ニャーロック.ニャームズとカモメのジョナサン
あれは2024年の寒い寒い日の出来事であった。
私は猫らしく。毎日ホットカーペットの上で座り。お手々無い無いしており、気がついたら1日が終わっている生活を送っていた。
ホットカーペットの色は明るい茶で私の毛色と同じなのでカーペットと同化し、飼い主に間違って踏まれるぐらいジッとしていた。
「海に酒らしき液体を撒き散らし、クラッカーを鳴らしながら白い粉を吸って笑っていたんですよ。ニャームズさん。不気味で不気味で怖くって。誰かに話したくてここに来ました」
カモメのジョナサンがロシアンブルーのニャーロック.ニャームズと話していた。
この家の窓はいつも開かれており、ニャー探偵であるニャームズに相談事をしに来る。
「10人以上の人間が船に乗り、海上で白い粉を吸って笑っていた……か。君はどう思う?ニャトソン?」
ニャトソン。私の名だ。
「良くない粉だろうな」
私はニャームズが昔。粉末タマネギを鼻から吸引しているのを見たことがある。
あの時のニャームズは怖かった。
大笑いしながら壁に向かって輪ゴムを何枚も伸ばしては飛ばしていた。
人間にとってタマネギは毒ではないが、きっと悪い薬を吸っていたのだ。
「船上ドラッグパーティーか。悪くない線だ。ジョナサン。どんな笑い声でしたか?」
「フハハ。ヒヤッヒャッヒャッ。ウホホホ。ホヒホヒ。みたいな。引きつった笑いです。かなり怖かったですね」
ああこれは間違いない。いけない薬だ。
頭が完全にイッてしまったのだろう。
ジョナサンが無事でよかった。
「1人ずつ吸って笑って粉をばら撒いて……それで……実はその粉を私も吸ってしまって……」
「ん!?」
話が変わってきた。人間たちをそこまで狂わせる薬を鳥が吸ってしまったら危険なのではないか。
私は流石にお手々無い無いの姿勢から一瞬立ち上がり、すぐにお手々無い無いした。寒い。
「大丈夫でしょう。魚達だって食べていたんだから」
「でもね。ニャームズさん。魚と鳥は全然……えっ?なぜ魚が粉を食べていたとお分かりで?」
「そうだ!なぜそんな事が分かる?」
こいつとの付き合いも長いがいつもコレには驚かされる。
まるで実際に見たかのように言う。
「遺骨です」
「遺骨?」
「吸ってたんじゃなくてすくっていたのです。笑っていたのではなく泣いていた。そして海に帰した。それだけです」
ニャームズは私とジョナサンに人間の『散骨』という不思議な文化を教えてくれた。
死体を焼いて骨だけにして、さらにそれを粉にして海に撒くという。
なんだそれ?死んだら他の動物に食われるというのが我々の常識だ。
その文化は理解できない。
「人は海に帰りたがる。元はお魚だったのかもね」
…
…
…
スッキリした顔で帰っていったジョナサンを見送り、ニャームズは私の横にお手々無い無い姿勢で座った。
「ニャームズよ。私には笑うように泣くってのは理解できないね」
「そうかな?想像してご覧よ。身近な友が死に。焼かれ、灰になって海に消えるところを」
どれどれ。
「……ひんっ!」
ニャームズやフジンやケーブがそうなったところを想像したら涙が溢れてきた。
「フヒョヒョオホホッ。ヒュンッ!ヒュンッ!」
お手々無い無いのまま私はボロボロ泣いてしまった。
そんな私をニャームズは目を細め見ている。
いつまでもいつまでも見ていた。
2024年。少年にゃーにゃー書き下ろし短編より。