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15話 反撃の決意

 ヴァーミリオンを吹き飛ばし、わたしを抱きかかえたのは執事のバスティアンでした。


「どうして、ここに?」


「お前が先に逃げさせていたアンドロイド達が知らせに来た。俺は別ルートでこの町を目指していたバレッタの隊に合流するために近くまで来ていたのだ」


「そうなんですね。ありがとうございます」


 まさかこのタイミングでバスティアンが助けに入ってくれるとは思いませんでした。


「あいつは何者だ?」


「彼らは隣国から派遣されたアンドロイドです。この国で極秘開発されている特別なアンドロイドを奪取しに来たそうです」


「この国でアンドロイドの開発?・・・聞いた事が無いな」


「はい、この国にアンドロイドを作る技術など無いはずです」


「この国で特別なアンドロイドと言えば・・・お前じゃないのか?」


「わたしではないそうです。でも興味があるのでわたしも連れて帰ると言っていました」


「そうか、間に合って良かった。とにかくシステムを再起動しろ」


「はい、少しの間お待ちください」


「ああ、その間、お前はオレが守る」


 わたしはバスティアンの腕の中でシステムを再起動を開始しました。



「おいおい、いきなり現れてお姫様をかっさらうなんて王子様気取りかよ?」


 そこに、飛ばされたヴァーミリオンが戻ってきました。


「この俺を吹っ飛ばすとはな。あんた・・・軍用アンドロイドだな?」


「お前が今回の元凶か?」


「俺は上からの命令で動いているだけだぜ?あんたも一緒だろ?」


「どちらにしても我々の敵には違いない。殲滅するだけだ」


 バスティアンとヴァーミリオンが臨戦態勢になっています。


 そこにわたしも再起動が完了しました。


「再起動したか?もう動けるか?」


「はい、大丈夫です・・・バスティアン、お願いがあります」


「なんだ?」


「わたしにその人の相手を任せてください。わたしがその人を倒します」


「はっ、あんたが俺を倒すだぁ?あんたじゃ俺には勝てねえぜ」


「ええ、わかってます。ですからバスティアン、わたしのリミッターを解除して下さい」


 わたしのアクチュエータのリミッターは自分の意志で解除出来る範囲がそれほど大きくないのです。

 メイドアンドロイドとして工場から出荷されたわたしは、一定値以上の解除は外部からの介入がなければ解除できない様になっています。


「わかった。お前のシステムに介入する」


 バスティアンはわたしを抱き寄せると唇を重ねました。

 それは、さっきのヴァーミリオンと違い、優しく触れるだけの口づけでした。


 そして、バスティアンの意識がわたしの中に入ってきました。

 今回は、ヴァーミリオンの時の様な不快感はありません。

 わたしは全てのファイアーウォールを解除してバスティアンを受け入れました。


 バスティアンの意識が、一瞬わたしの隅々まで行き渡るのを感じました。

 そしてそれは、わたしの身体制御領域に集中し、わたしを縛り付けていた何かを解放するのを感じました。


 それと同時に、全身の人工筋肉に熱を感じたのです。


「んんっ!」


 全身の人工筋肉が熱くなって一瞬痙攣し、思わず声が出てしまいました。


「おいおい、俺の時より感じてるんじゃねえのか?そいつから離れろ!」


 ヴァーミリオンが私たちに迫ってきました!


 バスティアンがわたしから唇を離し、それに対抗しようとしました。


 しかし、それより早く、わたしが半身を起こしヴァーミリオンの拳を受け止めたのです。


「なんだぁ!その力は!」


 ヴァーミリオンの渾身の一撃をわたしは片手で受け止めたのです!


「その細腕で俺の拳を受け止めただと!」


 ・・・ヴァーミリオンが驚いていますが、受け止めたわたしも驚いています。


 瞬時に自分のダメージチェックを行いましたが、各関節及びフレームに損傷はありません。

 アクチュエータ出力も規定内です。

 ・・・いえ、むしろまだ余力を残しているくらいです。

 わたしが更に力を込めると、ヴァーミリオンの拳を押し返し始めたのです!


「ふざけるなぁ!俺が力負けするだと?」


 ヴァーミリオンも更に出力をあげました。

 わたしも対抗しますが、体重差のため体ごと後ろに押し返されされます。


「俺が支える」


 すると後ろからバスティアンが、わたしの背中を支えてくれたのです。


「ありがとうございます!」


 これなら確実に力を伝えられます。

 わたしはバスティアンに支えられ、アクチュエータの出力を最大にしてヴァーミリオンを一気に押し返しました。


「うわっ!」


 ヴァーミリオンは大きく後ろに飛んで行きました。


「すごい!・・・これって?」


 バスティアンに支えられていたとはいえ、ボディサイズが二周りは大きいヴァーミリオンをわたしが吹き飛ばしたのです。


「大丈夫か?」


 バスティアンがわたしを支えたまま立たせてくれました。

 即座に自身のダメージチェックをしましたが、やはり関節やフレームはノーダメージです。


「はい、異常ありません」


「そうか、ならやってみるか?」


 バスティアンの視線の先では、ヴァーミリオンが体を起こして起き上がっていました。


「おいおい、そんな華奢な体でこんな事をしたら、自滅しちまうんじゃねえのか?」


「余計なお世話です!」




 わたしはそう言って、ヴァーミリオンに向かっていったのです。


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