ルシュタット村
ドカカッドカカッ。
規則的な蹄の音が街道に響いている。2頭の馬が縦となり、後方の馬に乗った男が前方を走る馬の乗り手に声をかける。
「殿下…!逸る気持ちは分かりますが、そろそろ馬も限界でしょう!休ませねば王都まで持ちませんよ!」
「……。」
もちろん人間もですがっ…!と付け加える。前方の男は、無言だが答えなど1つしかない事を理解していた。いくら鍛え上げられた軍馬とはいえ、ほぼ走り通しだ。そろそろしっかりと休ませねば取り返しのつかない事になる。
(分かっている…!分かっているが…!)
「殿下…!事のあらましは竜にて先に王都へ伝達してあります!ですから…!」
「あぁ!分かっている…!この先のルシュタットで休ませよう!」
苦渋の決断だが仕方がない。(村までもうひとふんばりしてくれよ…!!)
「ハッ!!」
気持ちを伝えるように馬へ声をかける。
このまま行けば、日が暮れる前にはルシュタットへ到着出来るはずだ。今夜はゆっくり休ませてやれるだろう。
「はぁ〜〜。やっと村が…!」
「伊織、まずは話合ったとおり市場調査と宿の確保よ!」
は〜い。と返事をするが、歩いたからかお腹が空いてきた。
「何か小腹を満たせる物はないかな〜。」
丘を降り、ようやく集落の近くまで来たが、遠目にみたよりも、色々揃っていそうな規模の町だった。
これなら、武器や旅に必要な小物も揃えられそうだ。装備を整えるための資金は、光の玉が持たせてくれた布袋に入っていたのだが、いかんせんこの世界の物価事情が全く分からない。
「ルシュタット…村?って読むのかな?」
「見た事もない文字のはずなのに、読めるのが不思議ね…。」
村の入口にある木を組んで造られた門が、私達を出迎えてくれたのだが、門に書かれた村の名前であろう文字は見た事のない文字にも関わらず、何故か読めてしまった。
なるほどこれがチートになるのかな?などと考えながら、2人は村の中へ足を踏み入れた。