極メシ!!【サクラエビに混じって入ってた深海魚】
見知らぬあなたは初めまして、お馴染みの皆様はお久し振り。稲村某で御座います。今回はタイトル通りのお話です。ま、昼下がりの退屈しのぎに読んで頂ければ幸いです。
さて、稲村某の職場はお寿司を提供するチェーン店です。毎日仕入れた魚を使って商売してますが、中には妙な物も混ざる事があります。今は旬のサクラエビを使った軍艦を提供していますが、網で一網打尽に獲られれば狙った獲物と違う奴も入ります。混獲なんて言われたりしますが、エビ以外に小魚が混ざる事も度々あります。
ついさっき、そのサクラエビの中に奇妙な小魚が入っていたとアルバイト嬢が抜き取ってまな板の上に除けておいたのですが……やたら黒くてグロテスクな見た目、そのままサクラエビに入れたら間違いなくクレーム級のお姿で御座います。だがしかし、稲村某はその見た目にピンときた。
(……これ、ハダカイワシじゃね?)
はい、これが今回のターゲット。ハダカイワシ目のハダカイワシ、いわゆる深海魚で御座います。その見た目はカタクチイワシそっくりと言いたいんですが、黒くて腹に点々と発光体が並びかなりキツい感じ。まともな神経の方なら、即座に捨てちゃうでしょう。
……えっ? 食べますけれど何か?
全長五センチ程のくねっと曲がった釘みたいなお姿のハダカイワシたんをね、稲村某はペーパーにくるんで素早く撤収致しました。あ、ついでに更に小さいサイズ(こっちは二センチ程度)も見つけたので、これもキープしました。
ではでは、先ずは見た目……っても、まー全て書いちゃってます。それにスマホのカメラ機能が死んでるせいで記念撮影も出来ませんでした。スマホ、買い換えたい……。
ちょっと考えて捌くか迷いましたが、小さいので頭だけ千切って食う事にしました。大小二匹居ますが、頭詰まんでプチッと引っ張って完了。では、先ずは小さい方から……食してみようか。
……カリッ、とした小骨の歯応え。そして直ぐに香ばしい甲殻類に似た風味が舌の上に広がり、案外悪くない。いや、普通のイワシより苦味が無い分だけ旨いかも? 但し、小さいからあっという間に小骨だけ口の中に残り、それがボソボソといつまでも居座る感じ。うーん、大きさがなぁ。
では、続けて二匹目の五センチサイズを……食してみようか。
カリッ、と(略)。正直言って、大きさによる味の違いは余り無い。大きくなれば芳ばしさが更に上回るけれど、その分小骨の自己主張が激しくなる。やはりイワシに似ている分、骨は案外しっかりしていますな。けれど、生のまま丸かじりしているせいで感じる訳で、焼いたりすればきっと気にならなくなるかもしれない。
それにしても、生き物ってもんは食ってきた物で味が変わるもんである。ハダカイワシもサクラエビと混ざって獲られるだけに、その味わいの殆んどが似通っている。身や内臓の味はサクラエビの身やワタの味に酷似し、殻のボソボソと残る感じも、小骨がそれに代わって感じられる。以前何処かで書いたかもしれないが、タコは貝と甲殻類と各々の餌により身の味が極端に変わり、ハマグリやエビに近い風味が強くなると昔から言われているらしい。そんな訳で今回のハダカイワシはサクラエビにそっくりな味です、と若干投げやりに思われる感想しか浮かばない。確かに味は良いけれど、サクラエビのヒゲまみれになってた奴なんで仕方ないのだ。
……と、ここまでは特に「へー、旨いのか良かったね」的な事しか書き連ねられないのだが、実はハダカイワシには一つだけ注意点が御座います。
深海魚には、その強烈な気圧変化に合わせて進化した過程で浮き袋を持たない種類が数多く存在しています。そして、そんな彼等は浮き袋の代わりに【エステルワックス】と呼ばれる物質を体内に溜め、その脂分を浮力調節に利用しているらしい。そして、人間はその【エステルワックス】を消化出来ないのです。つまり……大量に摂取してしまうと、腸内に溜まった【エステルワックス】を常に放出してしまう弊害が生じるとか。ま、今回のハダカイワシはたかだか二匹なので、【エステルワックス】による擬似お漏らしプレイは起きようも無いんですがね。
そんな訳で、皆様もハダカイワシを食する際は、絶対に食べ過ぎたらいけませんよ? 何十匹もいっぺんに食べちゃったら、ゴールデンウィークが恐怖の七日間に変わりますからね? (黄金週間だけに……)