表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/14

新星 白⦅にいほし しろ⦆

下校中。新星白は鼻をこすった。親指に、かわいた鼻血のかすがついた。


帰りの会が終わりランドセルを背負おうとしたとき、クラスメイトのたっちんに呼び止められた。そこで腹の立つことを言われ、取っ組み合いの喧嘩になったのだ。



「おい白、聞いたぜ。お前のすっごい秘密!」

「なんのこと?」


たっちんは目を細めてニヤニヤと笑っていた。興奮しているのだろう、ほおが少し赤くなっている


「お前のパパ、ほんとのパパじゃないんだって?」


白は少しだけ、眉間に皺を寄せた。つとめて平静を装い、通学用の黒いキャップを深めに被る。


「……そうだけど。それがなんだよ」

「やっぱりマジなんだ!へえー!確かに似てないもんな、お前んち!」

「うるさいな。たっちんに関係ないだろ、そんなの」

「は?おい、どこ行くんだよ」

「帰るんだよ。じゃーな」

「なんだよ。今日、一緒に遊ぶって約束したじゃんか」

「やめる。気分じゃないから」

「なんだ?約束破るのか?サイテーだなお前。ニセモノの親だから性格も悪くなんのか?」

「なんだと!」



「あーあ」


ため息を吐いた。まっすぐ家に帰るのが嫌で通学路を外れる。

本当なら直進しなければいけないコンクリートの道を外れ、ぺんぺん草の生える土の道を進む。


足取りはのろくて重い。農協の裏を曲がり、民家に植えられた琵琶の木たちを眺めながら坂をのぼって、堤防にたどり着く。川の水が涼やかに流れている。川底の石が輝いて、距離があってもよく見える。


季節は5月。もうすぐ暑くなるだろう。


「こんな気分の時、川に飛び込んだらスッキリできるのになあ」


あーあ。またため息。


危ないことはするなと母から重々言い含められている。


小学校1年生のとき、校庭隅の築山にある池に入り滑って転んだことがある。


先生だけでなく教育委員会の偉い人まで来て、池を整備するだのフェンスをつけるだの、かなりの大ごとになってしまったのだ。


自分よりずっと大きい大人たちが、もっと大人に怒られたり謝ったりする様を見せられるのはなかなか強烈で、白の記憶に焼きついている。


白の歩く堤防のそばには古い民家が並んでいる。その向こうには畑と田んぼ。タオルを首から下げたじいさんが、草を刈っているのが見える。


堤防から降りて通学路に戻り、児童公園に向かえばクラスメイトがいる。きっと遊びに誘ってくれるだろう。


一方このまま歩いていれば、じいさんばあさんが土いじりの手を止めて声をかけてくるだろう。もしかしたらおやつでもくれるかも。


いつもだったらどっちも嫌じゃない。けど、どうしてだろう。今はなんだか、誰にも会いたくない。


うつむていると、ほおを撫でられた気がして顔を上げた。川上から吹く風だ。

上流には山がある。夏祭りは学校のすぐ近くにある綺麗な神社でやるが、あの山にも確か、もうひとつあったことを思い出す。


(古くて藪が濃くて、危ないから近寄るなって言われてたっけ)


あるのは知っているけど、誰も行ったことはない。そういう場所だ。


白はしげしげと自分の格好を見下ろした。長袖シャツに、足の甲まで覆うカーゴパンツそしてスニーカー。スネまでの靴下もきちんと履いているし、帽子もかぶっている。軍手はないが……。ま、いいだろう。


「よし。いける!」


そういうわけで白は1人、山の神社を目指すことにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ