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やたらと口の悪い石②

アストレイの話はこうだ。



俺様は500年前にこの惑星にやってきた。あ?目的?観察だよ。オレ様は特級観測官だからな。なんでも観察・記録するのが仕事なんだ。星間研究所もシンクタンクもオレ様の収集したデータがなきゃ何もできないんだぜ。──なんだ?「よくわかんないけどすごい」?ふふん、わかってないなりにものわかりがいいじゃねえか。そうだ。オレ様はすごいのだ!


あのときは惑星の大気構成と重力データを集めた緻密で正確な素晴らしい情報盤アカシックレコードを作成するため複数の惑星を周ってたんだ。で、この惑星に近づいた時、不運にも乗ってた船のエンジンに不調をきたしちまってな。クソ、ジャンク屋め……。妙に安いとは思ったが、思いっきり不良品掴ませやがって……!


……。


話がそれたな。まあそれで、どうか不時着した後、船から命からがら降りたものの思ったよりダメージが大きくてな。大気圏突入の熱と不時着時の衝撃でボディは崩壊してしまった。幸いにもオレ様は生命物理学もかじっていたから、人格と記憶と記録をコアに集約させて損傷を防ぐことに成功した。どうにか生き延びってわけだ。だがそのかわり、体は無くなったから一切の動作ができなくなった。微弱な電磁波を起こして空気を振動させ発声するくらいが関の山だ。


船は空中で瓦解してしまったから、それでもどうにか新しい船の調達でもできやしないかとこの惑星に生息する原生住民主に声をかけてはみた。これが最悪だった!こっちの言葉なんか理解しやがらねえ!


挙句ビビってオレ様をテングだの神だのと呼んで、この箱に閉じ込めやがった。これだから低位知的生命体ってのは嫌になるな。自分の理解の及ばないものをとにかく怖がって、遠ざけふたをして安心したがる。未知の発見と無知の自覚をしてこその知性だってのによ。お前もそう思うだろ?


──うん、そうだよな。おやっぱり前、なかなか話がわかるな。ん、また話がそれたか。


そんで、あの木製の建造物にオレ様は箱ごと閉じ込められてたんだ。最初のうちこそちょくちょく祈祷みたいなことをしてたんだが、そのうち誰も来なくなった。そんで暇してたとこにやって来たのがお前ってことだ。


ここまでで何か質問あるか?



尋ねられたが、白は何も答えなかった。顔をうつむかせ、拳を握っている。体が小刻みに震えている。


『おい?』


「……す」


『す?』


「す………っっっげえ!」


白は叫んだ。瞳を輝かせ、握りしめた両手こぶしをブンブンと上下に振っている。


「すげえ!すげえよっ!宇宙人……。宇宙石?まあいいや!エイリアン?本物?わあー!俺、初めて会ったよ!」


鼻息荒く、興奮を隠せない。


『ふん。全く、これだから原生住民は。いいか?宇宙は広い。知的生命体なんてそれこそ掃いて捨てるほどいる。そもそもお前だって、俺様から見たら宇宙人だ。出会ったくらいでいちいち喜ぶな』


「えーっ、すごい!たくさんいるんだー!じゃあアストレイみたいな、とっきゅうかんそくかん?もいっぱいいるの?」


『いねえ!観測官で最も優秀なのはオレ様1人だからな!ふはははは!』


「すげえー!」


アストレイはすっかりご機嫌だ。見た目はずっとただの石だが。


「はっはっは。そんなにオレ様を褒め称え崇め奉るな。まあオレ様が宇宙的権威ある存在なのは事実だがな!おいお前、名前は?なんていうんだ?」


「俺?俺はね、白だよ。新星白。白と黒の、白なんだ!」


『しろ。白だな。覚えたぞ、白。──なあ、白。頼み事があるんだが。オレ様が本星に帰る手伝いをしてくれないか?』


「いいよ!」


あっさりとうなずく。断る理由など何もない。アストレイは満足げに、そしてとても嬉しげな声音で『ありがとう』と礼を言った。表情があれば満面の笑みを浮かべていただろう。こうして2人は友人となったのだった。

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