名も無き少女の罪と罰 6 飢餓と麻薬
孤児院での様々な責めを受けた後、少女はいつしか地獄をさまよっていた。
悪魔のような子供亡者達から解放されたが、今度は空腹に襲われていた。
「おなか、すぃたぁ…た、たべもの…」
集落を見つけては食べ物を恵むがどこも金よりも貴重な食料を子供に渡す余裕などなかった。飢えを凌ぐために着ていたボロ布や石や砂など口に入れた。
餓死を何度も繰り返し、空腹に耐え切れず集落の食糧を盗むが。
「てめぇ!! そのパンを返しやがれぇ!!」
「きゃぁ!! ご、ごめんなさぃ!! 」
大人にすぐに捕まりせっかく手にしたパンを没収されてしまった。
少女は空腹で何かください。と涙ながらも必死に大人達に訴えるが。
「ふざけんぁ!! 俺の子供だって、毎日腹空かせてんだぁ!!」
「どこの子供か知らないけど、もう盗みができないようにしてやる」
空腹の恐怖が募り大人達は少女を取り押さえる。そして、二度と盗みができないようにと、斧を持ち出し少女の両腕を切り落としてしまった。
「あっ…あ…う、腕が、腕がぁ…」
集落から追い出された両腕を失った少女。何もつかめない体になりまた地獄をさまよう。
「み、水…あぁ、だれか、助けて…水…あ、あぁ…」
いつの間にか少女は地獄の砂漠に迷いこんだ。灼熱の熱さの中水を求め歩くと、赤い花がたくさん咲いているオアシスが見えて走る。
「み、水だぁ…ごきゅ!! んぐ!!」
幻ではなく本物の水に顔をつけて飲み始める。何十年かぶりのまともな水は少女にとって高級ワインに匹敵するほど美味だった。
「ぷはぁ…あ、あれ…た、食べ物だぁ!!」
水をたっぷり飲んだ少女の周りにいつの間にか肉や野菜、果物などが並んでいた。
両腕のない少女は歯を立てて巨大な骨付き肉にかぶりつこうとしたが、風が吹くと肉が遠ざかってしまった。
「あぁ!! ま、まって!! お願い!! 食べさせてぇ!!」
風が吹き続け、肉が遠ざかっていく。他の食べ物に目もくれず、少女はひたすら肉を追いかける。肉は地面に落ちても、少女がかぶりつこうとすれば必ず風が吹き、肉が逃げていく。
「あ、あれぇ!! ま、まってよぉ~~お肉、お肉ぅ~~」
肉を追いかけていくうちに少女の様子がおかしかった。目がうつろになり、口から大量の唾液を流しながら肉を追いかけていく。
「まって~~きゃぁ!!」
肉を追いかけるのに夢中で足に何かが当たり転んでしまった。
そして、足に当たった何かがしゃべり出す。
「きゃはっ!! いだぃ!! いだぃ!! だぁれぇ? ぶつかってきたのは?」
「ひ、ひぃ!?」
地面に埋まっていた女エルフが狂い笑う。この女は生前、ある聖女と手を組み麻薬であるケシの花粉を混ぜたポーションを売り人々を不幸に陥れたキーリスだった。
「あれぇ? ヘルぅ? ひさしぶりぃ!! また、麻薬ポーションを買いにきたのぉ? そうだぁ!! この間、買った奴隷たちだけど~~もう役に立たなくなったから、新しいのちょうだぃ~~」
女エルフは少女を誰かと勘違いして話す。
一方で少女は彼女の言っていることがわからず戸惑うが、飛んでいった肉の事を思いだし辺りを見渡す。
「あっ、あった!! 肉、にくぅ!!」
おかしな声を上げながら両手がない少女は地面に顔を伏せ今度こそ肉にかぶりつく。
「ぐぇ!! な、なにごれ…ぐぇ!!」
口の中で葉っぱの味が広がり少女が肉と思っていたのはオアシスにあった木の葉っぱだった。
「あ、あれぇ~~肉…肉はぁ~~あぁ、あんなところにも食べ物があるぅ!!」
オアシスにあった赤い花のケシの花粉により少女の頭もすでにやられていた。
砂漠の熱さも相まって幻覚を見始めただけでなく、切られたはずの両腕があると思い込んでしまい料理を取ろうとしたがもちろん取ることができない。
「あ、あれぇ!? な、あんでぇ!! なんで取れないの!? あぁ、お腹すいたぁ!! 食べたい!! 食べたいのにぃ!!」
肘だけになった両腕で必死に砂をかきむしる。どんなに砂を掘ろうが水も料理も出るはずもない。
「あっはは!! 何? 穴掘り遊び? いいわねぇ!! 私も穴の中でお家を作りたいわぁ! お薬作ってお金稼いで、また奴隷売ってちょうだぁぃ~~」
そばでキーリスがおかしな笑い声を上げながら干からびて何度も死ぬ中、死ににくい体質の少女は汗と涙が干からびるまで砂を無駄に掘っていた。




