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復讐の聖女と邪悪な神 5 ヘルは全てを失う

 話は少し戻りヘルがジャンヌを殺害した頃。


 地獄中の空や鏡がヘルとジャンヌの姿を写していた。

 

「なんでって…? てめぇが私の起こした戦争を止めやがったからだよぉ!! せっかく、現世で最高の暇つぶしを見つけたのに私の楽しみを奪いやがって!! だから、私はお前の全てを奪ってやったのさぁ!! みぃんなから「悪女」「悪魔」って呼ばれて石を投げられ、燃やされてさぁ!! あの時の顔はほっっっんに最高だったわ!! きゃっはははは!!」


 ヘルの本性が現れ地獄にいた罪人たちは気づかされた。

 戦争を起こした元凶の存在と、戦争を止めてくれたジャンヌへ悪意をぶつけてしまった自分達の罪を知った。


 この女のせいで自分は地獄に堕ちたのだと。そして、ヘルは天国を自分の物にしようと天国への階段を破壊してしまった。


 ヘルの本性を知り、罪人たちの心は一つになった。


 この女だけは許さない、自分達と同じ苦しみを与えてやると。


 道連れの執念と憎しみに反応して地獄が揺れ動いた。


 あらゆる責め苦を受けていた罪人たちが天国への階段があった場所へ集められた。

 

 そこに、上から落ちてきた亡者の爪。爪に引っかかっていた一本の糸を罪人たちはつかんだ。



「ひぃぃ!? な、なに!? は、はなせぇぇぇ!!」


綻びだらけの聖なる衣から一本の糸が下に垂れ罪人たちが引っ張る。


 ジルとシーマの最後の抵抗によりできた一本の糸。

 一人だけ天国へ行こうとするヘルを道連れにするために決して罪人たちは決して離さない。


「この、ゴミどもがぁぁぁ!! 汚れた手で、私の衣に触れるなぁ!!」


 綻びから出た糸を断ち切ろうと魔法の杖から漆黒の太陽が出る。

 

 地上にいる者達をジャンヌや亡者達と同じように消そうとするが、魔法の杖の皹が広がってしまい杖は砕け散ってしまった。


「うぁぁぁ!! あつっ、うぁぁぁぁ!!」


 杖が砕け漆黒の炎が暴発し衣を燃やす。


「あ、ぁぁぁ!! 私の杖が…ひぃ、熱い!! あつぃ!!」


 魔法の杖から生み出された強力な炎が魔法も毒も防ぐはずだった聖なる衣を焼きヘルは慌てて衣を脱ぎ捨てた。

 

「あっ、あ…」


 自身を守る盾も矛も失い立ち尽くすヘル。

 

 さらに、ヘルが立っている場所から頂上までの天国への階段の崩壊が始まった。


「ふ、フライ!! って、な、なんで魔法が使えないのぉ!? ひ、ひぃぃぃぃ!!」


 なぜか魔法を使うことができず、地獄の神であるはずのヘルは悲鳴を上げながら崩れていく階段を駆け上がる。だが、階段の崩壊の方が早くヘルが必死に走っても頂上には間に合わない。

 

(くそぉ!! なんで!? なんでぇ!! 地獄が私の言うことを聞かないぃ!! あの女のせいなの? くそぉ、とにかく天国、天国にぃ!!)


 転移玉を必死に握りしめ階段の頂きにある天国への入り口を見た。

 

 転移玉の効果は頭の中に浮かんだ所ならどこでも行ける。だが、一度も行ったこと見たこともない場所や、世界と世界への行き来まではできない。


 階段が全て崩壊する寸前、ヘルの姿が一瞬消える。

 次の瞬間にはヘルは階段の頂にある天国への入り口前に現れた。


「はぁ、はぁ!! あっははは!! 天国は…天国は、この世界は私のよぉ!!」


 天国の入り口である光へ手を伸ばすヘル。

 

 だが、ヘルは光をすり抜けてしまいそのまま下に落ちた。


「え? はぁ!? な、なんでぇ、いやぁぁぁぁ!!」


 階段が完全に崩壊してしまいヘルの立てる場所もなくなった。

 

 転移玉の力で入り口まで移動するもまたすり抜けて落ちていく。


「なんでぇ!? なんでぇ天国にいけないんだよぉ!!」


 ヘルはなぜ自分だけが天国へ行けないのか嘆き叫んだ。


 すると、天国への入り口に多くの人影が見えた。人影の中には天国にて添い遂げたジルとシーマ。さらに、地獄の闇にて消滅したシスターやリグ、ネロとアルの姿があった。


「なっ!? なんなんだよぉ!! お前らぁ!! 私を天国にいれろぉ!!」


 彼女たちは無言で落ちていくヘルを見つめた。

 

 言葉を発してはいないが彼女たちの目は「おまえだけは天国には行かせない」とヘルに対し冷たい目をしていた。


 そして、地上にいる罪人も「お前も道連れだ」「天国へ行かせない」と声を上げた。


「う、うぁぁぁぁぁ!! いやだぁぁぁ!! こんな、こんな何もない世界なんていらなぃ!! いやだぁぁぁぁ!!」


 魔法が使えなくなったヘルは転移玉を握りしめ何度も、何度も入り口に転移するがすり抜けて落下を繰り返した。


 地獄と亡者に反逆され、天国にも行けない。

 

 しかも、地上にはヘルが落ちてくるのを待ちわびている膨大な数の罪人がおりもはや逃げ場などなかった。


 天国へ行きたい、こんな世界は嫌だと喉が枯れるまで叫ぶ憐な女。

 

 やがて千回ほど転移を繰り返しついに転移玉が砕けた所で、ヘルは罪人たちに埋め尽くされた地上へと落ちた。


「あぁぁぁぁぁ!! やめろぉぉぉ!! 私は地獄の神だぞぉ!! おまえらなんかぁ、おまえらなんかぁぁぁ!!」


 罪人たちにより様々な暴力を受ける中、天国への入り口が消えていく。


「うぁぁぁぁ!! おねがぃ!! たずげでぇぇ!! わたじを、天国へ、つれでってぇぇぇ!! あがぁぁぁぁぁぁ!!」


 天国への入り口が完全に塞がりヘルは絶望の声を上げた。

 

 地獄に裏切られたせいでヘルには抵抗する力がなく罪人たちから逃げることができなかった。


 地獄の神であったヘルは自分の起こした罪により生まれた罪人たちになぶり殺され悲惨な罰を受けた。


 ヘルが死ぬと再び地獄が揺れ動き、罪人たちは再びそれぞれの裁きを受けていた場所に戻された。


 そして、地獄にて新たな罪人が生まれるのであった。



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