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第12話 格ゲーマーにとって盗賊はデザート

「「お、お前は鬼かああああああぁァッ!」」

「は?」


 女盗賊は倒した。正直まだまだやりたりなかったトーヤなのだが、そんな彼に向けて残りの男二人が大声で叫んだ。


 そしてなぜかわからないが仲間のキャミーの視線も冷たい。


「……トーヤ最低だな」

「ちょっと待て! なんでお前にまでそんなこと言われなあかんのだ! 大体コボりやすそうな相手からコボるのは常套手段だろう!」


 そう言われてもトーヤの常識は異世界の人間には通じない。もっとも戦闘において女だから狙わないなどと甘いことを言っていても仕方ないのだが、それにしてもやり方がエゲツないと敵からも味方からもひかれてしまっているトーヤである。


「くそ! ニールの仇だ!」

「あいつニールって言うのか」


 名乗ることもなく脱衣エンドを迎えたニールを横目に向かってきた大柄な盗賊の一撃を避けるトーヤ。勿論スキルによる避けだ。


 二人の盗賊は斧と剣で攻撃してくるが、格闘ゲームをやり込んだトーヤには盗賊の動きが手にとるようにわかった。

 

 格闘ゲームも極めると1フレームを見極められるか否かが勝負の分かれ目となる。格ゲーにおける1フレームとは60分の1秒即ち0.0167秒でありトーヤはこの1フレームを完全に見極めることが出来た。


 そんなトーヤからすればリアルとなった異世界の盗賊の動きなどスローモーションのように思えたことだろう。例えば格ゲーの速度を大きく上げた後速度をもとに戻してプレイするとスローモーションのように感じるものだがあれと同じ原理である。


 ましてトーヤは地球でも日夜トレーニングは欠かさなかった上、こちらで得た格ゲー仕様のステータスがある。フレーム眼も備わった彼にとってこの程度の盗賊に負ける道理がないのである。


「く、くそ! だったら見せてやるスキル! 二段斬り!」

「ほう、面白い!」


 先ず一撃目は避けで躱すがすぐさま二段目の攻撃が迫った。


 文字通り二段構えの攻撃だ。しかも最初は上段からの振り下ろし二度目は横薙ぎの中段攻撃である。


 格ゲーとしてみれば二段目は屈んでいるとダメージを受けてしまう。しかしトーヤは避けることもなくほぼ棒立ち状態だ。


「はは、全く反応できないか!」

「いやこれでいい」


――ガキィィィィン!


 棒立ちのトーヤをあざ笑う。しかしトーヤに命中した筈の剣が止まりその顔が驚きに変わった。


「ば、馬鹿などうして!」

「これがフルガードだ!」


 トーヤが叫ぶ。これもKBFのテクニックの一つだ。相手の攻撃をギリギリまで引きつけてガードするとフルガードが発動し相手の攻撃を防ぎ切る。


 フルガードの特徴は本来必殺技等をガードすると体力が僅かに削られるがフルガードであれば削られること無くガード可能。その上フルガード後はガード硬直が一瞬で切れる。


 故に一方的に反撃が可能なのだ。


「行くぞ! ラッシュスリー!」


 二段攻撃をガードされ隙が生じたことで剣持ちの盗賊に小中大の連続攻撃ヒットする。相手は体型的に標準タイプといえた。


「キャンセルシュートコンボ!」


 三発目のヒット後にキャンセル必殺技でシュートコンボを炸裂させた。大で当てたため三発の攻撃がヒットし合計六ヒットとなった。


「ふむ。やはり標準タイプは安定してコンボが入るな。こういう基本的なコンボも初心に帰るという意味でいいものだ」

「お前はまたわけのわからないことを……」


 安定したコンボで盗賊を打倒したトーヤ。だがキャミーの目は冷たい。


「ふふ、さて後は残った重量キャラを――げぇええぇええぇえ!?」


 残った盗賊を見るなりトーヤが素っ頓狂な声を上げた。何故なら最後に取っておいた斧持ちのキャラ(盗賊)は既に倒されていたからだ。

 

 勿論キャミーの手でだ。


「おま、最後に取っておいたデザートに何してんだ!」

「は? いや、お前が二人相手取ってる間に、残った一人を片付けておいたあだけだろう」

「何がだけだ! 大体約束しただろうコボらせると!」


 何故か涙を流しながらトーヤが訴えた。キャミーには戸惑いしかない。


「だ、だから二人はお前がやっただろうが! 何が不満なんだ!」

「不満に決まってるだろう! 折角こうしておあつらえむきに女キャラ、標準キャラ、重量キャラの三タイプがやってきたというのに!」


 トーヤは最初から三人に目をつけていた。タイプ変わればコンボも変わる。それがKBFの醍醐味でもあった。コンボに命をかけているといっても過言ではないトーヤにとっては譲れない点なのである。


「いいか? 重量キャラには重量キャラのコンボの醍醐味というのがだな」

「知るか! 大体目的は盗賊団の壊滅だ! こんなところで時間を掛けている場合じゃないのだからな!」

「くそ、逆ギレかよ!」


 憤るキャミーに不満たらたらなトーヤなのだった――

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