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復讐の聖女と邪悪な神 2 ジャンヌの復讐

「あれ? 久しぶりねぇ~~聖女ちゃん? へぇ? 生きてたんだぁ?」


 目の前に出現したジャンヌを見て小馬鹿にしているヘル。


「やっと見つけましたよ…ヘル」


 ジャンヌは怒りに満ちていた。生前処刑される前に母がよく手入れをしてくれた大切な長い髪を切り落とした時の光景が頭に浮かぶ。そして、ヘルが教会を支配して多くの少女の人生を奪ってきた。


「ん~? 私を探していたの? 私、あんたには用はないの、早く天国に行きたいからそこどいて。しっ、しっ」


 ヘルはしっしっと手を払う。


「グオウやガエルと共謀し国や人の未来を奪ってきたあなたを…私は決して許しません」


 ジャンヌの手には地獄の剣が握られていた。


「はぁ? あのエロおやじと魔法オタクと共謀? 私をあんなクソ人間と一緒にしてんじゃないわ…」


「はぁぁぁぁ!!」


 ヘルの言葉を遮り、ジャンヌが地獄の剣でヘルの体を貫いた。


「ぐぁぁぁぁぁぁ!!」


「いくら聖なる衣であっても地獄の闇までは防げない…衣の力を過信してしまった自分を呪いながら消えなさい」


 ジャンヌは冷たい目で叫ぶヘルを見つめる。

 

「きゃ、きゃぁぁぁ!! きえるぅ、きえるぅ!!」


「終わった…これで、すべて…」


 復讐を終えて一息ついたジャンヌ。だが、ヘルの顔に笑顔が浮かんだ。


「きえる~~な~んてねぇ♪ きえるのはあんたよ、小娘」


「なぁ!? そ、んなぁ…」


 ヘルの体は全く消滅していなかった。ジャンヌの持つ地獄の剣はヘルの体を貫いておらず、砕け散っていた。


 逆に地獄に受け入れられたはずのジャンヌの体が地獄の闇に消されていく。


「な、なんで…?」


「はぁ? なんでって? 地獄は私の一部だからよ。ジャンヌちゃんはおばかでちゅね~^地獄の力を使えるからって、地獄の神を殺せるなんて…ほんと、ばっっっかじゃないの!! あっははははは!!」


 ヘルの言葉にジャンヌの顔が絶望に染まった。

 ジャンヌは地獄の力を使うことができる。だが、地獄の神であるヘルは地獄そのものであり力の差が大きすぎた。

 

「あっははは!! その顔、最高!! みんなの前で処刑された時と同じ顔してるぅ!! まさかもう一度見れるなんて!! あっはははは!! どう? 地獄まで堕ちたのに、復讐できないまま無駄に消えていくのは? あっはははは!!」


 ヘルは虚空に手を伸ばすと「あと、これも頂いとくわ」と言い、転移玉と魔法の杖がヘルの手に現れた。


「そんな…」


「あぁ~あ、馬鹿王ブオウの手汗で玉が汚い。うぁ、杖が血生臭い…杖の力を引き出すのにいったいどのくらい魔法の血を吸わせたのよ…」


 薄汚れた転移玉とわずかに皹が入っている白い杖に悪態をつきながらヘルの目がジャンヌと同じ深紅に染まる。


 ヘルの瞳には巨大豚に油で揚げられから揚げにされているブオウと水槽で血を吸い続け膨脹しているガエルの姿があった。


「あっはははは!! ブオウの奴、豚に調理されて食われてんのぉ!! ガエルはもう顔が見えないくらいでっかくなってるし!! あっはははは!!」


 ジャンヌを陥れるために共謀したかつての仲間の悲惨な姿を見て馬鹿笑いした。


「それにしても残念な子ねジャンヌちゃんは? 悪い噂を適当に流したら、エルフもウンディーネもころっと騙されて。お仲間にもお金で簡単に裏切られて…天にいる神どもにこき使われて救いようもない子ね? きゃっはははは!!」


 ヘルの言葉にジャンヌは衝撃を受けた。

 戦争が終わった後にジャンヌが各種族達に対して悪い事をしている噂や仲間たちが裁判にて不利な証言を告げジルとシーマ以外誰も助けてはくれなかった。


「あなたが……なんで、こんなことを…」


「なんでって…? てめぇが私の起こした戦争を止めやがったからだよぉ!! せっかく、現世で最高の暇つぶしを見つけたのに私の楽しみを奪いやがって!! だから、私はお前の全てを奪ってやったのさぁ!! みぃんなから「悪女」「悪魔」って呼ばれて石を投げられ、燃やされてさぁ!! あの時の顔はほっっっんに最高だったわ!! きゃっはははは!!」


 消えていくジャンヌの瞳から涙が流れた。

 目の前に暇つぶしのために暗黒時代を作り戦争を起こして、自分から全てを奪って元凶

がいるのに傷一つすらつけることもできない。


馬鹿笑いすぎて顔がゆがむヘルを見て、悔しさや怒りが心の底から湧き上がる。


(許さない…ゆるさない、ゆるさない、ゆるさない!! この女だけはっ!! 絶対に、許さない!!)


 長い闘いを終わらせ手に入れた平和や仲間、信頼、名声を全て奪ったヘルが憎くて、憎くてたまらない。


 ジャンヌの中で憎しみがどんどん膨れ上がっていく。


ヘルだけでなく欲情に染まったグオウや魔法の探求のために多くの犠牲を生んだガエル。噂をに惑わされて、簡単に賄賂で裏切った戦友らも何もかも憎い、憎い。


「ジル…シーマ…ごめんなさい、私…」


 上空で静止している唯一信頼していたジルと親友であるシーマの亡者がいた。

 地獄の神であるヘルの力のせいで助けてくれない。しかも、転移玉と魔法の杖を手に入れてしまったヘルにはもう誰にも太刀打ちできない。


「あぁ、あぁぁぁぁ!!」


残った体で最後まで抵抗しようとジャンヌが叫ぶ。


「いいわぁ!! 天国に行く前に、こんな素敵で無様な声が聞けてぇ!! 天国でもこんな声が聴けると思うと、あぁ楽しみ!!」


 この女だけは!! とジャンヌが暴言を吐こうと口を開いたその時。


「じゃ、ん、ぬ…」


「ジャンヌ…」


 静止していたはずのジルとシーマの亡者が声を出した。

 二人の亡者の目は哀しみに満ちていた。二人の瞳には憎しみに顔を歪ませたジャンヌの顔と、邪悪に顔を歪ませて笑うヘルが映る。


 ジャンヌは自分がヘルと同じ邪悪な存在になっているのに気づき、憎しみが消えていく。


(そうだ…私は…私は平和を作り人々を堕落させてしまった罪を償うために地獄に堕ちた…けど、それは私の憎しみを晴らすための自己満足…)


 地獄に堕ちて自分を最後まで信じなかった民衆に罰を与え、シーマを殺し地獄で殺戮を繰り返していた5人の改造されたシスターたちに復讐したのも自分の恨みを晴らすためだった。


 結局、ジャンヌも自分の復讐と怒りを晴らすために自分勝手に現世を地獄に堕としてしまった。欲のままに自分勝手に生きているヘルと何も変わらない。


「私の罪は…グオウやガエルたちの企みに気づけなかった事や、人々を守れなかった事だけじゃなかった…」


「は?」


「私の罪は…自分の復讐に囚われた事…そして、ここで無様に消えることが、罪に対しての罰なら…」


「はぁ? 何それ? そんなのはいいからぁ、もっと泣き叫んでよぉ!! ほらぁ!! 殺してやるぅ!! とか、泣き叫べよぉ!!」


 ジャンヌの無様な最後を見たいと怒るヘル。そしてジャンヌはヘルに向け冷たい目ではなく、ヘルをかわいそうな子を見る憐れんだ目で見つめて、


「あなたを裁くのは私じゃない…裁きを下すのは、あなたが犯した、罪と罰…」


 そう告げると、ジャンヌは全てを受け入れて安らかな顔をしたまま完全に消滅してしまった。


「はぁ? 何が罪と罰だぁ? はぁ、もっと絶望に歪んだ顔と声が聞こえると思ったのに…あぁ~~つまんな…なっ!?」


ジャンヌが完全に消滅してしまった瞬間、地獄が激しく揺れた。



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