんだか恥ずかしくなってしまいました。


「ふふっ、こんなにきれいな体なんだもの、恥かしがる事ないわ」


 ちなみに、メンテナンス中はベッドの外部マイクとスピーカーにリンクしているので液体の中でも外の人と会話できるのです。


「特に異常は無さそうだけど・・・メモリーの使用量がここ最近で一気に増大しているわね。まあ、あなたのメモリー容量は桁外れに大きいから今のところ支障は無いでしょうけど、あとはエモーションエンジンが極端に肥大化してるわね。だから最近のジュリエッタって感情が豊かになったのね?」


 エモーションエンジンというのは感情表現など人間らしい振る舞いをするための疑似感情を創生するモジュールです。


「えっ?わたしってそんなに感情が表に出てますか?」


「ええ、日に日に感情表現が豊かになって来てるけど、自分で気が付いてなかった?」


 ・・・言われてみればそうかもしれない。


 さっきのバスティアンとの事があった時は、明らかに感情のパラメータの変化が大きかった事は自覚している。


 ・・・つい、さっきのバスティアンとのキスを思い出い出したら、体がぴくんと反応してしまった。


「あら?・・・今パラメーターが大きく変化したけど何かあった?」


「いえっ!なんでもありません!」


「そう?一瞬全身のアクチュエータが痙攣して、温度が上昇したけど?」


「本当に大丈夫です!」


「まあいいわ、普段の活動に支障が出るほどではないしね。でも一旦このまま睡眠状態になってメモリーの整理をした方が良さそうね」


「そうですね、ちょっと眠ります」


 わたしたちアンドロイドは人間と同じようにメモリーのデータを整理する時には睡眠状態になります。


 目を閉じたわたしは、次第に意識が薄れていきました。









 ・・・遠くで誰かの声がします・・・




「・・・ジュリエッタ・・・」




 誰かがわたしを呼んでいます。




「・・・起きて・・・」




 なんだか・・・とても懐かしい気がします。




「起きて、ジュリエッタ」


 ・・・これは・・・お嬢様の声です!


「・・・お嬢様?・・・わたしは・・・」


 目を開けると、そこは、いつもお嬢様と共に過ごしていたお城の中庭でした。


「ジュリエッタってば、アンドロイドなのに居眠りするなんて、どこか調子が悪いんじゃなくって?」


「申し訳ありません!お嬢様!・・・・・お嬢様?・・・ですよね?」


「何言ってるの?ジュリエッタ」


「いえ・・・なんだか・・・悪い夢を見ていたみたいです・・・」


「悪い夢?」


「お嬢様が死んでしまって・・・いえ!申し訳ありません。わたしとした事がなんという不吉な事を!」


「ふふふっ、夢の中の話でしょう?仕方ないわ。それよりもジュリエッタはもっと幸せな夢を見た方が良いのではなくて?」


「幸せな夢?」


「そうよ、ジュリエッタ。だってあなた、今、恋をしてるでしょう?」


「恋!?・・・お嬢様、何を言って・・・」


「私、知ってるのよ?ジュリエッタがバスティアンとキスをしたって事」


「お嬢様!どうしてその事を!」


「ふふっ、私には何でもお見通しなのですよ!」


「あれは!緊急事態で!・・・わたしはどうしても自分でお嬢様の仇が打ちたくって・・・・・あれっ?・・・それは夢の中の話で・・・」


「ジュリエッタ、あなたは私の事ばかり考えていないで、もう少し自分の幸せの事も考えなさい」


「でも・・・お嬢様のために尽くすのがわたしに与えられた使命です」


「でも、その私の望みがジュリエッタの幸せなのだから、あなたには私の望みを達成する義務がありますよね?」


「・・・わたしの幸せは・・・ずっとお嬢様のお傍にお仕えする事です」


「まあ、確かにそれも私の望みではあるわね?」


「それでしたら、今のままで問題ありません」


「ふふっ、それもそうね。このまま時が止まってしまえば、私たちは二人は永遠に幸せでいられるわね」


「はい、永遠にお嬢様のお傍におります」


「約束よ!ジュリエッタ」


「はい、必ず約束を守ると誓います」




 わたしは、お嬢様と永遠の約束を交わしたのです。


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