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復讐の聖女と邪悪な神 3 反逆する地獄と亡者


この世界は3つに分かれていた。

 一つは生きている者が住まう現世。


二つ目は神が存在し現世にて善行を積んだ者や理不尽により生を終えてしまった者を暖かく受け入れる天国。


そして三つ目は、罪を犯した者が未来永劫逃れられない生と死を繰り返す地獄。


天国には神がいるように、地獄にもかつて神がいた。

 

 地獄の神は現世で罪を犯した者にふさわしい罰を与えるべく地獄の全てを思いのままに作り替えるができ、神すらも滅することができる地獄の闇を自在に操れた。


罪人たちに「己の犯した罪からは決して逃れられない」のを思い知らせるべく地獄の神はずっと一人で地獄を管理していた。

だが、罪人を罰していくうちに地獄の神は「飽き」を感じていた。


生と死を繰り返す罪人の無惨な姿や醜い声を聴き続けるのに退屈し「堕落」した。

退屈を無くすために地獄の神は人族の女の姿になり現世へと行き、贅の限りをつくした。


 美味しい食べ物やワインを暴食し、性欲を満たすために可愛らしい少女を金で買った。さらに、自らを着飾るためにハーピィ達を狩らせ、自分のお気に入りの家を建てるために湖に住む邪魔なウンディーネの水を汚し、ウンディーネ達を追い出した。

 

 国や人を荒し欲望の限りを尽くしてもまだ心が満たされなかった。女はさらなる「刺激」を求めた。5種族間の仲を悪くさせるようにあらゆる陰謀を行い、互いを憎み差別し合う「暗黒時代」を作りだした。


人々が無様に殺し合う、非力な物の醜い叫びに心地よくなる女。自分の手で起こした戦争を思う道理に動かし満足していたが、聖女が誕生して自分の起こした戦争を終わらせられ聖女を憎んだ。


せっかく楽しいんでいた所を邪魔された女は聖女を陥れた。

聖女の周りにいた国王や仲間たちを金や権力で誘惑し、最終的には聖女を火刑で焼き殺した。


その後、聖女が地獄の力を使い現世を地獄に堕とした。

それでも地獄の神である女は地獄の中でも亡者に襲われることもなく、地獄でも自らの欲望を満たすためにさまよった。


 そして現世も地獄も「飽きた」女はついに天国にまで欲望の手を伸ばし始めるが、女の自ら犯した罪と罰の報いが始まろうとしていた。


 

ジャンヌが消滅し地獄が怒りに震えていた。


かつて地獄の神でありながら堕落し現世へ逃げたヘルと違い、罪人を裁いてなお自分の怒りと復

讐心の罪と死の罪を受け入れたジャンヌを地獄が真の主と認めていた。


そして、ジャンヌを滅ぼしたヘルに向け地獄が反逆の牙を向けた。


「くっくそぉ!! な、なんで!? じ、地獄が…私の言う事を聞かない…」


 地獄自体が激しく揺れ、天国への階段にいたヘルは魔法の杖で体を支えた。

 自分の一部であったはずの地獄に反逆されてヘルの表情から余裕がなくなっていた。


「くそぉ!! あの女!! 私の地獄に何をしたぁぁぁ!!」


 既に地獄の闇により魂も肉体も消滅したジャンヌに向け吠えた。

  

「いいさぁ!! 天国であぐらをかいてやがる神どもを殺したら、あの女に関わった奴らを全部グチャグチャにしてるぅ!! あっはははは!! 」


 地獄が言う事を聞かず怒りのあまりに醜い顔を浮かべ叫ぶ。

 だが、堕落した地獄の神に向け地獄の亡者達が反逆の爪を立てた。


「「ころせぇ、ころせぇ」」


「「みにくい、にせものの聖女を」」


「「ころせぇ」」


 天国の階段の周りにいた亡者達が一斉にヘルを襲い始めた。


「あ、あんた達!? わ、私に触れるなぁ!! くるなぁ!!」


 亡者達に囲まれるヘル。亡者の強力な魔法や爪がヘルに向けられるが、聖なる衣のせいでヘルに傷一つすらつかない。


「このゴミどもがぁ!! 私の言う事が聞けないなら!! 死ねぇ!! 死ねぇ!!」


 魔法の杖を掲げると巨大な火の玉が生まれた。さらに火の玉に地獄の闇が付加されて、漆黒の太陽ができ亡者達を消滅させていく。


「この役立たずのゴミどもがぁ!! あの女に何かされたかぁ!? 私は地獄の神だぁ!! お前らは私の道具にしかすぎねぇんだよぉぉぉ!!」


ヘルの美しかった顔が歪む。声も老婆のように呻き声のように変わりヘルの起こした戦争や差別の被害者たちの負の感情や記憶から生まれた亡者達は消えながら恨み言を吐き続けた。


「「わたしたちから、なにもかも、うばったおまえを」」


「「ゆるさない、ゆるさない、ゆるさない」」


「「てんごくへは、いかせない…」」


ヘルに爪先すら触れることができなくても亡者達は突撃する。

地獄と亡者は自分達を捨て堕落したヘルを天国へ行かせてはならないと抵抗した。


だが、魔法の杖により強力な力を得たヘルは漆黒の太陽を出し続けた。

突撃した亡者達は消滅していく。

 

 「このぉ!! いい加減にぃしろぉぉぉ!!」


 地獄と亡者に反抗され怒りにまかせて魔法を振るっていてヘルは気づいていなかった。

 亡者達を蹴散らさずにさっさと転移玉で天国へ向かえば済む事を。


 しかも、魔法の杖の皹がどんどん広がっていた。さらに、亡者達が漆黒の太陽に焼かれながらも 聖なる衣にぶつかり衣にも綻びができていた。


「「じゃ、んぬ…」」


「「ジャンヌ…」」


 ジルとシーマの亡者の瞳から涙を流した。

 ヘルの呪縛から解き放たれた二人の亡者は一つに合わさった。



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