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24 モーニング






 オーランドお兄様とたくさん話をして、昨日は少し夜更かししてしまった。


 お陰で少し眠い。


 昨日お兄様に実際に私が神人類ハイヒューマンとして持つ性質、『位怖クリフシャドウ』を披露してみせたが、その後言われたことが、学園への入学を取りやめる必要があるかもしれないということだ。


 『位怖クリフシャドウ』の持つ『威圧効果』というモノが、どれほどのもので、どういう『威圧』なのかも私自身にはわからない。そこもこの性質の面倒なところだ。なにせ私にはそれが効果を発しているのかどうかも、この腕輪によって抑制されているのかどうかもわからないんだから。


 誰もいなくなったリビングで私は一人お茶を頂きながら、迎えを待っている。


 オーランドお兄様は朝早くに仕事に出かけてしまった。

 私も今から今日の予定をこなすために出かけなければならない。

 お兄様と一緒に起きたので、少し迎えの馬車が来るまで時間が開いてしまった。眠ければ寝ればいいようなものだが、二度寝とかだらしなくて嫌い。慌てて出かけるのも嫌いなので、それなら眠い方を選んだ。


 致し方なく、眠い目をこすってお茶を頂いているというわけ。

 目の前にはまだ昨日の料理がいくらか残っており、少し摘もうかという生理的欲求に襲われるが、今から出かけるのが朝食会なので、ガマンしないと。


 なのでお茶で空腹を紛らわせる。


 このお茶は光発酵と呼ばれる魔導処理されたお茶だ。

 魔導処理というとオドロオドロしいが、実際は魔導文明花盛の帝国においては一般的な発酵処理である。言ってみれば、発酵過程で魔術を使っているお茶だ。魔術の光を当てて発酵させているらしい。それによって微妙な発酵加減を実現しているとかしてないとか。


 お茶の種類としては白茶くらいかな。形は小さな枝のような茶葉で煮だして頂く。

 香りは花のような、フルーティなフレーバー、味は苦味の少ない子供でも飲みやすいお茶だ。私の好みからすると薄いって感じだが、ローカロリーぽいので今みたいに空腹を紛らわせるのには良い感じだ。


 故郷のサウスギルベナ辺りでは手に入れることもできないが、帝都では極々一般的なお茶なんだって。

 そのお茶を飲みながら、ぼーっと一人ソファに座っている。


 昨日、お兄様と話した記憶の欠落という問題も、これといって解決策は見えなかったが、お兄様に話してみたことで、問題点もはっきりしてきた。

 いつの記憶がないのか、いつそんなことが起こったのかということがはっきりしてきた。

 思い出せない記憶は二ヶ月前からの一月間ほどの記憶。無くした時期はサウスギルベナを旅立ってから南方メリディナルを抜ける一週間に満たない程の間。


 ただ、誰にやられたのか、何のためにしたのか、ということは分からない。

 何の記憶が欠落しているのかも分からない。

 そもそもこれが記憶を奪うためにやった副作用なのか、記憶を封じるためにやったのかもわからないんだから。

 六歳の私の、たった二月に満たない期間の記憶など、それほど重要ではないと思うのだが。


 とはいえ、


「秘密が多いのも、確かなのよね」


 私は人類最上級種の神人類ハイヒューマンであることと、謎の記憶の欠落だけでなく、まだもう一つ秘密がある。


 この秘密は家族の誰にも話していない。

 知っている人間もほぼいないのではないだろうか。


 存在している記録も怪しい神人類ハイヒューマンであることや、利用価値も怪しい記憶の欠落よりも現代帝国社会の中では問題がありそうだ。位怖クリフシャドウの『威圧効果』って言っても言ってみれば魅了カリスマ の一つと言えなくもないんだし。記憶の欠落も神人類ハイヒューマンであることも黙っていればバレる心配もない。『位怖クリフシャドウ』の効果もこの腕輪をずっとしているか、サウスギルベナの実家で大人しく引き篭もっていれば危険同じようにバレるわけないのだ。バレたってだから何? と言えなくもない。


 ただ、こちらの秘密の方は、バレれば即命を狙われる危険がある。

 なにせこの秘密のせいで私は新生児の時に誘拐までされたんだから。


 以来私はこのことを、誰にも言っていない。


 言っていない?


 本当に?


 またあの『違和感』があった。


 あれ? 『記憶の欠落』がここにもある?


 私はその秘密から記憶を手繰ろうと試みる。


 お兄様にも話したが記憶というのは思い出せなくても、記憶の書庫にはちゃんと置いてあるものだ。ただ、その本がどこにあるのか、それを手繰るための糸がなくなるだけで。


 だから、他のルートから手繰り寄せていけば、思い出すということはよくある。


 私は神人類ハイヒューマン以外にあるもう一つの秘密から自分の『記憶の欠落』を探す。

 けれど、それもあまりうまく行かなかった。そのルートも霧が濃くかかっていたからだ。いや、この秘密が私の『記憶の欠落』に深く関わっているという証明かもしれない。

 やがて馬車が来るまで私はジッと自分の中の迷宮を彷徨うことになった。






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