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第24話 よく考えたら王様に会うの初めてだった

「トーヤよ。愛娘であるシャルロットを盗賊から救ってくれたそうだな。この国の王として感謝を述べさせてもらおう」


 謁見の間に招かれトーヤは国王に直接お礼を言われた。その横には美しい女性の姿もあった。王より随分と若そうだが隣の席に座っていることからして王妃であることは間違いないだろう。


(そういえば召喚されてから国のトップに会うのは初めてだったな――)


 お礼を言われながらそんなとりとめのないことを考えるトーヤである。そんなトーヤの腕をキャミーが肘で突っついていた。キャミーもトーヤと盗賊退治に貢献した為、この場に呼ばれているわけである。


「どうした?」

「どうしたじゃない! 陛下がこうおっしゃってくれているのだ。何か返す言葉があるだろう!」


 キャミーがささやくようにそれでいて厳しい口調でトーヤに返事を促す。それを聞いたトーヤは面倒くさそうではあったが王に向けて口を開いた。


「あ、こりゃどうも」


 この返事にズッコケそうになるキャミーであった。


「トーヤ! 貴様失礼が過ぎるぞ!」

「ハハッ、良い良い。なんとも大物の素振りではないか。さすがシャルロットが気に入るだけある」

「はいお父様。トーヤはきっとこの先、伝説になりますわ!」


 拳を握りしめキラキラした瞳でシャルロットが熱弁した。その様子を微笑ましそうに見ている王と王妃である。


「そしてキャミーと申したな。ギルドよりお主も盗賊退治の為にトーヤ殿に協力しシャルロット救出にも尽力してくれたと聞いている。王として父として感謝しておる」

「もったいなきお言葉。陛下にそう言っていただき光栄至極でございます」

 

 キャミーが片膝をつき頭を垂れた。そんな様子を半目で見ていたトーヤであり。


「普段随分と荒っぽい口調なのに今は違うんだな」

「私は本来こうだ! 一体誰のせいだと思っているんだ!」


 キャミーがギロリとトーヤを睨み文句を言った。トーヤは気にもしてないようだが。


「失礼な奴だ! お父様。この女は確かにトーヤと一緒でしたが私を助けるために力を注いでくれたのはトーヤ様なのです。この女はただトーヤに色目を使っていただけ!」

「色目など使ってません! 誤解です心底ありえません!」


 シャルロットの発言を聞き捨てならないとばかりにキャミーは否定した。特に色目を使っていたと思われるのが嫌なようだ。


「俺もしかしてこいつに嫌われてるのか?」

「どう見てもそうでしょう」


 なんとなく隣に立っていたアルマナに聞いてみるトーヤだがアルマナは呆れ眼で答えていた。アルマナからみればキャミーからは嫌われている以外の何者でもないのだろう。


「シャルロット落ち着きなさい。その、なんだトーヤのことを特別視したくなる気持ちもわかるがこういうことは公平にしなければならぬ」

「むぅ、父様がそう言うのなら仕方ないのです」


 シャルロットは不満そうであった。するとそこでアルマナが一歩前に出る。


「お父様。ここにいるトーヤがシャルロットを助けたこと。その功績については認める他ないでしょう。しかし! 聞いて下さいお父様。ここにいるトーヤ、わ、私を騎士たちの前であろうことか半裸にして辱めたのです! これは決して許してはおけません!」

「な、なんと。それは本当かトーヤ?」


 シャルロットの訴えに目を白黒させる王。その視線がトーヤに向けられた。一方でトーヤは顎をポリポリと掻き弱った顔を見せていた。

 

「それはちがうのですお父様。トーヤにはきっと理由があったのです!」

「まぁ、理由はあるといえばあるが」

「ほう。してその理由とは?」

「え、え~と――」


 王に聞かれるも答えに詰まるトーヤ。一応はコボっていいかと聞きはしたし許可もでたのでコンボを決めた。トーヤとしてはそれだけだが流石にこの状況でそれを言ったところで通用するかは微妙なところだ。


 キャミーに顔を向けるがすぐにそっぽを向かれた。自分でなんとかしろとでも言ってるようである。どうやら助けてはくれないようだ。


 これは正直に話さないとダメか、と諦めかけたその時であった。


「失礼致します陛下!」

 

 息せき切った兵士が謁見室に飛び込んできた。これには王も怪訝な顔を見せる。


「今は賓客を迎えているところだがそれは急ぎの用であるか?」


 王が厳しい目を兵士に向ける。すると兵士が片膝をつき理由を口にした。


「緊急の出来事ゆえご無礼をお許しください。しかし陛下、宝物庫に盗賊が忍び込み封魂の宝玉を盗み去ってしまったのです!」

「な、何だと! 封魂の宝玉をか!」

 

 王が立ち上がり目を見開いて言った。その目からは信じられないといった感情が読み取れた――

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