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第13話 格ゲーマーを恐れる盗賊たち

「くそ! 俺たちが捕まるなんて」

「男怖い男怖い男怖い男怖い男怖い男怖い……」

「おいニール! くそ。この鬼畜野郎が! よくもニールを!」

「うん?」

「ヒッ……」

 

 トーヤとキャミーにやられた三人組を縄で縛った後、意識を取り戻させる。キャミーにやられた斧使いは悔しそうにしていた。


 一方でトーヤにやられた女はガタガタと震えていた。どうやら男への恐怖感を植え付けられたようだ。それに憤る標準体型の男だが、トーヤと目が合うと目をそらしてしまった。


「……ふぅ。女の方はすぐに話せそうにないな。誰かさんがやりすぎたせいで完全に怯えてしまっているからな」

「お前さっき女だからって手加減するなみたいなこと言ってただろう?」

「……そうだが情報を聞く必要あるんだから限度ってもんがあるだろう」


 キャミーが苦い顔で答えた。トーヤとしては全員コボっていいと思っていたのに結局一人キャミーにとられたこともあり消化不良感が凄まじい。


 だがよく見るとたしかに女はガタガタと震えていてまるで捨てられた子犬のようだ。


 さすがのトーヤもこれを見ると相手が盗賊とは言えちょっと悪かったなと思えてしまう。


「ま、でも盗賊なのは確かだしあまり感情移入しても仕方ないな。喋られるあんたでいいから盗賊の情報を教えろ」

「ふざけるな。腐ってても俺たちは仲間は売らねぇ」

「そうか……トーヤ。そんなにコボりたいなら好きにしていいぞ」

「おう! そうこなくちゃな」

「は?」


 キャミーが斧使いの縄を解いた。拳を鳴らしてトーヤが近づくと男の額から冷や汗がダラダラと湧き出てくる。


「わ、わかった! 言うからそいつを俺に近づけるな!」

「最初から素直にそう言えば……」

「オラァ!」

「ゴボォ!」


 してやったりと微笑を浮かべ語るキャミーだったがそのときには既にトーヤの小パンチが男の顔面を捉えていた。


「は? ちょ! 待てストップ!」

「おらおらおらぁあ! 屈小キックキックキックッキックキックキックキックキックキックキックキック!」

「ぎゃぁあぁああ! いてぇええ! 足がぁあぁあ!」

「はっはっは~! やはり重量級はよく屈小キックがめり込むぜ!」


 すっかり格ゲーモードに入ったトーヤが更に屈小キックを連打する。重量キャラはノックバックが少なくその分屈小キックの連打がより多くヒットしやすいのである。


「オラオラオラオラ! キックキックキックキックキック」

「ヒギィイッィィィィイィイィィィイイ!」

「やめんかこの馬鹿!」

「グボォ!」


 キャミーが屈小キックを当てることに夢中になってるトーヤの顔面に蹴りを入れた。流石に対応しきれずトーヤがうめき声を上げゴロゴロと地面を転がる。


「お前、何しやがる!」

「貴様、少しは空気を読め! 今のはどう考えてもお前を理由に話を聞き出す流れだろうが!」

「知るか! コボれと言ったのは貴様だろう!」


 キャミーが頭を抱えた。まさかここまで話が通じないとは思わなかったようだ。


「駄目だ。こいつ白目をむいて完全に気を失ってる。後足首が砕けてる」

「あの程度で情けないな」

「……あんな執拗に蹴りを連打する奴初めてみたぞ……」


 キャミーのトーヤに向ける目が白い。トーヤとしてはコンボ数を稼ぐための手段の一つでしかなかったがリアルな世界では当然ダメージが怪我として残る。


 結果的に斧使いの意識を奪い足首を砕いてしまったわけだ。


「どっちにしろこっちからすぐに話を聞くのは無理だな。となると……」

「ヒッ!?」


 女も震えっぱなしでありこうなってくると残されたのはトーヤのいうところの標準型な盗賊一人であった。

  

「話を聞かせて欲しいんだが――」





「割とあっさり話したな」

「まぁあれだけ散々仲間がひどい目にあってるのを見ればな」


 結局残った標準型の男は知っている情報を全て教えてくれた。もっとも三人は盗賊の中では下っ端の方な為、そこまでの情報を知っているわけではないとのことだ。


 それでもアジトが変わっていないこと。そろそろアジトを変える話があったこと。潜んでいる盗賊の数は三十人程度で頭は体の大きな戦斧使いで名前がロックヘッドということであった。


「よし。頭の名前もわかった。ただ人数が多い。ここからは慎重に行くぞ」


 特にトーヤに言い聞かせるようにキャミーが言った。盗賊が潜んでいる洞窟は既に目の前にある。


 この中を進めば漆黒の暴君の盗賊と遭遇することとなる。


 もちろんそれを一人一人相手するわけにはいかない。こちらにはキャミーとトーヤの二人しかいないのだ。


 そうなると大切なのは出来るだけ他の盗賊に見つかることなく頭であるロックヘッドの下へ向かうことなのだが――何故かトーヤに不満しか感じないキャミーなのだった……

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