リースの答え
「何とも信じ難いお話ですね…。」
国立図書館の司書リースは、セドリックの話がこの国にとって前代未聞の出来事だという事はすぐに理解した。
リーシェル湖から引かれた水路の水位低下。それに続くように、獣やモンスターの凶暴化、襲撃。
そもそも水位低下など、これまでどんなに日照りが続こうとも、水位が下がった事など聞いたことが無い。
それに加えて、獣やモンスターによる襲撃…。
モンスターというものの中には、血の気の多い種族もいる事は確かだが、そのほとんどとは敢えて探さない限りは出会うことすら稀中の稀だ。
ましてや、獣の凶暴化など…。
セドリック達が私を訪ねてきたのは、私が調査していた災いや光の柱、6龍の伝承の中に、今回の異変に似通った記述が無かったかという事と、異変の調査にあたって助言して欲しいとの事だった。
「まず、私が学生の頃より災いについて調査していたのは何故かという話をせねばなりません。」
これを話すのは、学生の頃以来になるか…。
「これを話すと、皆が私を変人扱いするのであまり話をしないようにしておりました。」
しかし、セドリックの話を聞いた後ならば、そう受け取られはしないだろう。
「私は幼い頃より他人よりも感受性が高く、同じ夢を繰り返し見る事がありました。暗い空間に浮かぶ光の玉より呼びかけられ、世界を救う手助けをせよ、と。再び暗雲が空を覆い、発展した国々の衝突は以前に起きた災いの時よりも更に激しいものとなる。その衝突はいずれ星をも侵し、全ては失われる。と、そう告げられました。」
今度は、アルバート様とランスロット様の方が、信じられないと言った顔になる。セドリックには…。昔1度話した事があったか…。
「最初は私自身も、ただの夢だと思っておりました。しかし、目が覚めてからもどうしても気になってしまい…。独自に伝承を調べる事で何かあの夢の答えが見つかるのではないかと今日まできた次第です。
が…、先日新たな夢を見たのです。」
3人が目を見開く。
「時は来たれりと…。」
部屋が鎮まりかえり、窓の外の音が微かに聞こえてくる。
「しかし、それが一体何を示すのか…。それはまだ分かりません。」
今回の異変が、災いの予兆だとするならば、
「異変の調査の件、喜んでお受け致します。暫しお時間を頂きたい。それと図書館の禁書庫を開ける許可を。これまでに目にした事の無い事実があるとするならば、そこにこそ隠されている可能性は大いにあります。」
セドリック達は、2日後に城で再び会議を開く事、城へ戻り次第、禁書庫の解錠の許可を陛下より必ず頂き、追って鍵と共に使者を遣す事を約束し、城へと帰って行った。
これまで時が止まったかのようだった。
夢の謎と、その答えが、今彼らの訪問を持って動き出した。
大きな畝りが、国を、世界を…。
その日の夜、禁書庫を解錠する許可を記した書状と鍵持った龍が私の元へと舞い降りた。
会議まで2日、禁書庫に籠り調べねば…。
少し欠けた月の光が、禁書庫の鍵を鈍く光らせ私の心をざわつかせる。




