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15 兄二人、プラスアルファ






 私は驚きをそのまま口にしていた。


 女性は少しびっくりしたように、垂れた瞳を大きく見開いたが、

「ああ、突然じゃわからないですね。ええっと私は……」

 すこし、言いよどんでいたが、


「ローサ先輩、誰でした?」

 ひょっこり顔を現した少年に目が向く。


 年の頃は13,4歳。いや13歳なんだけど。

 透明度の高い栗毛。少しきつい目つき。お母様に似たんだけど。

 背は170センチ弱くらい。たしか一年前は160センチと少しだったけど。

 幼さはまだあって細身だけどがっちりもしている。進路先が士官科だからだけど。

 その体にエプロンをつけて料理の乗った皿を手にしていた。理由は、知らないけど。


「クレオリア!」

 その少年は私の顔を見て、安堵と喜びを爆発させたような声を出した。


「遅かったじゃないか! 探しに行こうかと思ってたんだぞ」

 その声は聞き間違いもしようがない。


 もちろんお兄様がお姉様になっていたわけでもない。


 けれどやっぱりわたしは、

「誰だ!?」

 と叫んでいた。


 えっ。

 という顔でショックを受けているお兄様。確かにそれは二番目のお兄様であるウェントアースお兄様だった。


 私はローサだか、餃子だか知らない、見知らぬ女の正体などほっぽり出し、押しのけて部屋の中に入るとウェントアースお兄様の腕を引っ掴んで、頭を下げさせる。


「ちょっ。クレオリア、料理が溢れる!」

 焦った声のお兄様。


 料理なんて今はどうでもいいでしょう!

 私はお兄様の髪の毛をワシャワシャと引っ掻き回した。


「ちょっと、なにすんだよ! セットが乱れるっ」

「お兄様! なんですかこの髪型は!?」


 確か去年会った時は赤毛を短髪刈り上げて、少し長いトップを立たせていた。いかにも騎士志望という、体育会系の髪型だった筈だ。


 それが今では、

 目に完全にかかるほど伸ばされた前髪。襟足は肩より長くなっている。

 おまけに毛先はウェーブがかけられ遊んでいた。


 まるっきりホストみたいな髪型になってる!


「なんですか、このチャラい髪型は!?」

 私は爛れ堕天したお兄様を浄化するようにワシャワシャと髪の毛を混ぜ続けた。


「ちょー!!」

 お兄様は抵抗しようとするが、お皿を抱えているので動けない。


 まったく、貴方って人は!


「お母様に言いつけますからね!」

「おい! 母上は関係ないだろ! ちょっと今だけ気分転換に伸ばしてみただけだ!」

「こんな軽薄な髪型にして! すっかりオノボリデビューしちゃってるじゃないですか!」

「やめろ! なに人を田舎者が都会で浮かれたみたいに言ってるんだ!」

「どこからどうみてもそうでしょう!?」


 くすくす。


 と一家の重大事にも関わらず、場違いな、思わず笑ってしまったという笑い声が聞こえた。


 訝しげに見ると、


「お話に聞いていたとおり、面白い方ね」

 餃子女、もといローサ嬢が口元とお腹を押さえて笑っていた。


 美人のくせに可愛い仕草して!


 ウェントアースお兄様も静かになったので、何となく見ると、ポーとした表情で女の方を見ていた。

 なんてだらしない顔です、っか!

 

 私は肘鉄をお兄様の脇腹に食らわせた。

「あだっ」

 思わず手に持っていた皿を落としてしまうが、ちゃんと私が地面に落下する前にキャッチしておいた。


 料理に罪はないからね。


「で、こちらの方は?」

 私は右の手に皿を載せ、左の手を腰に当てながら、冷たい目つきで女性を見た。


「くすくす。じゃあ、少し紹介が遅れましたけれど」

 私の視線など特に気にした様子も見せずに笑っている。


 くそう、『腕輪』を外してやろうか。


「私はシプカ子爵家の長女ロザリンダです。皆からはローサと呼ばれていますわクレオリア姫様」


 そして、そのまま言葉を続けようとしているが、なんとなく予測ができる。

 だって、頬なんか染めちゃってモジッとしてるんだもの。

 あーん、聞きたくなーい!


「姫様の兄上、オーランド様と、その、お付き合いをさせて頂いています」


 なんて日だ!






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