やたらと口の悪い石①
「石がしゃべってる……」
白は見開いた目をしばたかせた。
『だぁーかぁーらぁ!何度言えばわかるんだ?お前は!オレ様は石ころなんかじゃねえ!オレ様の名は、アストレイ!アストレイ=シェプラ様だ!』
「アッ、スイマセン」
剣幕に押されて思わず謝罪すると、石、もといアスレイは『チッ』と舌打ち(?)をした。
白はアストレイと箱を抱えて社の外に出た。縁に腰を下ろす明るいところで見たら石とは違って見えるかと思ったのだ。あと『外に出せ出せ連れて行け』とうるさかったからだ。光の下でも石は石のままだった。石のままで、アストレイは白に話しかけてくる。
『いやー、参ったぜ。不時着したはいいもののボディは壊れちまうしどうにかコアに意識と記憶と記録は移したけど今度は自力移動ができねえ。仕方ないからそこらの原生生物に声かけたら、ビビられてこんな箱の中に閉じ込められちまうしよぉ』
「え………。何?不時着?コア?なんのこと?神様じゃないの?」
『は?ちがうが?オレ様をそんな像的依存先定型と一緒にするな。オレ様はオレ様だ!』
状況に追いつけず目を白黒させる白に、石はまた『チッ』と舌打ちをした。舌どころか口もないただの石が一体どこからそんな音を出しているのか、白にはさっぱりわからない。
『だからだなー。……ああ、説明がめんどくせぇ……。お前らの文明レベルだとなんて言い換えればいいんだ?つまり、上だ。雲よりも上、空のさらに上だ。オレ様はそこから来たんだよ!』
白は少し考えた。顔はアストレイに向けたまま、視線だけを上にやり下にやり、指を唇に当てて恐る恐る尋ねる。
「……つまり、宇宙ってこと?」
『あ?宇宙って、あれだろ。お前たち原生住民固有の宗教に出てくる未観測空間の総称だろう?なんで今それがでてくるんだ』
「み?し、宗教?よくわかんないけど、宇宙って、つまり宇宙じゃないの?星があって、月があって、銀河があって、黒くて広い無重力の……」
宇宙を説明するとはなんと難しいことか。しどろもどろになる白にアストレイはなぜか
『……お?』
と意外そうな声を出した。
『そうだよ、《宇宙》だよ!なんだよ原生住民め、《宇宙》の概念ようやく獲得したのか〜!』
先ほどと打って変わって上機嫌だ。見た目こそなんの変化もないただの石だが、声は明らかに弾んでいる。理解が追いつかない。
「すいません、ちょっと何言ってるかよくわかんないです……」
消え入るような声で答えた。
『まあそう恐縮すんな原生住民!お前らもこの500年で多少進化してるみたいじゃねえか!いやあめでたい!アメーバだって500年あれば進化して被攻撃状態時体色を変化させて被食者を威嚇できるようになる!ってことは、お前らだってそろそろできるだろ?外宇宙との交信くらい!』
「あっ、ムリです……」
クソが。石が毒づいた。白は思う。(いや、口悪いな)と。