国民的アイドルの可愛いヤンデレ幼馴染に監禁されたけど、こんな終末も悪くない
「……ん?」
いつのまにか寝ていたのか、僕はベッドの中で布団にくるまれていた。
何かに夢中になると周りが見えなくなる性格なので気づいたら寝落ちしているなんてこともよくあることなんだけど、今日はなんだか違和感があった。
具体的には右腕のあたりに。
ふと違和感の正体を探ろうと右腕を見てみると、ガチャガチャとした金属的な音が部屋に響いた。
「なにこれ、手錠?」
その手錠の先を見てみると鎖で女の子の腕につながっていた。
そしてその少女は……あろうことか全裸だった。
まあ見知った少女の全裸なんだけど。
「茉菜……起きてこの状況を説明してくれないかな」
「んぅ? ねむ~い」
「昨日は夜更かしでもしたのかな? とりあえずこの手錠を外してくれないかな?」
「……ぁ、おはよ、しゅんくん。好き~」
「うんうん、駿君も茉菜のことが好きだよ。だけど風邪ひいちゃうから服は着ようね? あと全裸で抱き着かない。せめて下着くらいつけようね」
「え~寝てるときは全裸が至高なの~それにブラは締め付けられててきらーい」
ふむ、確かに茉菜の顔面くらいある二つの大玉スイカを押し込めるには下着なんて言うものは窮屈なのかもしれない。
寝ている間くらいは自由でありたいのもわかるけどね。
「国民的なアイドル様が全裸で男に抱き着いているなんて知ったらファンたちは卒倒するからお願い、服を着て」
「は~い」
渋々といった感じで茉菜は近くに落ちていたTシャツに袖を通した。
鎖付きの手錠は邪魔だったのかいったん外して……ベッドのフレームにつけなおしていた。
そうか、やはり逃がすつもりはないと。
「さて、それじゃあ何で僕は手錠をつけられているのか教えてくれるかな?」
「あ、そうなの! 茉菜ね! 駿君を監禁することにしたの!」
「そんな明日からダイエット始めるの! みたいなノリで?」
「うん! だって駿君のこと独り占めにしたいんだもん!」
「あ、うん。そっかぁ……それで手錠してるの?」
「そうなの! 駿君が逃げないようにね!」
「……う~ん、まあ可愛い幼馴染に監禁されるなら僕も嫌ではないんだけどね?」
「えへへ~嬉しい? 嬉しい?」
「うんうん、嬉しいな~」
満面の笑みで抱き着いてくる茉菜の頭をなでながら周りを見ると、見たことのない部屋の内装だった。
茉菜とは腐っても幼馴染だし、互いの部屋くらいはわりと高頻度で行き来したことがあるんだけど……完全に見たことのない部屋に監禁されてるみたいだね。
知らない天井ってやつだ。
「ねぇ茉菜」
「なに~駿君」
「ここってどこ?」
「茉菜の家だよ!」
「えっと、茉菜の家にこんな部屋あったっけ?」
茉菜は国民のほとんどが顔を知っているようなアイドルだ。1億年に1人の美少女なんて言われているし、天真爛漫な性格とそこらのグラビアアイドルが裸足で逃げ出すようなスタイルで芸能界でアイドルとしてお仕事をしている。
そのおかげでお金には困っていないので数億円くらいする持ち家や別荘なんかもあるんだけど、こんな部屋は見たことない……また新しい家でも買ったのかな?
「えへへ、家の地下に作ったの~」
「地下室を増築したのか……金持ちってすごいね」
「今日からこの家も駿君のものだし、お金も欲しいならぜーんぶ駿君にあげるよ~」
「むやみに人にお金をあげてはいけません」
「むやみじゃないよっ! 駿君だけだよ~」
僕だけだったらいいとかって話ではないんだけどね。
それは君の稼いだものなんだから。
「だからね駿君。茉菜のすべてをあげるから駿君の全部を頂戴」
「わぁ、それは光栄だね。じゃあさっそく僕の茉菜に手料理をふるまうからキッチンに案内してくれるかな?」
「やった~実は茉菜お腹すいてたんだよね!」
そう言って茉菜はフレームにつなげていた手錠を自分の手首につなげなおして僕の手を引いて案内する。
やっぱり手錠は外してくれないのね~。
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といったそんなこんなで朝ご飯を食べているんだけど。
「あいかわらず駿君の作るご飯はおいしいね~」
「ああ、うん。まあレシピ通りグラム数を計って調理すれば別にこれくらい誰にでもできるんだけど……そんなことより茉菜さん? 何やら外が騒がしくないかい?」
地下なのでそんなに聞こえるわけじゃないんだけど、ガヤガヤとした声のようなものとサイレンのような音も聞こえる……ような気がする。
「……あ~、いつものファンとか記者の人たちだと思う」
「もしかして僕をここに連れ込んだの見られたわけじゃないよね?」
「やだな~見られてないよ~」
「ほんと?」
「ん~たぶん? 駿君が気になるなら追い払ってくるね~」
「いや、別にそこまで気になってるわけじゃ……」
「じゃ、行ってくる!」
「いやいや待って! 僕もいくから! あと服はちゃんと着ていこうね!」
「え? 服はもちろん来てくけど……駿君は来ないで」
「なんで? 別に逃げたりしないよ?」
どうせいつも通り気のすむまで監禁させておけば1週間くらいで解放されるだろうし。
そんな下手なことをする理由がない。
「大丈夫だよ駿君。何かあっても私にかかればちょいちょいだから!」
「それを言うならちょちょいのチョイかな? どっちかというと荒事にならないように僕がついて行きたいんだけどね~」
確かに茉菜の化け物じみた身体能力にかかればそこらのファンどころかどこぞの国の特殊部隊だって素手でひねりつぶせるだろう。
茉菜は原因は不明だけど、生まれつき類人猿最強の遺伝子を持っている。骨密度や筋肉の密度、腱の頑強さが野生生物以上なんだ。
それだけの身体能力がなければ男を一人誘拐してくるなんて普通の女の子にはできないからね。
つまり茉菜は天然のゴリ__
「駿君? 何か今失礼なこと考えなかった?」
「いや~いつも通り茉菜が可愛いな~って思っただけだよ」
「えへへ~そうでしょ! そうでしょ!」
「うんうん」
それも本当。
「でも一応僕もついていきたいな~」
別に何かあったときに僕が役に立つとか立たないとかは置いておいて、ただ何かあったときに力になりたいってだけ。
気持ちの問題。この考え非科学的だなぁ。
「ねぇ、なんで駿君は私について来ようとするの? 私のことが信じられないの? それとも記者の女の人と会いたいのかな? もしかしてファンの女の子をつまみ食いするつもり? ねぇねぇねぇ駿君には私がいるのにそういうの良くないと思うよ?」
茉菜の一人称が「私」の時は感情が高ぶっているときだから、これ以上食い下がるとさらに機嫌を損ねて監禁期間が長引きそうだ。
仕方ない、ここは引いておこう。
「……はぁ分かったよ。大人しくしてるから早く帰ってきてね」
「うん。分かった~駿君もいい子で待っててね~」
それから数分。
大人しく朝ご飯を片付けながら待っていると。
「駿君ただいま!」
「お帰り~いつもより時間かかったね~……ん? シャワー浴びた?」
「うん。外の人たちの雑菌が駿君についたら大変だからね!」
「曲がりなりにもファンの方々を雑菌扱いとは……その発言が知れたら炎上するよ」
「あはははっ炎上したらアイドルやめるからいいもんね~だ」
「そうかい……まあ茉菜はもともとそこまでアイドルの仕事が好きわけじゃないもんね~」
「うん。駿君が頑張ってる女の子が可愛いっていったから始めただけ~別にアイドルじゃなくても駿君は茉菜のこと好きでいてくれるってわかったから別にもういつ辞めてもいいよ~」
「監禁したときに逃げるか逃げないかで人の愛情を計らないでくれないかな~」
「ねっ! そんなことより駿君! 膝枕して! あと耳掃除も!」
「はいはい。こっちにおいで~」
「はーい」
正直耳かきはあまりしたくないんだけど……。
まあ茉菜の気分を損ねてもいいことはないのでやりますけどね。
「じゃあ右耳からね」
「あ、……はいぃ」
「じゃあやりますよ~」
「んっ、くすぐったくて、あっ……恥ずかしい」
「……あの、エロい声出すのやめてくれないかな~」
「あっ……ごめん、口、塞ぐね」
「……あ、うん」
「ふっ、ふぅ~はぁ、はぁ……んぅっ!」
う~ん。一応口をを両手で抑えてくれてるんだけど、漏れる吐息が余計に生々しい。
おかしいなぁ。なんか悪化してる気がする。
「反対向いて~」
「ん……駿君テクニシャンだね?」
「そういうこと言う悪い子には反対側はやりません。ご自分でどうぞ~」
「やだやだ! 駿君にやってほしい~自分でやりたくない~また失敗して鼓膜破ったら痛いもん!」
「確かに一回失敗して鼓膜敗れちゃったけど、あれは茉菜が小学生の頃の話じゃん。きっと今ならちゃんとできると思うよ?」
「やだ! なにがなんでも駿君にやってもらうもん! やだやだやだやだ!」
「うわ~やだやだ虫だ。……わかったよ、しょうがないなぁ」
「わ~い。駿君好き~」
「3秒で終わらせるからね!」
「やだ! いっぱい時間かけてやって!」
「え~だって茉菜エロい声出すんだもん」
「そ、それは、別にわざとじゃない……もん」
真っ赤になって照れてて可愛い。
僕は無心になって反対側の耳掃除を速攻で終わらせるのであった。
耳掃除ってこんなにつかれるイベントだったっけ?
「ねえねえ駿君! 映画見よっ!」
「ん? いいけど……今日は仕事ないの?」
国民的なアイドルである以上、茉菜に休日なんてほとんどないはずなんだけど。
「しばらくはお休み貰ったから大丈夫だよっ!」
「ふ~ん。まあそういう事ならいっか」
ここに運ばれてきた時に着の身着のまま連れてこられてるみたいだから、僕のスマホとかタブレットとか外界と連絡を取ったり情報を得たりできるものは今何ももってない。確認のしようはないけど……茉菜が僕に嘘をつくわけもないし、まあいっか。
「それで? 何の映画を見るの?」
「ゾンビ映画! 勉強になるかな~と思って!」
この子は何の勉強をするつもりなんだろうか。ゾンビの生態? それとも非常時の人間の集団心理とか緊急時の行動とか? それとも銃器の扱いとかかな?
日常生活では役に立たなそうだけど……まあ茉菜が楽しそうだからいっか。
「ゾンビ映画ね~どんなのにするの?」
「サメゾンビが津波とともに襲ってくる奴!」
「ああB級のやつね」
「こんなこともあろうかとDVD買ってきておいたの!」
「今時サブスクでみられるのにわざわざ買ったんだ」
変わってるね~。
「……け、経済回さないとだから!」
「そうだね。茉菜にはお金は使いきれないくらいあるし、日本経済のために貢献しないとだね~」
「そうなの! 茉菜お金使ってて偉いの!」
「そうだね~偉いね~じゃあDVD再生するよ~」
「は~い」
雰囲気を出すために部屋の電気を暗くして再生ボタンを押してみた。
『あのサメがゾンビになって帰ってくる!!』
『全米が泣いた!! ゾンビ×サメ×ディストピア!! 果たして人類に生き残る道はあるんだろうか!!』
以降はあまりにも退屈な内容だったので詳細は省くけど、よくわからない超常現象と非科学的な事象で発生したスプラッタのオンパレードを1時間30分ほど見せられた。
さすがB級。
ある種のファンタジーって感じだった。うん。
「茉菜どうだった?……って寝てるし」
「すぅ……すぅ……」
しかも僕に寄りかかって寝てるから動けないし……あのサメ映画があまりにも退屈すぎて僕もだいぶ眠くなってしまった。
うん。どうせ拘束されてて動けないし、暇だから茉菜の寝顔でも眺めながら僕も少しだけ寝ようかな。
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「……ん?」
少しだけ肌寒さを感じて目を覚ますと……部屋には僕一人だった。
毛布が掛けられていることから、もう茉菜は既に起きているみたいだ。
それに手錠は外されているけど……僕が逃げないことはわかっているから茉菜が外してくれたのかな?
まあ茉菜のことだから純粋に手錠を付け外しするのが面倒くさくなったのかもしれないけど。
「茉菜……?」
あたりを見回してみるもやっぱり茉菜の姿はない。
どこかに出かけているのかな? お腹でも減って何か買いに行ったとかだろうか?
まあ茉菜のことだからそんなにしないうちに帰ってくるでしょ。
と思っていたんだけど。
この部屋の時計が間違っていなければもう21時なのに茉菜が帰ってくる気配がない。
さっき目を覚ましたのが18時くらいだから、かれこれ3時間くらいは経っているんだけど……心配だな。
何かあった?
茉菜に?
いやいや、あの類人猿最強のフィジカルの持ち主をどうこう出来る人間が果たしてこの世にいるだろうか?
う~んでも妙に素直なところもあるから僕に頼まれているとかいえばひょいひょいついていきそうな気もするなぁ。
ちょっと不安だね。
茉菜に怒られるのを覚悟で外との連絡手段を探してみる?
それとも外に出て自分の足で茉菜を探してみる?
なんて思案していると「ガチャ」というゆっくりとした音とともに人影が部屋の中に入ってくる。
そしてその人影の正体はもちろん。
「茉菜……!?」
だったのだが。様子がおかしい。
「駿君……失敗しちゃった。ごめんね」
「何を言ってるんだ茉菜。あ、怪我をしてるんだね! 救急箱はどこ!? すぐに手当てしないと!」
「駿君もういいの」
「もういい? 何がもういいのさ、早く消毒しないと破傷風とか世の中にはいろいろな病原体が……何この傷」
茉菜の腕には噛まれたような傷があって、そこからはわずかに血がにじんでいた。
傷自体はさほど深くはない……けど。
「この噛み傷……人間のもの、だよね?」
「うん、私もきっと感染しちゃったんだ」
「感染? 何の話をしてるの? さっきのゾンビ映画の話? あんなものは……」
「違うのッ!! 日本はもう、終わりなの! ゾンビが至る所にいて、噛まれた人間も感染しちゃうの!」
「そんな非科学的な……」
いや、そうでもないのかな。
茉菜の身体能力だってよほど非科学的だ。
「駿君、今から全部見せるから……ついてきて!」
「ちょっ、茉菜……」
茉菜に腕をつかまれて上階への階段を上がっていくと、C4爆弾すら防げそうな頑丈な扉があり、その先へと連れられて……この家の最上階の5階の窓から、終末を見た。
さっき見たB級映画のように町のいたるところで車が横転し、人の死体が転がり、ゾンビが闊歩していた。
ゾンビは車を素手で止めたり、扉を破ったり、果ては屋根の上に上っているものまでいた。まさに世紀末。
「なんだこれ……?」
監禁される前は普通の日常が広がっていたはずなのに、僕が寝ているたった一日二日の間に何があったの?
「なんでゾンビが……」
「駿君のために、甘いものでも取ってこようと思ったらたくさんのゾンビに囲まれて、避けきれなくて……ごめんね」
「もしかして茉菜……噛まれれると感染するの?」
「うん」
それこそこの世界がもうゾンビ映画の世界じゃないか……それに茉菜はもう感染してしまった?
茉菜もゾンビになるのか?
「いつから? いつからゾンビは増え始めたの? あ、もしかして僕を監禁したのもこれが原因なの?」
「ううん。私が駿君を監禁したのは、純粋に最近忙しくて駿君とあんまりお話しできなかったから。このゾンビ騒動が始まったのはそのすぐあとだよ」
「ならたまたま……運が良かったってことなんだね」
「うん。でも、ごめんね。ごめんね。こんなことになったから、せめて駿君だけは……守ろうと思ったのにッ! 私はいつも肝心なところで!」
「茉菜……」
「だから駿君! 私がゾンビになる前に! 駿君を傷つける前に! お願い……今の綺麗なままの私を殺して! 駿君を傷つけることだけは……それだけは嫌なの! 自分の命より、この世界の何より、あなたが好きなの! 大切なの! だから……だからッ」
「え、やだよ」
「え、ちょ、な、なんで!? 今完全に葛藤しながらも最後の最後で決断して私のこと殺す流れだったじゃん!」
「いやいやいや、そんなことないけども」
「駿君サイコパスだからできるよっ! 私がいつまで正気を保っていられるかわからないんだから! お願い! 早く殺して!」
「人をサイコパス扱いするなんて失礼だなぁ……でもやだよ」
「どうして……私は、茉菜は駿君のために……」
「茉菜が僕のことを世界で一番好きで、大切なように、僕にとっては茉菜が世界で一番大切だから。好きだからだよ」
「あ……えっと、ありがと。で、でも!」
「それに、茉菜はゾンビにならないよ」
「えっ!? それって、どういうことなの!?」
「ゾンビの生態、ゾンビが現れた時期、感染力……そこまで聞いてひらめいたんだ。茉菜、僕を運んでくるときに何か薬品をこぼさなかった?」
「…………あっ」
「だよね、僕は茉菜の身体能力を元に戻すために研究をしているのは知ってるよね?」
「あ、うん。昔、体のコントロールがうまくなかった時期に、駿君にけがをさせちゃったときに、茉菜が普通の女の子みたいにか弱くて誰かを傷つけられない体になりたいって言ったから」
「うん。だから、茉菜の遺伝子からその身体能力のもとになる部分のRNAを割り出して消し去ることができるように研究していたんだ。そしてその途中にできたのが、アレだよ」
道をうろついているゾンビを指さす。
「じゃああのゾンビってまさか……」
「そう、茉菜の遺伝子から作られた薬品でゾンビになったものなんだ。だから茉菜には感染することはないよ。菌自体は体内に入ってるから多少熱は出るかもしれないけど」
おかしいと思ったんだよ。通常の人間の身体能力をいくら限界まで引き出したところで茉菜に傷を負わせることなんてできるわけがない。
でも、茉菜の遺伝子から作られた薬なら?
そしてあの薬は失敗作の中でも最も感染力が強かった。原液なら空気感染し、感染した人間は身体能力の異常な向上とその栄養を補うために動くものなら何でも襲うようになる習性が発現し、噛まれた生き物もまた唾液から感染していく。
そんな恐ろしい薬品だった。
扱いにはもちろん慎重を期してはいたんだけど、茉菜がその薬品をこぼし、僕を誘拐するために研究施設の職員を気絶させたりしていたら……こんな大惨事にもなるだろうね。
「で、でも、もし万が一茉菜もゾンビになってしまったら?」
「もし、億が一そんなことがあったとしても、君を殺してまで生き延びるくらいなら僕はここで君とともに死ぬ……ふたりでいつまでも一緒にいよう、死んでも、ゾンビになっても」
「う、うん! 私やっぱり駿君大好き! 愛してる!」
「いたたたたた! 抱き着くのはいいけど、感情が高ぶって力のコントロールが緩くなってるよ茉菜!」
このゾンビウイルスは感染力が高い……少なくとも日本国内での感染を抑えることはできないだろう。そして今回の事件は明らかに僕と茉菜が引き起こしてしまった人災だ。
もし仮にこれで人類が滅びてしまったとしたら……いや、まあその時はそれでいいか。
茉菜と一緒なら。
僕はやっぱりこう思うんだ。
【国民的アイドルの可愛いヤンデレ幼馴染に監禁されたけど、こんな終末も悪くない】ってね。
これから二人は化け物身体能力のゾンビを相手に地球を救う旅が今始まる! ……かも?