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04 赤髪






「おい!」

 威勢のいい声が私の思考を遮る。


 その声は距離が離れていて、どうやら私に向けられたのもではないらしい。

 声の主は水龍門ギョルの目の前、一番子どもたちが溜まっているところで響き渡った。


 見れば一人の騎士が子どもたちの群れの前に立っている。

 金髪の若い男だ。甲冑に身を包んで腰には長剣を下げている。この内壁街で帯刀できるところを見ると、近衛騎士かなにかだろう。

 

 あら、こんなところに美男子イケメンが。


 風に揺れるくらいの長さの、しかし清潔感のある髪型。それは潤いを含みながらも軽やかに風に舞う。瞳が大きくてキラキラと宝石のように輝いている。

 ちょっとウキウキするくらいに王道の王子様風美男子だ。


 だが、声を上げたのは彼じゃない。その騎士の前に立っている少年のほうである。


 紅玉ルビーのような色で固そうな毛質の髪を立たせた髪型。ちょっと距離があるのでよく見えないが七歳か八歳くらいで顔立ちは整っている。着崩した服装も合わせてかなりヤンチャそうだ。

 ただ、着崩していると言っても服自体はどうみても高い。まぁ、あんな立派な騎士を背後に従えている時点でどこぞの大貴族のお坊ちゃんだろうということは分かる。


「この中で剣術で特筆を受ける奴出てこい!」

 赤髪の少年が固まっている子どもたちに命令としか言えない口調で呼びかけている。

 正直言ってあまり好ましい声色ではない。


 特筆というのは特待生試験の科目の一つ。いわゆる一芸科目だ。

 大体がこの科目を受けようとする受験生は魔術か、剣術。

 つまり特筆科目を剣術で受けようとするのは、この広大な領土を持つ帝国でも剣なら誰にも負けないという、自信がある子供たちだということである。


 しかし子どもたちは皆突然現れた少年に戸惑っているようだ。

 トラブルの臭い満々だし、素直に名乗り出る子はいないだろう。どう考えてみ自分よりはるかに格上の家柄だろう少年との揉め事なんて下手をすれば打ち首獄門、実家お取り潰しになりかねない。


「おい、お前そうだろう」

 一人の、少年よりも年上に見えるおそらく中等部あたりの特待生試験受験者だろう男の子が指名される。


 ああ、なるほど。


 私は指名された男の子の荷物を見て、わかった。

 剣術による特筆科目を受ける子は、受験のために自分の武器を内壁街まで、持ち込んでいる。

 当然武器の持ち込みをする際に必要な検査手続きを終えた印をつけられている。おまけに規則でそのケースを外から見えるようにしなければならない。

 わざわざ複雑な手続きをしてまで、武器類を持ち込むのは武術で特筆試験を受ける特待生試験受験者だというわけだ。


 指名された男の子は戸惑いながら周りを見渡すが、他の子供達はトラブルに巻き込まれないように距離を開けてしまっている。


「おい!」

 赤髪の少年は、自分より年上の男の子に歩み寄った。

 そしてその手に持っていた木剣を男の子に突きつけた。


「オレの名はジークフリート・イツァーリ。じんじょうに勝負しろ!」

 少年の名乗りに周りの人間がざわつく。


 イツァーリと言えば、公爵家の一つ。さらに帝位継承権が授けられる五大家の一つだったはずだ。


「さぁ、剣をとれ!」

 赤髪の少年、ジークフリートの申し出に、年かさの少年の方は焦って首を横に振っているが、むりやり木剣を押し付けている。後ろに控えている騎士も困っているような表情を見せているが、止めはしないようだ。


「えんりょはいらん。正々堂々と勝負だ!」





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