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絵馬と初詣
私にとっての初詣は、彼にとっての初詣ではなかった。
深夜に友達とお参りして来たらしい。「最後だから」とよくわからない言い訳。付き合って長いし彼の事は信頼はしてる、友達思いなのも彼の友達がいい人達なのも知ってる。
なにより新年早々喧嘩したくなくて、愚痴は飲み込んだ。
けれど……
「絵馬? 夜に書いたから、俺はもういいよ」
一人で行って来な、と言われてさすがに腹が立った。
願い事を変えようかと思ったがやはり好きな気持ちは変わらなくて、
『ずっと一緒に居れますように』と書いた絵馬を掛所にぶら下げる。
その時、よく知ってる筆跡が目についた。
答え合わせをするように、願い事の横に彼のファーストネーム。
驚いて後ろを振り返ると、気怠そうにスマホをいじる彼の姿。
絵馬にかけた願い事を私に見られるなんて、思ってもいないだろう。
『プロポーズが成功しますように』
そう書かれた絵馬に背を向けて、「走ると転ぶぞ」と笑う彼の元へ駆け寄った。