辺獄に潜む悪意 4 打ち砕かれた城と希望
辺獄の城が後一歩で完成となり、罪人たちの目に希望が宿っていた。
「落ち着け、慎重にだ…」
「これで最後だ、頼んだぞ…」
最後に残った作業。城の頂に旗をつけるだけだが、罪人の奴隷達は気を引き締めていた。
作業中に何度も、何度も大地震により壁や屋根が崩れ数えきれないほど泣いてきた。
高い所から落ち、重い岩に挟まれて圧死してきた苦痛がこれで解放されると思い、今一人のハーピィに最後の部品である旗が渡され、飛び立つ。
「急げ…地震が来る前に早く…」
人々はいつ来るか分からない地震におびえつつハーピィを守る。
亡者達は黙って飛んでいくハーピィを見てるだけだった。だが、亡者の耳にしか聞こえない、物達の声は聴いていた。
(たのむ、はやく俺たちをここから解放してくれぇ!!)
この場にあるパンや水。衣類や採掘道具から声が上がっていた。
亡者に反逆、もしくは脱走して失敗した者達の声だった。城が完成すれば自分達も人間に戻り自由になれると、城の完成を心から願っていた。
(はやく、はやくその旗を挿してぇ…)
(もう、食べられるのはいやぁ!! いやだぁぁぁ!!)
(たのむ、人間に戻ったら何でもするかぁ、もうこの地獄から解放してくれぇ!!)
物たちから助かりたい、自由になりたいと声が上がっていた。
だが、そんな彼らの希望をあざ笑う悪魔が城の外で手を伸ばしていた。
「私の欲しかった城はそんな不細工な物じゃないわよ、役ただずども」
悪態をついたヘルの目先にある城。上空には怪しい雲が集まり、今まさにハーピィの手で最後の旗が付けられようとしたその瞬間。
ドォォン
雷の雨が降り注ぎ、近くにいたハーピィは黒焦げになり落ちていく。
そして、雷の雨は城を砕き地上にいた人々も焦がしていった。
「次にこっちに来た時にはちゃんと綺麗な城建てといてよね、ゴミども~~」
ヘルは辺りにいた亡者達に気にせず、そのまま城を背にどこかに行ってしまった。
△
雷の雨が止まり城は完全に崩壊していた。長い時間をかけ、亡者達に鞭を打たれ時には死にながらも完成まで辿りついた城を見て罪人たちは絶望に泣きわめいた。
これは夢だ、悪夢だ。こんな現実があってたまるか。神様、もう俺たちを許してくれ。と嘆きの声が広がる。そして、物になり自由になれる事を夢見てた者はもっと悲惨な声を上げていた。
嫌だ、もうパンになって食べられるのなんて、お願いだから、もう人間に戻して、なんでもする。
絶望に飲み込まれた彼らに亡者達が「城ができるまで、働け」と無惨で残酷な一言を告げる。
「てめぇら…ふざけんなよぉ!! あの雷もお前らの仕業だろうがぁ!!」
「そうだぁ、地震も全ておまえらが何かしてたんだろうがぁ!!」
「化け物どもがぁ!! もう、俺たちはお前の命令なんか聞くかよぉ!!」
亡者の一言に反発した者達が武器を手に亡者達に闘いを挑んだ。血の気の多くこれまでこらえてきたドワーフ達が我慢の限界と進み、他にも闘技場で戦っていた者や兵士だった人間も闘いを挑んだ。
これ以上ここにいたら自由はないと、エルフ、ウンディーネなど他の種族たちも魔法を使い亡者に闘い挑んだ。
奴隷の数は亡者達の倍以上おり、数だけならば彼らの方が有利であったが、
「ひぃ、ば化け物どもがくっつきやがった!!」
亡者同士が合体し巨大化して次々と愚かな反逆者達へ制裁が開始された。
拳の一撃は大地を砕き、固い骨や筋肉を持つドワーフ達を一撃で吹き飛ばした。
魔法の一撃、一撃が山を切り、灰にするほどすさまじかった。
亡者の魔法をまとに受けたエルフの体は塵となった。合成した亡者のスピードに逃げていたハーピィとウンディーネらはすぐに捕まり捻り殺された。
たった半日で罪人たちの反逆は完全なる敗北で幕を閉じた。
反逆しなかった者達は目の前で起きた蹂躙劇を見て、もうこの化け物たちから逃れられないと悟った。
「「働け、働け!!」」
「「死んでも、生き返るから永遠に働け!!」」
「「動かない者はすぐに殺すぞ」」
巨大な合成亡者らに監視されながら生き残った罪人たちは文句ひとつも言えず、黙っていつまた終わるか分からない城建設を再開した。
反逆者が消え人数が減り、作業効率が明らかに落ちているがまたどこからか新しい罪人が増え、第二の城建設も順調に進んでいく。
そして、怒りに任せて亡者達に反逆した彼らはパンや水。岩を砕くピッケルや罪人の着ている服や靴となり消耗されていく。
どんなに食べないで。壊さないで。優しく使ってと祈り叫ぼうが城を建設している彼らの耳には決して届かない。
彼らが自由になるにはどこかに行った城の主が再び戻り新しい城が気に入られるしかないが、それがいつになるか命を浪費されている彼らには知る由はなかった。




